
イーサリアム取引が活発化
分散型取引所(DEX)におけるイーサリアムの取引活動が活発化し、1日のアクティブユーザー数が約64,000人に急増した。5月4日の約37,000人から73%増加し、3ヶ月ぶりの高水準となった。
トレーダー数が増加した一方で、イーサリアムの月間取引量は約150億ドル(約2兆1,665億円)と横ばいであることから、機関投資家ではなく小規模な取引を行う個人投資家によるものが大部分を占めているとみられる。
歴史的に見ると、個人投資家主導の動きは、市場全体の活性化に先行することが多いことから、今後、イーサリアム市場が加速する可能性を示唆している。
イーサリアムは5月7日、2022年のマージ以来最も重要とされるネットワークアップグレード「ペクトラ」をメインネットで実装。ユーザー体験、バリデータ運用、ステーキング効率の改善、レイヤー2の統合強化が行われた。
アップグレード後、米中貿易合意との背景もあって低迷していたイーサリアム価格は急速に回復し、市場センチメントも改善されたことから、イーサリアム取引への投資家の関心が再び高まっている。
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Uniswapの躍進
DEXの中でもUniswapは優位性を維持している。5月12日、創設者のヘイデン・アダムズ氏は、同プラットフォームがDEXで初めて累計取引量3兆ドル(433兆円)を突破したと発表した。
Uniswapは、イーサリアムの月間DEX取引量150億ドル(約2兆1,665億円)のうち、86%に当たる130億ドル(約1兆8760億円)を占め、約97%のトレーダーを獲得している。
Uniswapがイーサリアム取引市場で高いシェアを誇る要因の一つに、イーサリアムのペクトラアップグレードに含まれるEIP-7702を迅速に採用したことがあると考えられる。EIP-7702により、イーサリアムにアカウント抽象化が導入され、外部所有アカウント(EOA)が一時的に、スマートコントラクトウォレットのように動作することが可能になった。
Uniswapは、このEIP-7702にいち早く対応し、プラットフォーム全体で「ワンクリックスワップ」の実現を目指す独自ウォレットの導入を発表。ユーザーの取引体験の向上をもたらした。
DeFiLlamaのデータによると、Uniswapは現在、1日あたり約44億ドル(約6,344億円)の取引量を処理しており、DEX市場の28%のシェアを占めている。
特許侵害で提訴される
一方、分散型金融(DeFi)プロトコルBancor(バンコール)は20日、Uniswapが自社の技術を許可なく使用し、多額の利益を得ているとして、特許侵害でUniswapを米国連邦裁判所に提訴した。
特許を侵害したとされる技術は、分散型取引を可能にする「定数積型自動マーケットメーカー(Constant Product Automated Market Maker, CPAMM)」の基盤技術。Bancorは、2016年に開発したCPAMM技術に関する特許を2017年1月に申請し、この技術とその応用による2つの特許を取得した。Bancorは同年、この技術を搭載した世界初の完全分散型取引所(DEX)を立ち上げた。
Bancorは、Uniswapがこの特許取得済みの技術を無許可で使用して、独自のプロトコルを構築したと指摘。2018年11月のローンチ以降、Uniswapのバージョン1からバージョン4に至るまで、継続的にCPAMMを使用したと主張している。
Bancorのプロジェクトリーダーであるマーク・リチャードソン氏は、「ある組織が当社の発明を許可なく継続的に使用し、競合手段として使用している場合、当社は対策を講じなければならない」と提訴の動機を語った。
Uniswapのような企業が何の責任も負わずに無制限に行動できるのであれば、業界全体のイノベーションが阻害され、すべてのDeFiプレイヤーに損害を与えることを危惧している。
一方、Uniswap Labsの広報担当者は、この訴訟には根拠がないと主張。「Uniswapプロトコルのコードは長年公開されており、DeFiが歴史的な勢いを増しているこの時期に、これほど無駄な訴訟を起こせるとは、実に残念だ」と述べた。
CPAMMは、流動性プールにリソースを追加または引き出す際に数学的アルゴリズムを利用し、許可不要のオンチェーン取引を可能にする。この技術により、従来の取引所の限界が克服され、DeFiの基盤を築くことができた。