予算を理由に承認せず
ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は6日、暗号資産(仮想通貨)に包括的な規制体制を確立する法案を承認せず、議会に差し戻したことがわかった。
仮想通貨規制を否定しているわけではなく、新たな規制機関の設立費用を問題点として挙げている。
ウクライナ議会は9月上旬、仮想通貨取引を合法化して規制する法案を採決したばかり。
仮想通貨や株式トークンなど「仮想資産」の保有と取引に法的根拠を与えるもので、健全な取引環境を整備し、事業者の参入機会を創出する狙いもある。規制面では、資金洗浄対策に関する内容も盛り込まれていた。金融活動作業部会(FATF)が推奨するトラベル・ルールなどにも準拠するという。
トラベル・ルールとは
仮想通貨取引について、サービスプロバイダー(VASP)に送金者と受取人の情報を収集・交換し、その情報の正確性を保証することを求めるルール。対象となるVASP間の仮想通貨送金で、国際的な本人確認(KYC)ルールが適用されることになる。
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しかし、ゼレンスキー大統領は今週、次のように修正を提案。国家予算への負担を懸念して、新たな規制機関を作るよりも、既存機関の管轄下に置くべきだとした。
この法律で規定されているような新しい組織の設立には、国家予算から多額の支出が必要になる。したがって、ゼレンスキー大統領は、国家証券・株式市場委員会が、仮想資産の流通に関する規制を担当することを提案する。
国家証券・株式市場委員会とは、米証券取引委員会(SEC)に相当するウクライナの規制機関。最新のデータでも、2019年度の予算が約1億3,500万フリヴニャ(約6億円)に留まるなど、資金不足にあることが伺える。
国家戦略として仮想通貨事業を誘致
ウクライナは、海外からの投資を呼び込むためにも、仮想通貨を政策の一つとして推進しようとしている。
優遇税率により仮想通貨事業を誘致する計画もある。これが実現した場合、企業は利益の5%のみを税金として支払い、付加価値税を課す必要もないという。
ウクライナではすでに仮想通貨取引が活発で、ウクライナ政府によると、仮想通貨分野の企業がすでに約100社存在している。ブロックチェーン分析企業チェイナリシスの「日常的に仮想通貨を利用する国」ランキングで、ウクライナは2020年に1位、2021年に4位にランクインした。
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また、複数の原子力発電所の隣に、ビットコイン(BTC)マイニング施設を建設するプロジェクトも進行中。国営の原子力発電会社Energoatomと、民間企業が提携して進めている。
仮想通貨に対する期待について、ウクライナ・デジタル変革庁のアレックス・ボルニャコフ副長官は6月、以下のように語っていた。
仮想通貨法案を通過させれば、ウクライナは世界でも有数の仮想通貨ビジネスの中心地になるだろう。仮想通貨に前向きな国は多くないため、企業は仮想通貨事業がしやすい体制の整っている国に行く。
ボルニャコフ副長官は、法的な規制が整備された暁には、約2,000社の仮想通貨企業がウクライナで事業を展開すると見込んでいた。