はじめての仮想通貨
TOP 新着一覧 チャート 学習-運用
CoinPostで今最も読まれています

技術的観点からみた、仮想通貨イーサリアムのメリットとボトルネック

画像はShutterstockのライセンス許諾により使用

イーサリアムの技術

本記事では、イーサリアム(ETH)の技術的な特徴と課題、またそれを解決する大きな進化である「イーサリアム2.0」の内容にも踏み込んで解説します。

イーサリアムは時価総額でビットコインに次いで2位を維持している仮想通貨(暗号資産)ですが、2019年10月には大阪で開発者会議「Devcon 5」が開催され、3000人以上の開発者が集結するなど技術的な進化が止まらないことも大きな特徴となっています。

目次
  1. 使用言語と開発環境
  2. 技術面から見たメリット
  3. 技術面から見たボトルネック
  4. Ethereum 2.0へのアップグレード

1.使用言語と開発環境

開発に使われているプログラミング言語

イーサリアムはC++やGoなど様々な言語で開発が行われているオープンソースのプロジェクトです。

関連Github : ethereum

これらとは別に、イーサリアム上でのアプリケーション作成専用に特殊なプログラミング言語も用意されています。

イーサリアム上で動くプログラムは一般的に「スマートコントラクト」と呼ばれ、スマートコントラクトを記述するためのプログラミング言語として、最も広く使われていてJavaScriptに似ている「Solidity」、セキュリティにフォーカスしたPythonベースの「Vyper」があります。

イーサリアム上での開発にスマートコントラクト用の言語やブロックチェーンプログラミング特有の考え方について学ぶ必要がありますが、webベースの統合開発環境 (IDE)など様々な開発者のためのツールが整備されており、開発の敷居はかなり低くなっていると言えるでしょう。

参考:開発者リソース一覧

開発体制

イーサリアムもビットコインと同様に特定の管理者が存在しません。

しかし、イーサリアムの考案者であるVitalik Buterin氏を筆頭としたイーサリアム財団が開発の中心的な役割を担っていると言えます。

19年大阪で開催され、今年の開催は中止が決まったイーサリアム開発者会議「Devcon(デブコン)」もイーサリアム財団が中心となって開催しています。

なお、財団は「中心的な役割を担っている」に過ぎず、イーサリアムに貢献している開発者は世界中・あらゆる組織に広がっています。

2.技術面から見た長所

イーサリアム最大の特徴はイーサリアム上に自由にアプリケーションを作ることができることです。

ブロックチェーン上に作成されたアプリケーション(分散型アプリケーション、dApps)は誰にも改変・管理されることなく常にプログラム通りに動きます。

例えば、ゲームであれば運営会社によって突然キャラクターの能力が下方修正されたり、サービス終了したりすることがありません。

イーサリアムを生み出したVitalikも、中学生の頃に熱中した「World of Warcraft」というオンラインゲームのお気に入りキャラクターが突然修正された経験からビットコインのような分散型の仕組みに興味を持ったようです。

他にも金融や保険、通貨取引など、従来は会社が仲介として存在していた領域で、管理者不在のままに動くアプリケーションが数多く作られています。

そもそも、イーサリアムはdAppsを作るためのプラットフォームとして開発されたもので、イーサリアム上に作られたdAppsを適切に動かしていくために仮想通貨「Ether (ETH)」が存在しています。

ビットコインとの比較

イーサリアムはVitalikが生み出しました。

「ビットコインのシステム上でアプリケーションを作りやすくするために汎用的なプログラミング言語が必要だ」というVitalikの提言がビットコインの開発コミュニティに受け入れられなかったため、それを実装したイーサリアムを考案したのです。

しかし、よく「ビットコインは決済用、イーサリアムはプラットフォーム」と言われますが、ビットコインでアプリケーションの作成が不可能なわけではありません。

数年前のビットコイン2.0と呼ばれる潮流においてビットコインのブロックチェーンを利用する「カラードコイン」などはその代表例と言えるでしょう。

また、ビットコインにもプログラムを書き込む領域が存在し、それを使って新たな機能をもったアプリケーションを作ることも可能です。

しかし、ビットコインにおいて使用できるプログラミング言語はループなどが記述できない仕様になっており、自由にプログラムすることが出来ません。

Vitalikはこれを改善するために、あらゆる処理ができる(チューリング完全)コードを書き込み、実行できる新たなブロックチェーンを考案したのです。

3.技術面から見たボトルネック

スケーラビリティ問題

イーサリアムでもビットコインでも、パブリックブロックチェーンのプロジェクトでいつも問題になるのはスケーラビリティです。

スケーラビリティ問題とは、ブロックチェーンが1ブロックに取り込めるデータのサイズと、ブロックの生成時間の間隔が決まっていることから処理できる取引の数・データの量が制限されている問題のことです。

