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米シンクタンクFDD、敵対4ヶ国の仮想通貨・ブロックチェーンを用いた制裁回避を指摘

画像はShutterstockのライセンス許諾により使用

「米国の敵対4ヶ国が仮想通貨を用いた制裁回避か」米シンクタンクFDDが指摘
米シンクタンクは「暗号の悪党」と名付けられた最新報告書で、経済制裁国のイランやベネズエラなどが国家規模でブロックチェーン開発を行っている事実を深刻に受け止めるべきだと指摘した。

「米国の敵対4ヶ国が仮想通貨を用いた制裁回避か」米シンクタンクFDDが指摘

米ワシントンDCに拠点を置く保守系シンクタンク「民主主義防衛財団」(以下FDDと表記)が、米国に敵対する4ヶ国(ロシア、イラン、ベネズエラ及び中国)が、仮想通貨とブロックチェーン技術を用いて、アメリカによる制裁措置の回避を試みていると指摘した。

その最終的な目的として、現在の米国主導による世界金融システムの外部で経済全体の運営を行うことにあると警告を発した。7月11日に発表した報告書で内容を公開した。

FDDは、ブッシュ及びオバマ政権、そして現トランプ政権や米議会へその調査分析と行動指針の助言を提供している有力な保守系調査研究機関である。

今回発表された最新報告書は「暗号の悪党:ブロックチェーンで制裁への抵抗を試みる米国の敵対者」とのタイトルで公開された。これまで、ドルを基軸とした世界金融システムの枠外では困難だった国際商取引が、ブロックチェーン技術の導入で、大きく変革していく可能性があることを指摘している。

つまり、米国の金融における強制力を相殺し制裁抵抗力を高める道具として、上記の4カ国が、すでに国家規模でブロックチェーン基盤の開発を行っている事実を大きく受け止めるべきだと注意を喚起するものとなっている。

報告書概要

報告書では国ごとのブロックチェーン開発状況の調査結果を次のようにまとめた。

イラン

特に、アメリカがイランとの核合意から離脱した2018年以後、イラン中央銀行による、SWIFTに代わるシステムを開発する意欲が高まりを見せている。

イラン政府は、ブロックチェーンの試験プロジェクトに投資し、大学レベルでのブロックチェーン技術教育を推進している。 ロシアは、ブロックチェーン技術を用いた制裁回避計画において強力な同盟国にある。

ベネズエラ

ベネズエラの国家主導で原油に紐づけられた仮想通貨、ペトロは、マドゥロ政権の数々な強硬な運営手法により失敗に終わったと結論づけているが、他国にとっては反面教師の例として有効だと述べている。

ロシア

ロシアの金融機関は、社債を流動化させ、デジタル資産を新しい預託プラットフォームに保管するために、複数のブロックチェーンプロジェクトを開始している。

立法および規制上の障害を考慮すると、国発行の仮想通貨、クリプトルーブルが短期的に実現するとは考えられないものの、ロシア政府は、地域的な連携先やSWIFTネットワーク外の同様の考えを持つ政府との取引に使用できるデジタル通貨の開発を検討している。

中国

中国は他の3カ国に比べ、米国による制裁の脅威の度合いは低いが、世界の金融システムにおける米国の影響を排除することは国家的優先事項となっている。

中国中央銀行は、ブロックチェーンの研究とデジタル通貨の開発に多大な財源を割いている。中国がブロックチェーン決済システムへ関与することは、アメリカによる制裁抵抗への取り組みにおいて最も大きな影響を与える可能性がある。

中国が、従来のシステム外のブロックチェーンプラットフォームに貿易を移すことを了承するならば、形勢を一変させることになるだろう。

さらに、ブロックチェーン開発による制裁抵抗をより大きな脅威にする可能性のあるシナリオとして、次のような展開を例としてあげた。

  • 石油等の主要な商品の貿易で、相手国を国家発行のデジタル通貨の使用するよう説得する
  • より世界の金融システムに関連性の高いビットコイン等の仮想通貨を準備金として国家が保有し積み上げる
  • 国民及び外国人が、国内企業との取引に使用できる国家主導のデジタル通貨ウォレットのインフラ開発
  • 国内の銀行システムでブロックチェーン技術を使用し、成功したプラットフォームを他の国々に輸出し、自国の金融部門に統合する

構成要素を開発

現時点では、ブロックチェーンのプラットフォームの多くは実験段階であり、既存の金融システムと比べ規模も小さく、その影響力は微々たるものである。また、ブロックチェーン開発のベンチャーは、法定通貨と銀行口座の利用なしでは成り立たないため、今のところ、仮装通貨とブロックチェーン企業に米国の制裁措置の圧力を行使することも可能だと、報告書は指摘している。

しかし、「影響力を行使する米国の地位は、必ずしも恒久的なものではない。」と元CIAのアナリストでFDDの経済財政力部門の研究員であるYaya J. Fanusie氏は警告する。

またこの報告書の共同執筆者のTrevor Logan氏は、「テクノロジーは、米国の統制が及ばない代替的な金銭的価値譲渡システムへの潜在的な道筋を作り出した。」と述べ、次のように付け加えた。

「目標のタイムラインは10年以上先になるかもしれないが、これらの国々は今、まさにその構成要素を開発しているのだ。」

報告書では、これらの調査研究に基づき、米国政府に対し具体的な提言も用意しているが、その中で、アメリカが受動的に他国の新しいシステム構築を監視するだけではなく、進行中の国際的な「暗号レース」で主導権を握ることが必要だと強調している。そして、今後の方向性として、多様な種類のフィンテックから発生する脅威について単に考察するのではなく、グローバルな金融システムが技術の変化にどのように適応するべきかをより創造的に考えることだと結んでいる。

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