
「ステーブルコイン法案の議論を複雑に」
米下院金融サービス委員会のフレンチ・ヒル委員長(共和党)は3月31日、ドナルド・トランプ大統領による暗号資産(仮想通貨)関連の活動が、規制の議論をより複雑にしていると述べた。
同じ共和党指導部のメンバーから大統領の個人的活動について批判的な発言が行われるのは珍しいことである。背景には、トランプ氏の仮想通貨活動が、規制を議論する上で民主党議員からの批判の標的になっていることがあるとみられる。
具体的には、ヒル氏は「(トランプ一族による)ミームコイン活動やステーブルコイン発行の検討は、私たちの仕事をより複雑にしている」と発言した格好だ。
これは、記者会見で、トランプ一族が一連の仮想通貨プロジェクトに携わっていることについて質問を受けた時の回答である。
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トランプ氏の活動とそれに対する批判
トランプ氏は、大統領就任前の昨年9月、自身とその家族が支援するDeFiプロジェクト「World Liberty Financial(WLFI)」を立ち上げていた。
ステーキング、借入、流動性プールなどのDeFiサービスを規制された環境下で提供し、DeFiの大衆化を促進することを目指すものだ。また、米ドル建てステーブルコインを普及促進し、米ドルの基軸通貨としての地位を強化することも掲げている。
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WLFIは3月、米国政府の短期国庫、米ドル預金、その他の現金同等物によって100%裏付けられる米ドル建てステーブルコイン「USD1」を発行したところだ。イーサリアム(ETH)およびBNBチェーンに展開され、3月25日時点で約350万トークンが供給、取引も複数行われている。
ステーブルコインとは
価格が常に安定している(stable)仮想通貨を指す。ステーブルコインは暗号資産の一種で、BTCやETH、XRPなど変動性のある資産とは異なり、米ドルなどに裏付けられその価値を保つことが目的だ。米ドルの裏付けによるステーブルコイン(USDT・USDC)のほか、アルゴリズムを利用するステーブルコインもある。
また、WLFIは過去数か月間は数十種類の仮想通貨を売買し、ピーク時には3億6,000万ドル(約540億円)相当のトークンを保有していた。独自トークンWLFIの販売により資金調達も行っている。
3月25日にロイター通信が伝えたところによると、トランプ一族はWLFIで支配権を強化。WLFIトークン販売からの純収益の75%を受け取る権利を持つようになったとされる。
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また、ドナルド・トランプ氏やその妻メラニア氏は、それぞれ独自のミームコインを発行している。
こうしたトランプ氏の仮想通貨関連活動は、ステーブルコイン法案を成立させる上で、民主党議員に批判の糸口を与えてしまっている格好だ。
例えば、民主党のエリザベス・ウォーレン上院議員は、WLFIのステーブルコイン「USD1」は詐欺的だと非難し、ステーブルコイン法案を修正すべきだと論じた。現在の法案では、トランプ氏とイーロン・マスク氏が国民のお金をコントロールすることを容易にしてしまうと意見している。
ステーブルコイン法案が審議中
現在、米国の両院でステーブルコイン法案の審議が進められている。上院銀行委員会は3月初めに「GENIUS法案」を可決。次は上院全体での議論に進められる見込みだ。
また、下院金融サービス委員会も今週、「STABLE法案」の修正と採決を行う予定である。法案を起草した議員らは、4月末までに上院と下院の法案を統合し、成立させることを目標としている。
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