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「規制整備が日本の武器に」金商法移行・円建てステーブルコインの可能性を産官学で議論|FIN/SUM 2026

画像はShutterstockのライセンス許諾により使用

この記事のポイント
  • 塩崎議員がSANAETOKENに言及「インサイダー規制のために金商法移行が必要」
  • 円ステーブルコイン、次の実需はB2B貿易決済とAIマイクロペイメント

産官学から5名の登壇者が3月6日、金融カンファレンス「FIN/SUM NEXT 2026」(東京・丸ビル)のパネルセッション「Japan Stablecoin 3.0——規制が拓く、円の信用と世界展開」に登壇し、円建てステーブルコインの現状と将来像を議論した。

AIエージェント同士のマシン・ツー・マシン決済や貿易決済での実需拡大の見通しを示すとともに、規制の厳格さを競争力と捉える共通認識や、暗号資産の金融商品取引法移行の意義についても議論が交わされた。

  • 登壇者
    • 塩崎 彰久(衆議院議員 / 自由民主党 国会対策副委員長、自民党Web3プロジェクトチーム・AIプロジェクトチーム事務局長)
    • 森下 哲朗(上智大学 法学部教授)
    • 近藤 秀和(G.U.Group 代表取締役社長CEO / Japan Open Chain ファウンダー)
    • 森川 夢佑斗(Ginco 代表取締役)
    • 荻生 泰之(EYストラテジー・アンド・コンサルティング フィンテック/ブロックチェーン・コンサルティング・ビジネスリーダー)※モデレーター

ドル建て約40兆円 vs 円建て約13億円

モデレーターの荻生氏は、まず現状の数字を整理した。テザー発行のUSDTが約30兆円、サークル発行のUSDCが約10兆円と、世界のステーブルコイン発行残高の大半をドル建て2銘柄が占める一方、国内では2025年10月に初の円建てステーブルコインが発行されたものの、残高は約13億円にとどまる。

「ドルに対して太刀打ちできないように見える」という問題提起に対し、塩崎氏は「アメリカに勝つかどうかという問いの立て方自体を見直すべき」との立場をとり、円建てステーブルコインの実需はこれから本格化すると述べた。具体的にはB2Bの世界貿易決済と、AIエージェント同士のマシン・ツー・マシン決済を挙げた。

「貿易依存度が約36%に及ぶ日本にとって、為替決済の時間的ラグと手数料を引き下げるだけでも円建てステーブルコインの実需は非常に大きい」とした上で、AIエージェントが電力の過不足を秒単位で売買するようなタイムリーなマイクロペイメントには既存の法定通貨決済では間に合わないと説明。

「円の通貨主権を守るためにも、日本として円建てステーブルコインをしっかり打ち出し、育てる必要がある」と語った。

暗号資産の金融商品取引法移行

現在進められている暗号資産の資金決済法から金融商品取引法(金商法)への移行も議題に上がった。

塩崎氏は「暗号資産が投機から投資に移る時代の変化」と位置付け、移行により現行では適用されていないインサイダー取引規制が導入されるほか、税制面では他の金融商品と同様の申告分離課税20%への変更を目指すとした。

暗号資産口座数が1100万を超え一般の投資家層にも広がった現状を踏まえ、「金融商品としての安全性と安心できる市場環境を整備する必要がある」と述べた。

規制の空白を突くインサイダー問題

塩崎氏はインサイダー規制の必要性を具体的に示す文脈で、直近で価格が乱高下した国内トークンの事例に触れ、「インサイダー規制はかかっていないのはおかしい」と指摘した。

なお、セッション冒頭には前デジタル大臣の平将明議員からの伝言として、SANAEトークンを売買しないよう参加者に注意喚起する場面もあった。まさにこうした規制の空白を埋めることが、金商法移行の狙いの一つとなっている。

ユーティリティトークンの類型問題

近藤氏は、ユーティリティトークンへの過度なインサイダー規制適用が実際のビジネス運営を阻害していると問題提起した。自社チェーン上での利用を目的とするトークンであっても参考価格の表示や宣伝ができない状況が生じており、「日本国内と海外で会社を分割せざるを得なかった」と明かした。

塩崎氏は「インサイダー規制は、有価証券と全く同じ形でよいのかを議論する必要がある。重要情報の定義なども金融庁と業界が実務レベルで詰めていくべき」と応じた。

「厳格な規制」が競争力に:FTX破綻時の日本の教訓

規制の強度については、各登壇者が「厳格さ」を競争力と捉える見解で一致した。

森川氏は、テザーが裏付け資産管理の不透明性を指摘されてきた経緯と、コンプライアンス重視で透明性を高めてきたサークルの対比に触れながら、「日本は規制が先行して整備された上で発行が行われるため、信頼面で世界に先じて価値を発揮できる」と語った。

塩崎氏は、2022年のFTX破綻時に日本の利用者が保護された事例を挙げ、「ガードレールがある方が車は速く走れる」と表現した。

森下氏は、大きな事故で利用者保護が機能しなければ新しい分野への意欲が削がれるとした上で、「日本は欧州や米国に先駆けてステーブルコインの法制度を整備してきたスピード感ももっと評価されていい」と述べた。

また2024年のワーキンググループで裏付け資産の柔軟化など規制の見直しが行われた点にも触れ、「スピード感を持って対応していくことが非常に大事」と強調。クロスボーダー取引が多いことを踏まえ、関係国の当局同士が連携して利用者保護と利便性を高める規制のあり方を議論することも重要な論点として挙げた。

関連:金融庁、仮想通貨「SANAE TOKEN」の違法性めぐり調査を検討か=報道

「滑らかな規制」でマイクロペイメントとB2C決済を解放

規制設計のあり方についても活発な意見が出た。

近藤氏は「滑らかな規制」という概念を提起し、資金移動業における発行上限や少額から大口まで規制のあり方が異なる現状を指摘しながら、セキュリティコストもリスクとリターンを踏まえた設計が必要だと述べた。「国家級のハッカー相手なのかそうでないのかによってセキュリティを変えなければならない。規制も同様の考え方が重要」。

塩崎氏もこれに呼応し、カード決済手数料が中小小売店の重荷になっている現状や所管省庁の縦割り問題を挙げながら、「デジタル経済・AI経済時代にシームレスな規制体系を作っていくことが政策立案者の責任」と語った。

JCBや三井住友カードが進めるステーブルコインの店頭決済実験にも言及があり、既存のクレジットカード決済に対して加盟店手数料を引き下げる可能性も議論に上がった。ユースケースの観点からは、森川氏が「今はブレイクスルーに向かう入口の段階」とし、AIを活用したKYC・AML(マネーロンダリング対策)の効率化やウォレットのUI/UX改善が普及の鍵になるとの見方を示した。

FIN/SUM NEXT 2026

FIN/SUM NEXTは「AI×ブロックチェーンが創る新金融エコシステム」をテーマに、日本経済新聞社と金融庁が主催する金融カンファレンス。

10回目となる今回は3月3日〜6日に東京・丸ビルを中心に開催されている。シンポジウムやワークショップのほか、フィンテックスタートアップによるインパクトピッチも実施される。

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