ゴールド先物市場とは
世界で最も活発に取引が行われているゴールドの先物市場は、CMEのゴールド先物です。
取引単位は、1枚当たり100トロイオンス(1トロイオンス31.1グラム)、表記価格は1トロイオンス当たりの米ドル価格となっています。ゴールドの取引市場には先物市場以外にも現物市場がありますが、日々の取引量は圧倒的に先物市場が多くなっており、指標価格としてゴールド価格を用いる時は、先物市場での取引価格を使うのが一般的になっています。
市場参加者
先物市場でゴールドを取引する参加者は多種多様で、CFTCが毎週発表する建玉報告の中では、大口と小口に分類されています。
大口投資家はさらに細分されており、その分類はゴールド先物のようなコモディティと、株価指数先物や為替先物、ビットコイン先物とでは異なる形式が採用されています。ゴールド先物における大口取引参加者は、以下の4分類となっています。
- Producer/Merchant/Processor/User(生産者、精錬会社など) ex.鉱山会社が将来の産出量の売値をFIXするために先物で使う
- Swap Dealers(銀行証券など) ex.トータルリターンスワップのような金融商品をヘッジファンドや金融機関に販売した証券会社が先物市場でヘッジする
- Managed Money ex.投資信託会社やヘッジファンドが直接先物市場で取引した場合などはこの分類に入ります。
- Other Reportables
現物市場とETF
日々の取引量自体は先物市場と比べて少ないものの、現物市場での取引が裁定取引を通して間接的にGOLD先物価格に影響を大きく与えることがあります。具体例として中央銀行の売買が挙げられます。
各国の中央銀行のGOLD保有量は約3万5000トン(地上在庫の6分の1程度)でそのうち4分の1にあたる8000トン強を米国が保有しているとされています。2000年以降では新興国の中央銀行の金保有高が増加傾向をたどっており、中国の金保有量は2000年初頭の395トンから直近では1945トンまで増加しています。
GOLD価格に与える影響という点では、ETFの存在も重要になってきています。
2003年3月に最初のGOLDETFがオーストリアで上場しました。その後、米国など各国で複数のGOLDETFが上場し、年金などの機関投資家の資金をGOLD市場に取り込む役割を担ってきました。
直近で、最も残高の大きいSPDRゴールドETFの保有量は1000トン(時価総額6兆円超)と年間の鉱山生産量の3分の1程度となっています。また、世界全体のETFが保有するGOLDの総量は年間鉱山産出量である3000トンを超えているという報告もあり、継続的な投資需要がGOLD価格の下支え要因となっていることが伺えます。
裁定取引
日々の先物市場でのGOLD価格は、取引所内の売買需給を反映した価格形成がなされていますが、先物市場において、現物市場と著しく乖離した需給が発生した場合、先物価格と現物価格の価格差が大きくなる力が働きます。
先物市場では現物価格との価格差を訂正するメカニズムが必要になり、その役割を果たすのがアービトラージャーになります。
裁定取引をする上で基準となるGOLDの先物理論価格は、GOLDの利回りと米ドルの利回りでおおむね算出されます。
GOLDには当業者間で現物の貸し借りが行われるリース市場があり、1年物のGOLDリースレートが0.5%で、米ドルの金利が1.5%の場合、 1年先のドル建てのGOLD先物価格は現物価格より1%程度割高に取引されることになります。金利差以外では現物を保管するコストなどが現物価格と先物価格の差の要因となります。
先物市場の大きな役割として価格発見機能があり、多様な参加者の取引を集合し、公正で透明性の高い価格形成を促すことではじめて、市場参加者以外の主体が経済活動で使用しえる指標価格として、高い信頼性を担保することが可能となります。
また、資産運用の場所として先物市場を利用する場合においても、投機的な取引に偏った市場よりも、裁定取引を中心に多様な参加者を集めバランスのよい市場作りが必要になってくると思われます。機関投資家などの大口投資主体が参入しやすい市場を形成する上でも、アービトラージャーの役割は非常に大きいといえます。