十分な数が処理できていれば問題にならないのですが、ビットコインが1秒間に処理する取引の数は約7件、似たような機能を提供するVisaカードは平均約2000件を処理していて(最大は秒間56000件)、利用者が増えて世界中の人に使われるようなものになるには性能不足と言えるでしょう。

これまでにもdAppsゲーム「クリプトキティーズ」の人気や分散金融(DeFi)の台頭によってイーサリアムのネットワークは混雑してきました。

電力消費

イーサリアムやビットコインなどPoWを採用している仮想通貨へのよくある批判として、「マイニングに無駄な電力が消費されている」といものがあります。

PoWでは、ブロックを生成者にのみ報酬が与えられ、消費したエネルギーに見返りはありません。

関連「ビットコイン採掘は無意味に電力消費」に反論も

上記記事のような反論もありますが、使われているのがクリーンエネルギーというだけで大量に消費されている事実は変わりません。

Vitalikもこの点について問題意識をもっていますが、2018年には「PoWも環境に悪いが、金の採掘はもっと悪い」とTwitter上で述べています。

4.Ethereum 2.0へのアップグレード

イーサリアムを語る上で外せないのが、大型アップデートイーサリアム2.0の存在です。

イーサリアムでは現在、前章で挙げたボトルネックを解消すべく大幅なアップグレードのプロジェクトが進行中です。

構造が大きく変わるため2.0と呼ばれていますが、注意点として、元のイーサリアム(1.0)が無くなったり、フォーク(分岐)するわけではありません。

アップグレードのスケジュールにあるように、フェーズ1.5において元のイーサリアムはイーサリアム2.0に統合されます。それまでは並列して存続することになります。

イーサリアム2.0での大きな変更点は以下の2つです。

  • PoWからPoSへ
  • シャーディングの導入

それぞれ見ていきましょう。

PoWからPoSへ

PoSへ移行するメリットは大きく以下の2点です。

  • エネルギー効率が良い(環境にやさしい)
  • マイニングASICによるマイニングの寡占化の解消

ビットコインではProof of Workという仕組みでコンピュータで10分ほど掛かる計算を各々が行い、一番早く計算を終えた人が新たなブロックを作成し報酬を得ていました。

Proof of Stakeではそのブロックチェーンの通貨をステークした(賭けた)量に応じて新たなブロックを作成し報酬を受け取ることができる可能性が変化します。

PoWの計算には膨大な量の電気が消費されていましたが、PoSには計算競争が無いため大量の電力消費はありません。

※PoW、PoSはよく「コンセンサスアルゴリズム(合意形成方法)」と呼ばれていますが、それらの仕組み自体で合意形成を行っているわけではなく、一人の攻撃者がネットワーク上の複数のノードを操作することで行う「シビル攻撃」をコストによって防ぐ機構であるため、シビルコントロールメカニズムやシビル耐性スキームと呼ぶのが正確なようです。

PoWであれば計算、PoSであれば通貨の保有が該当します。

また、現在マイニングは大きな会社がマイニング用のマシン(ASIC:特定用途向け集積回路)を電気代の安い場所に大量に用意して利益を狙うような事業となってしまっています。

ビットコインのマイニングは下図のように大規模なマイニング会社に寡占されてしまっています。

ビットコインのハッシュレートシェア 引用:Blockchain.com

これは、マイニングに特化した専用マシンが開発されたために、その機材のために設備投資を行える会社が有利になってしまった結果です。

イーサリアムのPoWでは、専用マシンでマイニングが効率的に行えないように「Ethash」という特殊なアルゴリズムが用いられていましたが、2018年にEthashに対応したマイニングASICが開発・発売されてしまいました。

しかし、マイニングASICはPoWの通貨にしか意味を為しません。PoSではマシンの性能は関係ないため、マイニング会社による寡占は生じなくなります。

一方で、PoSでは通貨を多く保有しているほどブロックを作成しやすくなるので富の集中が起きるのではないかという懸念も有り、PoWとPoSのどちらが非中央集権的か、優れているかというのは明らかになっていません。

イーサリアム2.0では独自のPoSである「Casper」が導入されます。

PoSでは通貨を保有しているだけでブロックの生成が行えるため、チェーンが分岐した際に複数のチェーンにステークしたほうがお得になってしまう、「Nothing at Stake」というPoWでは存在しなかった別の課題がありますが、それを解決する方策をCasperは備えています。

現在、Vitalikらが提案しイーサリアム2.0に実装予定のCasper FFGと、開発者Vlad Zamfir氏が提案しいまだ研究途上のCBC Casperの2つのプロジェクトが動いており、イーサリアム2.0ではまだ確定していないことも多いです。

