
元顧客に総額50億ドルを返済へ
破綻した暗号資産(仮想通貨)取引所FTXは15日、債権者に対して二回目の返済を行うと発表した。2025年5月30日より、総額50億ドル(約7,300億円)を超える資産の分配が行われる見込みだ。
FTXの返済については、元顧客が仮想通貨を買い戻すことで市場にはプラス要因になるのではないかとの見方も存在している。
適格債権者は、30日から1~3営業日以内に、分配サービスプロバイダーとなるBitgoまたはクラーケンから資金を受け取る予定だ。
分配を受けるために、債権者はFTXカスタマーポータルへのログイン、顧客身元確認(KYC)の完了、必要な税務様式の提出などの手続きを完了していることが必要だ。FTXはフィッシング詐欺に注意するよう呼びかけた。
FTXとは
サム・バンクマン・フリード(SBF)氏が率いていた仮想通貨取引所。2019年の創設後、急速に頭角を表し、業界最大手バイナンスに次ぐ大手取引所へと成長していた。その後に経営破綻し、11月に米国で破産申請を行なった。
FTX返済資産の管理者であるジョン・J・レイ3世氏は、次のようにコメントしている。
FTX債権者の範囲と規模を考えると、これは前例のない規模の返済となる。本日の発表は、当社の専門家チームによる資産回収の取り組みが目覚ましい成功を収めたことを示すものだ。
当社は引き続き、債権者のためにより多くの債権を回収し、未払いとなっている返済請求を解決することに注力していく。
なお、返済資産はFTXが破産を申請した2022年11月11日時点の仮想通貨の価値に基づき、米ドル建てで支払われることになる。支払いが行われるまで年9%の利息が発生する。
2月には、請求資産5万ドル(約730万円)以下のリテール顧客から、一回目の返済が行われていた。
今回は、クラス5AのFTX.com顧客が権利請求の72%、クラス5Bの米国顧客が請求の54%、クラス6Aの一般無担保請求者および6Bのデジタル資産ローン請求者が、それぞれ61%の分配を受ける。また、クラス7のコンビニエンスクラスの請求者は120%の分配を受ける見込みだ。
返済は仮想通貨ではなく米ドルで行われるため、資金を受け取った債権者が仮想通貨を買い戻すことも予想されている。前回や今後の分配も含め、全体では総額140〜160億ドル(2〜2.3兆円)の資金が顧客に返還される見込みだ。
2月に、債権者のうちソラナ(SOL)投資家を対象として行われた調査によると、約80%が返済された資金を仮想通貨に再投資する見込みと回答していた。
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なお、サム・バンクマン=フリード前CEOは詐欺および共謀などの罪で有罪判決を受け、25年の懲役と110億ドル(約1.6兆円)の資産没収が言い渡されている。
2月の獄中インタビューで、サム氏は自身に対する裁判を「検察の権限濫用」と表現し、トランプ大統領に恩赦を求める動きを示していた。
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