バイナンスとテザー社の責任問う
米国のシンシア・ルミス上院議員(共和党)とフレンチ・ヒル下院議員(共和党)は26日、米司法省に対して書簡を提出。大手暗号資産(仮想通貨)取引所バイナンスとテザー社に対する起訴や調査を行うよう要請している。
背景としては、イスラエルとイスラム系組織ハマスの紛争が大きい。
議員らは、ハマスのイスラエルに対する攻撃の際に使用された資金の調達を含め「重大な違法金融活動」を、両社が可能にしていたという報告があるとして、次のように述べた。
この憂慮すべき情報とイスラエルに対するハマスの不当な攻撃を考慮して、私たちは司法省に対し、バイナンスの責任のレベルに相応の起訴決定を下し、テザー社が関係する違法行為に対する捜査を速やかに行うよう求める。
なお、議員らは仮想通貨そのものに反対するものではない。特にルミス議員は仮想通貨擁護の姿勢で知られており、コインベース対米証券取引委員会(SEC)の訴訟でも、コインベースを支持する法廷助言書を提出している。
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議員らは、仮想通貨事業者の大半は健全だとして次のように続けた。
仮想通貨と分散型台帳技術は、米国の金融市場で責任あるイノベーションを推進する可能性を秘めている。少数の悪意ある者が仮想通貨を不正使用した場合に、すべての仮想通貨仲介業者が不審な者として扱われないように注意する必要がある。
多くの仮想通貨仲介業者は、仮想通貨と分散型台帳技術の可能性を解き放つための規制が必要だと正しく認識し、米国の制裁やマネーロンダリング法の遵守を行う体制を取っている。
書簡の背景となる報道
議員らは具体的な報道として、ウォールストリートジャーナルが10日に報じた記事を挙げている。この記事は、過去一年にハマス、パレスチナ・イスラム聖戦、レバノンを拠点とするヒズボラという3つの組織が仮想通貨を通じて巨額の資金を受け取っていたと説明するものだ。
例えば、仮想通貨分析会社BitOKの調査によると、ハマスに関連したウォレットが2021年8月から今年6月までに約62億円(約4,100万ドル)を受け取っていたという。
こうした中、米国がテロ組織と認定するハマス、パレスチナ・イスラム聖戦、ヒズボラはバイナンスのアカウントも利用しており、イスラエル国家テロ資金対策局がこれら資金の差し押さえを要求してきた。
さらに、ブロックチェーン分析企業Ellipticによると、テザー社の発行するステーブルコインUSDTも、こうした組織が相互に資金を送金する上で利用されていたとされる。
なお、こうした報道を背景にして、ブロックチェーン分析企業チェイナリシスは、テロ組織による仮想通貨使用について一部で過大な主張がされていると意見している。テロ組織は仮想通貨よりもむしろ伝統資産を主な資金調達手段としているとも指摘した。
今回、ルミス議員らは、チェイナリシスの意見も参照しつつ、「それでも、(バイナンスらが)違法行為を助長した行為が判明した場合には、司法省がその責任を追及することが不可欠だ」と述べた形だ。
バイナンスとテザー社の対処
なお、バイナンスやテザー社は、すでにこうした指摘に対処しているようだ。例えばバイナンスは10日、イスラエルの要請を受けてハマスに関連するアカウントを凍結したと発表した。
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しかし議員らは、バイナンスはテロ組織による取引所の使用を知りながら許可していたと主張し、したがって責任があると述べている。テザー社も、イスラエルの要請を受けて、ハマスやロシア関連組織が管理するアドレスを凍結しているが、議員らは適切な顧客スクリーニングを怠っていたと批判した。
バイナンスとは
取扱銘柄や取引高、登録者数が非常に多い大手仮想通貨取引所を運営。他にもベンチャーキャピタル部門の活動や教育コンテンツの提供、慈善活動など幅広い事業を展開している。22年11月には、日本市場への進出を発表した。
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