
大型Web3カンファレンス「WebX」では25日、国内におけるビットコインETF(上場投資信託)についてディスカッションが行われた。
タイトルは「日本版ビットコインETF、実現可能性と解決すべき課題」。登壇したのは以下のメンバーである。
- 池田 肇氏:野村ホールディングス株式会社 執行役員
- 朝倉 智也氏:SBIグローバルアセットマネジメント代表取締役社長
- 保木 健次氏:KPMGジャパン/有限責任 あずさ監査法人Web3.0推進支援部 部長
- 神本 侑季氏:N.Avenue株式会社(CoinDesk JAPAN)代表取締役社長(モデレーター)

「WebX」は国内最大手のWeb3メディア「CoinPost」を運営する株式会社CoinPostが企画し、一般社団法人WebX実行委員会が主催するWeb3カンファレンスで、今年は8月25日と26日に「ザ・プリンスパークタワー東京」で開催されている。
2027年春の実現を想定、前倒しの可能性も
セッションでは、まず多くの投資家が注目する日本版ビットコインETFの実現時期について具体的な見通しが示された。KPMGの保木氏は「来年の税制改正要望に盛り込まれた場合、2027年春の施行が想定される」と説明。
一方で「投資信託法ではなく政令改正で対応できれば、来年にも解禁される可能性はなくはない」と前倒しの可能性にも言及した。
現在の最大の課題は投資信託法の制約にある。保木氏によると「投資信託の投資対象資産が限定されており、暗号資産の現物をETFの元となる投資信託に組み込むことが想定されていない」という。さらに「監督指針等で事実上制限されている状況」であり、業界内での意見調整も進んでいないのが現状である。
SBIグローバルアセットマネジメントの朝倉氏は「早くて再来年、というのはそれでも遅い。この半年でも米国市場は相当早い動きをしており、香港やシンガポールからも1年単位で相当な遅れになる」と危機感を示した。
同氏は「政府は暗号資産を国民の資産形成に活用する金融商品にすると明言している。あとはいかに早く実現するかが重要」と強調した。
投資家の6割以上が暗号資産投資に関心
池田氏は、昨年実施した大規模アンケートの結果を紹介。「6割以上の投資家が何らかの形で暗号資産に投資していきたいという声があった」と投資家ニーズの高まりを指摘した。
朝倉氏は機関投資家の動向について「ファンドマネージャーは他のファンドマネージャーの動向に影響を受ける。5%以上の機関投資家が暗号資産を組み入れ始めると、自分が投資しないわけにはいかなくなる」と説明。機関投資家の参入が加速する可能性を示唆した。
個人投資家については「現在、暗号資産取引所経由で1250万口座があるが、これが証券会社で取り扱われるようになれば、SBI証券や楽天証券などでも購入可能になる」と市場拡大の見通しを述べた。
さらに「株式しか投資していない層がビットコインに手を出していない。ETFで買えるようになれば、かなりの市場拡大が期待できる」と分析した。
海外ETFの日本持ち込みも選択肢に
実現に向けた現実的なアプローチとして、朝倉氏は「米国のビットコインETFを日本に持ってきて、それを投資信託に組み込んで提供する方法もある」と説明。「監督指針の変更で対応できれば、それが一番早い」と述べた。
さらに朝倉氏は「ETFを投資信託化することで、積立投資が可能になり、銀行でも販売できる。企業型確定拠出年金やiDeCoでの取り扱いも視野に入る」と長期投資商品としての可能性を強調した。
カストディと規制対応が実務上の課題
実務面での課題について、池田氏は「カストディアン(資産保管)の機能が重要になる。秘密鍵管理、コールドウォレットとホットウォレットの使い分け、マルチシグの実装など、セキュリティ面での要件定義が必要」と指摘。
また「ブロックチェーン上のトランザクション監視、AML/CFT対応、トラベルルールへの準拠など、規制要件を満たすシステム構築が不可欠」と技術的な課題も挙げた。
長期資産形成の新たな選択肢として期待
朝倉氏は「貯蓄から投資への流れの中で、安定した株式や債券だけでなく、魅力的な商品として暗号資産ETFが選択肢に入る。貯蓄をしていた人が、いきなりビットコインを買うというスタイルになる可能性がある」と述べた。
また「暗号資産ETFは既存資産との相関性が低く、ポートフォリオの分散効果が期待できる」と投資商品としての優位性を強調。日本の潜在的な投資需要の大きさにも言及した。
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▼登壇者概要
池田 肇氏:野村ホールディングス株式会社 執行役員
野村ホールディングス株式会社 執行役員 デジタル・カンパニー長兼ウェルス・マネジメント部門マーケティング担当。慶應義塾大学法学部卒業後、1990年 野村證券株式会社入社。
