ビットコイン相場と金融マーケット
週明け16日の暗号資産(仮想通貨)市場。 ビットコイン価格は、前日比+1.12%の520万円(47,743ドル)と続伸した。週間の騰落率でも+2.72%と堅調さを見せる。
注目された週足終値を47,000ドル上でクローズしたほか、トレンド系指標のMACD(Moving Average Convergence Divergence)がゴールデンクロス(上図①)した。週足MACDのゴールデンクロス成立は、2021年の強気トレンドの起点となった、20年4月と20年10月以来。
足元での急騰の反動安を警戒する声があるも、すでに今年2月以降のバブル相場水準(上図②)に突入しており、アナリストの間でも強気トレンド再開との見方が大勢を占め始めている。
日足を確認しても、一時的な調整局面を43,000ドルのレンジ上限や「200日移動平均線(200SMA)」を背に切り返すなど、利確売りをこなしつつも買い意欲は旺盛と言えそうだ。
また、デリバティブ(金融派生商品)市場におけるBTC先物の「Funding Rate(資金調達率)」では、今年上半期の水準よりも沈静化している。現時点では、大口投資家の現物買い主導の相場環境にあり、過度なレバレッジによる取引が膨らんだ反動により、ロスカットの連鎖が走るリスクは限定的か。
再び2兆ドル市場に
いわゆる”アルトシーズン”再開に伴い、仮想通貨の全体時価総額が、2兆ドル(約220兆円)の大台を回復した。
5月12日に過去最高値2.57兆ドルをピークにして大幅下落。6月22日には1.12兆ドルまで落ち込んでいたが、買いが買いを呼び込むような形で大きく反発している。地政学リスクで日経平均株価など急落している点や、アルト市場にて足元の過熱感が高まっている点から、調整安には注意したい。
ビットコインの市場占有率を示す「ドミナンス」は、アルトに資金が集まり始めた影響で反落。44.6%まで低下した。
5月中旬のピーク時には、ビットコイン・ドミナンスが一時30%台を記録する場面もあったが、これを下回るようであれば、18年1月の過去最低値35.4%を3年半ぶりに更新する可能性が生じることになる。
現在の市場は、5日にロンドン・アップグレードを完了したイーサリアム(ETH)がその一部をけん引する。上昇の背景には、EIP-1559実装により導入された「バーン(焼却)」が市場想定を凌駕したことも一因だ。
関連:イーサリアム共同創設者ヴィタリック氏、ロンドンHFのメリットを解説
これまでのバーン総量は、約10日間で50,000ETH(180億円相当)を超え、バーン(焼却)速度は、先週に引き続き分速3.3ETHもの高水準をキープしている。
これほどのハイペースで蒸発していくことは大方の想定外だとしてポジティブサプライズとなったほか、ただでさえ次世代チェーンETH2.0のデポジットコントラクトやDeFi(分散型金融)プロトコルへの大量ロックアップで、市場に出回る”浮動数”を減らすイーサリアムの希少価値向上は、エコシステムを取り巻くPolygon(MATIC)などの関連銘柄への循環物色にもつながっているものと見られる。
個別銘柄の動向
個別銘柄で上昇率が顕著なのは、前週比+59%のXRP(リップル)と、前日比+22.9%の上昇でCoinmarketcap(CMC)時価総額ランキング11位まで浮上したソラナ(SOL)だろう。
12日に1ドルを超えたばかりのXRP(リップル)が1.31ドル(140円台)まで急伸した。Coinmarketcap(CMC)時価総額ランキングでは一時10位前後まで後退していたが、現在は6位まで復調している。
3年前の仮想通貨バブル時のXRPは、イーサリアムと時価総額で競合していたものの、その後ピークアウト。2021年にビットコインやイーサリアムなど主要銘柄が2017〜2018年の過去最高値を大きく更新するなか、XRPは低迷するなど出遅れていた。
XRPを開発する米リップル社が20年12月に米SECから有価証券問題で提訴され、提携解消などが相次いだことが懸念材料となっていた。
しかし、直近では10日に韓国の送金業者Global Money Express Co. Ltd(GME)が、クロスボーダー送金ネットワークの「RippleNet」に加わったことを発表。7月28日には、SBIホールディングス傘下のSBIレミット株式会社が、日本初となる仮想通貨を用いた国際送金サービスを開始したことを発表するなど、追い風が吹いている。
Santimentは、XRPネットワークにおけるGithubの開発活動(Development Activity)が、価格高騰前に急速に活性化したことを指摘した。
今後の焦点は、係争中の裁判の趨勢が大きく左右することになりそうだ。今年11月には毎年恒例の国際カンファレンス「SWELL 2021」を控えるほか、Ripple社の共同創業者の1人で、現Stellar共同創設者のJed McCaleb氏によるXRP売却が、早ければ今年9月〜12月に売却し切る計算となっており、売り圧力後退を期待する向きもある。
SOLの上昇は、DEGEN APEなどソラナ基盤のNFT市場が高騰しており、エコシステム活性化も刺激材料となったか。
We have broken out from the last all time high in TVL 🚀
— Solana Soldier ☀️ (@SolanaSoldier) August 14, 2021
May: $1.63B
Today: $1.69B#SolanaSummer pic.twitter.com/l2LrRpXM2S
プロトコルへの預け入れ総額を示す「Total Value Locked(TVL)」は、16.9億ドルに達し、今年5月の過去最高値を上回った。SOLの過去最高値は、21年5月に付けた56.2ドルだが、現時点で55.8ドルまで再上昇している。
ソラナチェーンは、業界屈指の取引処理速度とスケーラビリティ、低い手数料が特徴のレイヤー1ブロックチェーンとして知られる。昨今では、関連プロジェクトで米大手ベンチャーキャピタルa16zなどが主導する資金調達が活性化している点、ここ数年間で急台頭した大手デリバティブ取引所FTXが運営する分散型取引所Serumがソラナ基盤で構築されている点も、市場心理を後押ししているものとみられる。
関連:仮想通貨ソラナ(SOL)とは|注目ポイントと今後の将来性