規制強化がもたらすリスクに注意促す
スイスの投資銀行大手UBSは、暗号資産(仮想通貨)市場に規制強化がもたらすリスクについて注意を促している。金融誌Markets Insiderが報道した。
顧客投資家向けのメモの中で、UBSの資産管理チームは、中国における最近の取り締まり強化が仮想通貨の価格と関連企業に打撃を与えたことに言及。さらに、西側諸国においても米国や英国などで、この先より厳しい規制が導入されかねない兆候があるとも予測した。
UBSは次のように顧客に推奨している。
我々は以前から、投資家のセンチメントの変化や当局の取り締まりにより、仮想通貨市場におけるバブルのような状態が崩壊する可能性があることを警告してきた。
そして国々の規制当局は、自ら仮想通貨を取り締まることが可能でこの先も取り締まるであろうことを示してきた。このため私たちは、危険を冒さず、リスクの少ない資産を中心にポートフォリオを構築することを勧める。
中国が取り締まり強化
UBSが指摘したような規制当局の動きを確認すると、特に中国による仮想通貨の取り締まりが挙げられた。
中国では5月末に仮想通貨マイニングや取引の規制強化方針が打ち出され、その後、新疆ウイグル自治区、雲南省、四川省など様々な地域で、実際にマイニング事業が閉鎖されたり、電力供給が停止される措置が取られてきた。この状況を受けて、中国のマイニング企業の一部が国外移転を準備していることも報じられている。
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また、中国では水面下で取引を行うことができるOTC取引にも影響が及ぶ可能性も指摘されている。
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OTC取引
「OTC」は「Over The Counter」の略。証券会社や銀行などで「店頭カウンター越し」に取引を行ったり、取引所を介さずに売買を行うことを指す。「店頭取引」や「相対取引」とも呼ばれる。仮想通貨に限らず、株式などの売買にも利用される用語。
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取引所への警告事例も
また最近、英国の金融行動監視機構(FCA)は、仮想通貨取引所バイナンスについて英国内で規制されていないと警告。その後、英大手銀行バークレーズなどは、顧客がバイナンスへ送金できないようにする措置を取っている。
バイナンスに対してはシンガポール、ケイマン諸島、タイ、日本の金融当局もそれぞれの国で運営登録を行っていないとして警告している状況だ。
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将来の値上がり可能性は排除せず
UBSはまた、仮想通貨市場の過度なレバレッジも懸念要因として挙げており「50倍、100倍のレバレッジは、適切な金融規制と根本的に対立しているように見える」とも指摘した。
UBSは昨年の時点でも、ビットコイン(BTC)など仮想通貨について注意を促していた。2020年9月のレポートでは、仮想通貨のボラティリティの高さも挙げ「仮想通貨は投機的な投資家にとって魅力的かもしれないが、安全資産の代替手段ではなく、必ずしもポートフォリオの多様化に貢献できるわけでもない」としている。
ただ一方で、仮想通貨価格が上昇する可能性は排除していないという。
UBSは今回のメモで「仮想通貨の将来の価格上昇の可能性を排除することはできないものの、プロの投資家を重大なリスクにさらす投機的な市場と見なしている」とした。