ESMAがDLTに関する情報提供呼びかけ
欧州証券市場監督局(ESMA)は4日、証券取引などへの分散型台帳技術(DLT)活用に関する情報提供を呼びかけた。
ESMAは、今後DLTパイロット(試験)プログラムを行うことを予定している。この関連で、「取引・決済へのDLTの利用、規制当局への報告・透明性要件に関する規制技術基準(RTS)」の改正の必要性について、関係者からの意見を求める格好だ。
特に本件は、「取引所、証券決済システムや事業者、DLTパイロットプログラムへの参加を検討している事業者、DLT市場インフラの利用を計画している市場参加者」に関わりが深いものだという。
分散型台帳技術(DLT)とは
DLTとも呼ばれ、英語の(Decentralized Ledger Technology) の省略で、日本語訳したのが分散型台帳技術である。「De-centralized = 中央集権でない(つまり非中央集権)」な台帳技術(Ledger Technology)のことである。金融機関など、これまで多くの分野において中央集権型に取られていた台帳を一つにまとめるのではなく、ユーザー全員で管理、監視しあっていく技術のことを「分散型台帳技術」という。
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DLTパイロットプログラムの概要
ESMAによると、このDLTパイロットプログラムは、2023年初めに開始される可能性が高いという。ESMAは、次のように説明している。
DLTパイロットの目的は、「トークン化」された証券(従来の証券をデジタル化した証券)の取引と決済を発展させ、金融安定性、投資家保護、市場の健全性を確保しながら、市場参加者とEU規制当局が、DLTがもたらす新たな可能性や課題について、実際的な知見を得られるようにすることだ。
ESMAは、利害関係者が、2022年3月4日までにコメントを提供するよう求めている。寄せられた意見に基づいて、ESMAは規制技術基準の改正が必要かどうかを検討し、もし修正が必要となった場合には、修正案を欧州委員会に提出し、協議を行うという。
具体的には、「株式・株式以外の商品の透明性、データ報告、注文記録保持」およびその他の分野に関して、基準の修正が必要かどうか、情報提供を求めている。また、取引報告の免除に関して、「取引、金融商品の参照データ、透明性データ」を規制当局が入手する方法についても意見を募集した。
なお、ESMAは、「取引と決済のためのDLT使用に法的確実性を持たせる」ことがDLTパイロットプログラムの全体的な目標であることから、基準の改正も、これに沿ったものにすべきだと言及。
基準改正が、通常の金融商品の取引と比較して、DLT市場インフラの規制負担を増加させる結果になるべきではないという。
証券のデジタル化進む
株式などをトークン化したデジタル証券の推進は、各国で進められているところだ。
例えば、スイスでは昨年2月、ブロックチェーンを促進する法律「分散型台帳技術関連法(DLT法)」の下で、3社(SEBA銀行、Sygnum銀行、Crypto Finance)が新たにデジタル証券発行を開始。自社株式や、プレミアムワインなど高級品トークン化の試みが行われている。
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日本でも、三井住友信託銀行は昨年3月末、国内初となるセキュリティトークン(デジタル証券)を発行し、投資家に販売した。
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