シャーディングの導入

シャーディングは元々データベースの分割手法の一つで、データベースへのリクエストを分散し全体の処理能力を上げる目的で利用されています。

イーサリアムにおいては、複数かつ別々のブロックチェーン(シャードチェーン)とそれらを取りまとめる一つのチェーン(フェーズ0で導入されるビーコンチェーン)という構成になります。

PoWを採用している場合、シャーディングによってブロックチェーンが分割してしまうと競争率が下がり、51%攻撃がより簡単になってしまいます。

51%攻撃とは

51%攻撃とは、悪意のある特定のグループがハッシュレートの51%を支配することで、不当な取引を行うこと。攻撃対象となるのは「Proof of Work(PoW)」と呼ばれる、ビットコインも採用するアルゴリズムを採用する仮想通貨。

▶️CoinPost:仮想通貨用語集

PoWではどのチェーンをマイニングするかはマイナーに委ねられていますが、PoSではステークしている人が予め明らかになっているため、彼らを自動的にシャードチェーンに分配するだけで済みます。

よって、イーサリアム2.0におけるシャーディングはPoSへの移行が前提の方策と言えるでしょう。

現在の所、シャードチェーンの数は64本を予定しており、バリデータ(ステークしてブロックを作成する人)の数は最低でも1.6万ほどになるようです。

アップデートのスケジュールと現在の開発状況

イーサリアム2.0の開発は以下のように段階的に進んでいく予定です。

  • フェーズ0:将来的にシャードチェーンを取りまとめるためのビーコンチェーンの導入
  • フェーズ1:64個のシャードチェーンの導入 ビーコンチェーンと繋げられバリデータの割当も行われる
  • フェーズ1.5:イーサリアムのメインネット(Ethereum1.0)をシャードチェーンの一つとして統合
  • フェーズ2:シャードチェーンにスマートコントラクトが導入される

フェーズ0は当初、2020年1月のリリース予定であったが大幅に延期されています。

6月にイーサリアム財団のブログにおいて開発の状況を知らせる投稿があり、フェーズ0のリリースは間近でフェーズ1もフェーズ0のリリース後すぐに導入される見込みとのことです。

関連イーサリアム2.0の進捗と機能について、コミュニティの疑問に開発者が回答

参考:The State of Eth2, June 2020

セカンドレイヤー(Layer 2)ソリューション

基盤となるブロックチェーン(Layer 1)以外での処理を利用したスケーラビリティ問題の解決策は一般的にセカンドレイヤー(Layer 2)ソリューションと呼ばれています。例えば、ビットコインであればLightning Networkが有名です。

イーサリアムにおいては、将来的に2.0へのアップグレードのみではなくセカンドレイヤーソリューションも組み合わせてスケーラビリティを向上させていく方針です。

現在は、2019年に発表された「(オプティミスティック/ZK)ロールアップ」という方策の利用が検討されています。

参考:What is Optimistic Rollup? Ethereum’s Latest Layer 2 Scaling Solution

関連:イーサリアムとは、初心者でもわかる通貨の仕組みと今後の将来性

有識者コメント

ーイーサリアム誕生から5年が経ちますが、ここ5年の技術面での進化について、どのような感想をお持ちかお聞かせください

現行の「Eth1」チェーンに関しては、数回のハードフォークでの機能の追加や、クライアントの地道な改善がされていますが、本質的には大きく変わっていないと考えています。結局今だにPoW(プルーフオブワーク)が使われていますし、EVM(Ethereum Virtual Machine)が動いています。

一方、チェーンの外側では色々な技術が進歩しています。Layer2プロトコルのRollupの実装が進み、いくつものプロジェクトが本番稼働しています。また、幾度のコントラクトのハッキングがあったものの、コントラクトのセキュリティを数学的に検証する形式的検証の応用も大きく進み、豊富な検証ツールが使えます。

LayerX Labsでは「Eth2」を研究していますが、10年後みたいな長い時間軸だけを見ているだけではありません。

まず次の2, 3年で、今のEthereumの大きな課題の一つであるスケーラビリティ問題が改善した時、どんな新たなユースケースが華開くのかに集中しています。実際のユーザーが何をしているのかしっかり観察し、「プロトコル研究者のためのプロトコル研究」とならないように心がけています。

