仮想通貨を資本取引規制の対象に
日本の財務省は16日、関税・外国為替等審議会の分科会にて、現在の「外為法(がいためほう)」を見直し、暗号資産(仮想通貨)を資本取引規制の対象に加えるなどの方針を示した。
外為法(外国為替及び外国貿易法)とは
外為法は、対外取引の正常な発展、我が国や国際社会の平和・安全の維持などを目的に外国為替や外国貿易などの対外取引の管理や調整を行うための法律(経済産業省)
▶️仮想通貨用語集
今年8月、金融活動作業部会(FATF)により公表された第4次対日相互審査報告書で、実質的に不合格とされる「重点フォローアップ国」と判断されたことを受けての対応だ。重点フォローアップに指定されたFATF加盟国は、日本のほか米国、カナダ、中国、韓国、シンガポールなど19カ国に上る。一番下のランクの「観察対象国」に該当する加盟国は、アイスランド、トルコ、南アフリカの3カ国のみ。
財務省国際局は背景として、北朝鮮の核・ミサイル開発の進展やアフガニスタン情勢の悪化等により、テロや⼤量破壊兵器の拡散防⽌が国際社会において喫緊の課題となる中、ブロックチェーン技術の発展により、匿名性の⾼い暗号資産を悪⽤した不正な資⾦調達等のリスクが顕在化していることを指摘した。
外為法の変更方針
財務省はFATFによる報告書の内容を受け、以下の点について外為法を見直すとした。
- 暗号資産取引を外為法上の資本取引規制の対象に追加
- 暗号資産交換業者の確認義務
- 資産凍結措置遵守のための態勢整備義務
1について、国連安保理決議により資産凍結措置は、仮想通貨を含む制裁対象者のあらゆる資産を対象とするように各国に要請されていると説明。見直しの方向性として、居住者と⾮居住者との間の仮想通貨に関する取引(管理・貸付・売買)を資本取引規制の対象とし、「資産凍結措置」を可能とすることを検討するとした。
2について、2019年に改訂されたFATF勧告は、制裁対象者への資⾦の流れを止めるように銀行や仮想通貨交換業者に要請しているが、外為法上、仮想通貨交換業者が⾏う顧客の仮想通貨の移転については、制裁対象者に対する送⾦に該当しないことを確認する義務が課されていないことを指摘。見直しの方向性として、仮想通貨交換業者も顧客の仮想通貨の移転について、制裁対象者に対する移転に該当しないことを確認する義務を課すことを検討するとした。
3について、2020年10⽉に改訂されたFATF勧告は、⼤量破壊兵器の拡散に関与する者に対して事業者が資産凍結措置を履⾏するため、その制裁が適切に行われない可能性やリスクの低減措置を⾏うことを要請していること、また、FATF第4次対⽇審査では、銀⾏や仮想通貨交換業者などがFATF基準に従い、資産凍結措置に関する義務を果たせるよう、⽇本の制裁枠組みを明確にすべきと指摘していることを背景として説明。
⾒直しの⽅向性として、1) 銀⾏や仮想通貨交換業者などに対して、資産凍結措置の履⾏のために制裁が適切に行われない可能性やリスクの評価やその低減措置を講ずるための遵守基準を定めること 2)当局が、銀⾏や仮想通貨交換業者などによる同基準の遵守状況についてモニタリング、指導、勧告などを⾏うことができるようにすることを挙げた。
遵守基準の具体的な内容は、1)リスクの評価 2)手順書(顧客管理、制裁対象者リストの作成・管理、顧客と制裁対象者リストの照合など) 3)総括管理者の選任 4)内部監査などだ。
なお、現行の外為法では、以下の三要件のいずれかに該当する場合、資産凍結等の措置を講ずることができる。
- 日本が締結した条約その他の国際約束を誠実に履行するために必要であると判断されたとき
- 国際平和のための努力に日本が寄与するために必要があると判断されたとき
- 日本の平和・安全の維持のため必要があると判断されたとき
FATF「対日相互審査」の内容
FATFは、8月に公表した第4次対日相互審査報告書で日本について、マネーロンダリング対策(AML)やテロ資金供与対策(CFT)において仮想通貨を含めたリスクの高い分野に対処しようとしていると評価した一方、日本の政策と戦略は、AMLやCFTの活動に特化したものではないなどと説明し、全体的にまだ改善の余地があると指摘していた。
審査報告を受け、財務省は大臣の談話を発表し今後について以下のように説明していた。
報告書の公表をきかっけにして、政府一体となって強力に対策を進める。
警察庁・財務省を共同議長とする「マネロン・テロ資金供与・拡散金融対策政策会議」を設置し、今後3年間の行動計画を策定した。これから行動計画を踏まえ、取り組みの進捗状況を定期的にフォローアップしていく。
以下が、財務省が策定した行動計画の概要だ。
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