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ケニア最大級のスラム街でビットコインが広がる理由|Afribit創業者インタビュー

画像はShutterstockのライセンス許諾により使用

ケニアの首都ナイロビに位置するキベラ。アフリカ大陸で2番目の規模を誇るこのスラム街で、ビットコインが静かに、しかし確実に人々の生活に浸透し始めている。

銀行口座を持つことすらできない住民たちにとって、スマートフォンさえあれば利用できるビットコインは、単なるデジタル通貨以上の意味を持つ。加速する自国通貨のインフレから資産を守る貯蓄手段として、そして国境を越えた送金を可能にするツールとして、日常生活に欠かせない存在になりつつあるのだ。

だが、普及への道のりは平坦ではない。「暗号資産=詐欺」という根強い先入観、不透明な規制環境、そして何より「本当に貧困からの脱出につながるのか」という本質的な問いが立ちはだかる。

こうした課題に対する一つの解として登場したのが「Stablesats」だ。ビットコインの価値をドルに連動させることで価格変動リスクを抑え、より多くの人々が安心して利用できる環境づくりを目指している。

本記事では、キベラでビットコイン採用プロジェクト「Afribit」を立ち上げたロニー・ムダウィダ氏への質問を通じて、現地の実像を紹介する。

インタビュイー紹介と設立の背景

ロニー・ムダウィダ氏のプロフィールと「Afribit」設立の背景について教えていただけますか

私は15年以上にわたり、東アフリカ全域で社会から取り残された疎外されたコミュニティと直接関わってきました。私の活動は地域に密着した開発支援が中心で、スラム街、農村地域、乾燥地域の人々の自立支援に取り組んでいます。

The Ronnie Fund(地域住民による非営利の支援団体)を通じた長年の活動により、これらのコミュニティが抱える特有の課題、特に援助に頼らざるを得ない状況や、銀行などの金融サービスを利用できない現実について、深く理解するようになりました。私はKosmos Solutions(非営利の非政府組織)やThe Ronnie Fundなど新たな収入源の創出、教育環境の改善、金融サービスへのアクセス向上を目的とした複数のプロジェクトを立ち上げてきました。

CEO ロニー・ムダウィダ(Ronnie Mdawida)氏

Afribitは、パートナーのYogi氏と共に、The Ronnie Fundのプロジェクトとして立ち上げました。先ほどの15年間の活動を通じて見えてきた重要な問題に取り組むためです。キベラのようなコミュニティでは、ほとんどの人が銀行サービスを利用できません。これらのコミュニティは、不安定な援助に頼らざるを得ず、従来の金融サービスから完全に切り離されていました。

真の自立には、自分でお金を管理できることが不可欠だと考え、この問題を解決するために「Afribit」を設立しました。私たちの使命は2つです。「銀行に頼らない新しい金融の仕組みを提供すること」、そして「人々が経済的に自立するための実用的なツールとしてビットコインの利用を広めること」です。

キベアにおけるビットコインとステーブルコインのリスク比較

多くの人が、ビットコインは貧困層にとって変動性が高すぎ、一方でステーブルコインは国家通貨を弱体化させるリスクがあると言います。キベラのようなコミュニティにとって、どちらの「リスク」がより受け入れられると考えますか

キベラのようなコミュニティにとって、どちらのリスクも存在します。ビットコインは価値が大きく変動する可能性があり、ステーブルコインは現地通貨を弱める可能性があります。だからこそ、BlinkアプリのStablesats機能が役立つのです。

この機能により、人々はビットコインのネットワークを使いながら、資金を安定(ドルに連動)させています。大きな価格変動リスクを避けながら、ビットコインのグローバルで、オープンで、検閲耐性のある恩恵を享受できます。

つまり、2つのリスクから選ぶのではなくより安全な選択肢となるのは、今日の安定性を提供しながらビットコインの長期的な利益を維持するStablesatsのようなツールを使用することです。

主要な違い

  • ステーブルコイン:法定通貨に連動した新しいトークン、企業やプロトコルによって発行される
  • Stablesats:ビットコイン内でのヘッジポジション(価格変動抑制)。安定した残高を模倣するが、新しいトークンも発行者もない

このように考えてください。

  • ステーブルコイン = 「私は誰かのドルのIOU(借用証書)を保有している」
  • Stablesats = 「私はビットコインを保有しているが、その価値がドルのように振る舞うようロック(価格変動から保護)されている」

詐欺被害の具体的な事例

ケニアでの採用が進む中で、最も対処するのが困難だった誤解は何でしたか

ケニアで最も対処するのが困難だった誤解のうち1つは、ビットコインがオンライン詐欺、ねずみ講、「一攫千金」の取引スキームと同じものだという誤解です。多くの人がそれを単なる投機としてしか見ていません。

詐欺/スキャムが最も対処困難な誤解の一つだったと述べていましたが、具体的な事例を共有していただけますか

人々がビットコインを疑うのには、個人的な理由があります。私たちが関わる人々の多くが、本人か身近な人が実際にお金を失っているからです。

実際、コミュニティメンバーが共同で資金を集めてビットコインを購入したものの、信頼していた仲介者が資金を持って姿を消したケースを約10件確認しています。また、自己保管の原則を理解せず、規制されていない取引所に資金を残したために損失を被った人々もいます。これらの経験により、多くの人が「ビットコイン自体が詐欺だ」と信じるようになりましたが、実際に問題は彼らが信頼したプラットフォームや個人にありました。