ーLayerX執行役員兼LayerX Labs所長 中村龍矢(@nrryuya_jp

CoinPost App DL
厳選・注目記事
注目・速報 市況・解説 動画解説 新着一覧
07/01 火曜日
16:00
UXLINKが実現目指すWeb3の大衆化、CEOが語る成長戦略|WebXスポンサーインタビュー
5500万人のユーザーを擁するWeb3成長支援プラットフォーム「UXLINK」。WebX 2025への参加を控え、同社CEOが日本市場への期待を述べた。
14:49
日本初の仮想通貨建てクレジットカード「Slash Card」が登場 β版の事前登録開始へ
日本初の暗号資産建てクレジットカード「Slash Card」がβ版の事前登録を開始する。米ドル連動型ステーブルコインUSDC担保サービスで物理・バーチャル両対応。ソラナやイーサリアムなどマルチチェーン互換性とトークン還元リワードを特徴とし、Web3技術を現実世界の決済に橋渡しする。
13:30
ビットコイン需要減少で市場脆弱性指摘、イーサリアム大口投資家は巨額含み損で売却継続=アナリスト
Cryptoquant分析によると、ビットコインのオンチェーン需要指標がマイナス転換し短期調整リスクが高まる。一方でETH大口投資家は3週間で9万5313ETHを償還、4260万ドルの含み損を抱える状況。
13:05
トランプ家支援のAmerican Bitcoin、約320億円調達でビットコイン購入とマイニング機器導入へ
エリックとトランプ・ジュニア氏が支援するビットコインマイニング企業American Bitcoinが2億2000万ドルを調達。ビットコイン購入とマイニング機器導入に充当予定。
12:00
金融庁、ステーブルコイン健全発展のための報告書を公表 不正リスクや今後の課題を分析
金融庁が仮想通貨ステーブルコインの健全な発展に向けた報告書を公表した。不正利用の実態と今後の規制課題を分析調査する内容だ。
11:05
取引所BybitとKraken、ソラナ基盤トークン化株式「xStocks」を190カ国で提供開始
世界第2位の仮想通貨取引所BybitがBacked社のトークン化株式サービス「xStocks」を取り扱う。Apple、Amazon、Microsoft等60銘柄超をソラナブロックチェーン上で24時間365日取引可能に。
10:40
トランプ氏関連のミームコイン「TRUMP」、口座開設キャンペーンで配布へ
ドナルド・トランプ氏が公認とされるミームコイン「TRUMP」がもらえるキャンペーンがBITPOINTで7月末まで開催中。特典内容や条件を詳しく解説します。
10:20
国内Web3関連企業BACKSEAT、組み込み型Web3体験でブロックチェーン社会実装目指す
BACKSEAT株式会社が第三者割当増資により累計14億円の資金調達を完了。Spiral CapitalとHeadline Asiaが共同リード投資家として参画し、組み込み型Web3体験の実現に向けサービスローンチを本格化。
10:02
ロビンフッド、トークン化した米国株やETFの取引サービスを欧州で提供
仮想通貨などの投資アプリを提供するロビンフッドは、トークン化した米国の株やETFの取引サービスをEUユーザー向けにローンチしたと発表。独自ブロックチェーンを開発していることも明かした。
09:55
テキサス州、戦略的ビットコイン準備金設立に続き「金・銀」を法定通貨として認可
テキサス州のアボット知事が金・銀を日常取引の法定通貨として認可する法案に署名。戦略的ビットコイン準備金設立法案も成立し、米国初の大規模な貴金属・仮想通貨政策を実現。
09:40
ビットコインマイニング難易度が7.5%低下 米テキサス州猛暑が影響か
仮想通貨ビットコインのマイニング難易度が約7.5%低下した。米テキサス州の猛暑による電力制限が主要因と指摘されている。6月中旬にハッシュレートも下落していたところだ。
09:15
ナスダック上場企業SRM、140億円のトロン財務戦略完了でTRXをステーキング
フロリダのテーマパーク向け記念品製造企業SRM Entertainmentが、1億ドルのTRON財務戦略の一環として3.65億TRXをJustLendにステーキングした。年率最大10%のリターンを目指す。
08:55
ドイツ最大手銀行グループ『シュパーカッセ』、2026年夏に個人向け仮想通貨取引開始へ=報道
ドイツ最大の銀行グループSparkassenが方針転換し、個人顧客向けビットコインなど仮想通貨取引サービスを2026年夏に開始予定。EU規制整備を背景に3年ぶりの決定となる。
08:10
SEC、ビットワイズ・イーサリアムETFのステーキング承認判断を延期
米証券取引委員会がビットワイズ社申請のイーサリアムETFのステーキング機能追加提案の承認判断を延期。投資家保護と公正な市場慣行への適合性について追加審査を実施中。
07:45
サークル、米国でナショナル・デジタル通貨銀行設立を申請
米ステーブルコイン発行企業サークルが米通貨監督庁にナショナル・トラスト銀行設立を申請。承認されればUSDC準備金の自己管理と機関投資家向け仮想通貨カストディサービス提供が可能に。

通貨データ

グローバル情報
一覧
プロジェクト
アナウンス
上場/ペア
重要指標
一覧
新着指標
一覧