インフラ法案に関して議員らに見解を説明
米国の財務省は11日、米上院議員グループへ書簡を送付。その中で、暗号資産(仮想通貨)マイニング事業者や、ステーキング事業者を、税務申告の関連で、「ブローカー」として扱うつもりはない、と述べた。税務に関して、これらの事業者には、顧客の取引情報を報告する義務はないという見解を示した格好だ。
仮想通貨メディアThe Blockによると、書簡には次のように書かれている。
既存の規制は、納税者による証券などの売却に関する情報を得ることができる事業者だけに、ブローカーとしての報告義務を課す。
経緯
昨年、インフラ法案の一部として新しい税務報告ルールも設定されたが、これについて仮想通貨業界から懸念が浮上していた経緯がある。
具体的には、「ブローカーに対し、仮想通貨取引を行うユーザーの税務情報開示を求める」とした条項について、「ブローカー」の定義が広範すぎるとして問題視されていた。
法案は、仮想通貨関連企業も、株式と同様に、顧客の取引情報を内国歳入庁(IRS)に報告することを義務付けるものだが、ユーザー情報を持たないマイナーや開発者、ノードバリデーターなどにも報告義務が発生してしまうのではないかと懸念されていた形だ。
インフラ法案とは
米上院から提出され、今後8年間で1.2兆ドル(約130兆円)を道路・橋、鉄道、港湾・空港、水道、高速通信網、電力網などの国内インフラへの投資を提案する法案。バイデン政権の経済分野の主要政策の1つである。
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「財務省は議員らの意見に賛同」
今回、財務省は書簡を、6人の上院議員(シンシア・ルミス氏、マーク・R・ワーナー氏、ロブ・ポートマン氏、カーステン・シネマ氏、パット・トゥーミー氏、マイク・クラポ氏)に送っている。
この6人の議員は、インフラ法案の税務条項に関して、プライバシーに関する懸念に加えて、仮想通貨マイニング事業者などが、すべての当事者や取引に関する情報を取得し保管することは技術的に不可能だということを指摘。この条項を修正しようと取り組んでいた。
財務省の書簡は、議員たちの意見に賛同を示すものであり、次のように述べている。
財務省の見解は、IRSにとって有用な情報を得ることのできない関係事業者は、「ブローカーに対する税務報告義務」の対象にはならないというものであり、議員らの意見と一致している。
例えば、コンセンサスメカニズムを通じて取引の検証を行うだけの者は、取引が資産販売の一環として行われたものかどうかを知ることはできないだろう。
また、秘密鍵を保持するための記憶装置を販売しているだけの事業者や、単にソフトウェアコードを書いているだけの者も、「ブローカー活動」を行っているとは言えない。
内容としては、マイニング事業者、開発者、ウォレット販売者が報告の対象となるのではという懸念を軽減するものとなっている。
ただ、この書簡は財務省が正式に発行するガイダンスではないことは念頭に置いておく必要がある。最終的に、税務報告の方針を正式決定するためには、まだ、パブリックコメントや、条項修正などを何回か行うことが必要になるとみられている。