2017年 野村ホールディングス 執行役員 グループ広報・CSR担当兼東京2020オリンピック・パラリンピック推進担当、野村證券 広報担当 常務を歴任。2019年 野村ホールディングス 執行役員 未来共創カンパニー長兼ブランド戦略共管、野村證券 常務 未来共創カンパニー担当を経て、2021年より現職。
朝倉 智也氏:SBIグローバルアセットマネジメント代表取締役社長
1966年生まれ。慶應義塾大学文学部卒。北海道拓殖銀行、米国メリルリンチ証券を経て、米国イリノイ大学大学院経営学修士号(MBA)取得。
2004年からSBIグローバルアセットマネジメント株式会社(旧モーニングスター株式会社) 代表取締役社長。SBIホールディングス株式会社の代表取締役副社長としてSBIグループ全体の資産運用事業・デジタルアセット事業を統括。
保木 健次氏:KPMGジャパン/有限責任 あずさ監査法人Web3.0推進支援部 部長
国内外の金融機関にてファンドマネジメント業務等を経験した後、2003年に金融庁に入庁。証券取引等監視委員会特別調査課、米国商品先物取引委員会(CFTC)、金融庁総務企画局市場課、経済協力開発機構(OECD)、金融庁総務企画局総務課国際室にて勤務。
2014年にあずさ監査法人入所。Fintech/Web3.0関連アドバイザリーの責任者として、暗号資産交換業、金融サービス仲介業及び電子決済等代行業を含むFinTech関連規制対応やセキュリティトークン、ステーブルコイン及びDAO(分散型自律組織)を含むWeb3.0推進支援等のアドバイザリー業務に従事。
神本 侑季氏:N.Avenue株式会社(CoinDesk JAPAN)代表取締役社長
2013年にヤフー株式会社に入社。 メディア・広告の事業開発に従事した後、イスラエル企業と共に事業立ち上げを経験。
2018年、ヤフー傘下でWeb3情報サービスを運営するN.Avenue株式会社を設立し代表取締役社長に就任。その後同社資本を独立させ、世界最大のWeb3メディアCoinDeskの公式日本版や国内最大の法人会員制Web3ビジネスコミュニティN.Avenue clubを運営。また、一般社団法人ブロックチェーン推進協会(BCCC)の理事、Japan Blockchain Weekのアドバイザーを務める。
▼WebXとは
WebXとは、日本最大の暗号資産・Web3専門メディア「CoinPost(コインポスト)」が主催・運営する、アジア最大級のWeb3・ブロックチェーンの国際カンファレンスです。
このイベントは、暗号資産、ブロックチェーン、NFT、AI、DeFi、ゲーム、メタバースなどのWeb3関連プロジェクトや企業が集結。起業家・投資家・開発者・政府関係者・メディアなどが一堂に会し、次世代インターネットの最新動向について情報交換・ネットワーキングを行うイベントです。
数千名規模の来場者と100名以上の著名スピーカーが参加し、展示ブース、ステージプログラムなどを通じて、業界最前線、グローバル規模の交流とビジネス創出が行われます。
▼WebX開催背景
日本市場は、政府によるWeb3政策の後押しを受け、世界各国から大きな注目を集めています。
他の先進国と比較した時の日本経済・国際競争力の低下が問題視される中、越境を強みとするWeb3分野は、アニメ、マンガ、ゲームなどIP(知的財産)大国と呼ばれる日本のコンテンツ産業等、さまざまな業種のDX(デジタル変革)化や、グローバル事業への進出を大きく後押しする可能性があります。
しかしながら、言語環境等を背景とした閉じた制度設計や最先端技術を取り巻く環境実態に則していない規制面などが課題としてあり、国外への人材流出、有望スタートアップの育成不足が課題として挙げられます
また、日本国内の事業者からは、Web3事業を進めるための知識やビジネスアイデアの構築、企業間ネットワーク、専門知識を有する人材不足などが浮き彫りになっていることが指摘されます。
このような背景を踏まえ、CoinPostでは、Web3分野で国際間交流と情報・人材の流通網を確立できる国際カンファレンスの確立がアジア市場における日本のブロックチェーン産業全体の成長に必要不可欠であると考えております。
日本だけでなく、世界各国でWeb3関連事業に携わる企業や関係者が一堂に会するイベントを開催するにあたり、第3回となる「WebX 2025」を開催する運びとなりました。
▼カンファレンス概要
開催日 | 2025年8月25日(月)・26日(火) |
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開催場所 | ザ・プリンスパークタワー東京 |
主催 | 一般社団法人WebX実行委員会 |
企画 | 株式会社CoinPost |
公式サイト | https://webx-asia.com/ja/ |