「年間約80万円」の購入制限
ロシア中央銀行が、一般投資家による暗号資産(仮想通貨)の購入制限を検討していることが分かった。
同案は、ロシア初の仮想通貨法案である「デジタル金融資産法(DFA)」に組み入れることを視野に入れたもので、無資格の個人や起業家が仮想通貨商品へ投資できる額は、年間最大60万ルーブル(約81万円)に制限されることを目的としている。
仮想通貨だけではなく「その他のデジタル権利」も対象額には含まれるとしており、その対象範囲は幅広い。
一方、資格を有する適格投資家は、法律に従ってデジタル資産に投資することが法的に認められることになる。
10月27日までに、この草案についての提案やフィードバックを募集している。最終的な採用が行われれば、DFA法と共に、2021年1月1日から施行される予定だ。
仮想通貨規制に大きな権限を持つロシア中銀
ロシア中銀は、同国の仮想通貨規制について大きな権限を有する。
7月にロシア国会で承認されたDFA法では、仮想通貨を商品やサービスの購入に使うことは禁止された。一方で「特別な情報システムの枠組み内で発行、購入、販売、登録」することは合法とされている。
しかし、ロシア国内での関連活動を監督する権限はロシア中銀に付与され、追加の要件を課したり、投資家が有する資格による購入制限などの枠組みも中銀が設定するとされる。
「過度な規制はロシア経済にとって損失になる」と主張する経済開発省とは対照的に、同中銀は、政府内でも仮想通貨には批判的態度を見せるケースが多々ある。
例に、第一副総裁セルゲイ・シュヴェツォフが7月、「仮想通貨の購入は投資ではなく、ネズミ講やルーレットゲームに近い」「政府も金融仲介業者も、国民に仮想通貨の取得を奨励すべきではない」と発言したことが現地メディアから報道されている。
財務省は税務報告基準引き上げを提案
また先月、ロシア財務省が仮想通貨取引の税務報告基準を引き上げることを提案した。
年間に受け取った仮想通貨総額が10万ルーブル(約13万円)を超える場合、仮想通貨ウォレット、収益額、残高について税務当局に報告することを義務付け、申告を怠った場合には刑事罰も科されるという内容だ。
年間100万ルーブル(約137万円)を超える取引を報告しなかった場合、強制労働または最長三年間の懲役も考えられているとしている。
仮想通貨取引が活発なロシア
こうした厳しい規制方針が議論されている中でも、ロシアの仮想通貨取引は活発な状況にある。
ブロックチェーン分析会社Chainalysisが独自の手法で構築した「仮想通貨採用指標」調査によると、仮想通貨の実践的な使用が進んでいる国ランキングで、ロシアはウクライナに続き第二位にランクインしている。
指標は、送受信されたオンチェーンの仮想通貨通貨額、預金量、P2P取引所における取引量という方向から測定されており、草の根ユーザーの日常的な仮想通貨使用に焦点を当てたものだ。中国と同様に、仮想通貨マイニングが盛んな地域でもあり、ビジネス面での普及も拡大していることもその背景だ。
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また、仮想通貨取引所AAXの第2四半期レポートによると中国と並びロシアのユーザーの伸びも顕著だった。
AAXは、ロシアにおける需要増加について、銀行預金の金利低下、ルーブルの下落、銀行預金者への税金増加などが背景にあり、可処分所得や貯蓄のあるユーザーが仮想通貨への投資を資本を蓄積する手段として利用し始めたのではないかと分析している。
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