特にスラム街では、すぐにお金が必要な状況が人々を一攫千金物語に騙されやすくしています。例えば、私たちのセッション参加者の一人は、「自動的に増える」固定リターンを約束されて400ドルを失った経験を共有しました。彼女は、ビットコイン自体に投資しているのではなく、詐欺的なプラットフォームに資金を渡していることに全く気づいていませんでした。

さらに混乱を招いているのは、アフリカで積極的に宣伝されている無数の怪しい暗号通貨です。多くの被害者が怪しいトークンで資金を失い、その後、ビットコインを含むすべてのデジタル資産が詐欺だと結論付けます。

これが、私たちの活動が教育、自己保管、信頼構築に大きく焦点を当てている理由です。私たちは、ビットコインは一夜にして利益を生み出すツールではなく、長期的な資産形成のための手段であり、投機ではなく金融的な自立のためのツールであることを強調しています。

デジタル資産への信頼構築

歴史的に対面でのやり取りやM-Pesaのような送金サービスを通じて金融的信頼が築かれてきたコミュニティにおいて、人々が真にデジタル資産を信頼するために何が必要でしょうか

人々は実際の問題を解決する”ソリューション”を信頼します。多くのケニア人にとって、M-Pesa(ケニアのモバイル送金サービス)でさえ限界があります。あなたのM-Pesa残高はケニアシリング(ケニアの法定通貨)であり、シリングがインフレに対して価値を失うと、あなたの貯蓄は静かに減っていきます。学費やトタン屋根などの住居維持のために貯蓄している人にとって、この「見えない税金」は深刻な打撃となります。

ビットコインは検証可能な供給量を持ち、どの政府や企業によってもインフレを起こすことはできません。シリングとは異なり、今日ビットコインで貯蓄された10,000シリングは、時間の経過とともに購買力を維持します。私たちはビットコインをケニアの伝統的な貯蓄グループ「チャマ」(相互扶助組織)のデジタル版として、国の経済的不安定から資金を守る手段と考えています

ビットコインはM-Pesaを置き換えるためではなく、M-Pesaにできないことを可能とします。携帯電話があれば、誰でも銀行、ID、許可を必要とせずに、お金を貯蓄、送金、受け取ることができます。まだ教育面での課題が残っていますが、銀行口座を持たないか排除されているキベラの人々にとって、ビットコインは銀行に頼らず自分たちのやり方で貯蓄や送金ができる新しい選択肢です。

Stablesats機能の実際の利用例

BlinkアプリのStablesats機能を使用するユーザーの声を共有していただけますか

実際に商人がどのようにビットコインを活用しているか、具体例をお話しします。

Abeboという商人は、ビットコイン決済を受け入れ、Stablesatsを使って日々の仕入れ資金を安定させています。彼女は長期的にビットコインを保有する戦略を取り、価格が上がったタイミングで必要な分だけ現金化しています。

別の商人Night Muthoniは「Stablesatsのおかげで、商売をする上で価格変動の心配をしなくて済みます」と話しています。

規制の必要性

ケニアはVASP法案の下でデジタル資産をどのように規制するかまだ議論中です。現場での経験から見て、キベラのようなコミュニティを排除するのではなく、実際に支援するような規制フレームワークはどのようなものでしょうか

ケニアのデジタル資産規制は、貧困層を締め出すことなく消費者を保護すべきです。キベラのようなコミュニティにとって必要なのは、次の3点です。

小規模な起業家や商人が参加できるよう参入障壁を低く保つこと。一般ユーザーではなく詐欺に対する取り締まりに焦点を当てること。そしてコミュニティ主導のプロジェクトがその価値を証明できる実証実験の場(サンドボックス)を設けることです。

こうした規制により、安全性と包摂の両方を実現できます。

短期的・長期的指針

非公式居住区での仮想通貨採用を、主に短期的な生存のためのツールと見ていますか、それとも住民にとって長期的な富と機会を築くことが現実的に可能だと考えますか

私の考えは以下の通りです。

短期的には、ビットコインは非公式居住区の住民に、銀行を必要としない価値保存・移転方法を提供します。取引コストが低く、インフレからも資産を守れるため、日々の生活に即座に役立ちます。

長期的には、ビットコインを地域で循環させることで、コミュニティは不安定な現地通貨や外部援助への依存を減らす自立した循環経済を構築できます。ビットコインの価値が上昇するにつれて住民は資本成長を得るだけでなく、自分たちのミクロ経済も強化できます。

関連:なぜアフリカは仮想通貨普及で世界をリードし得るのか?金融イノベーションの最前線をレポート

寄稿者・インタビュアー

Austin Mwendia

4年間の実績を持つ暗号資産専門ジャーナリスト。ブロックチェーン技術、市場分析、金融トレンドに関する記事を寄稿。ブロックチェーン・分散型金融(DeFi)の普及促進に取り組んでいる。

訳、編著:CoinPost編集部

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