Vitalik氏が投稿
イーサリアムの共同設立者Vitalik Buterinは、2014年当時、仮想通貨にとっての難しい課題をリストアップしていた。それから5年を経た2019年現在、それらの問題の解決状況をレビューする記事をブログに投稿した。
Vitalik氏の投稿は主に3つのセクションに分かれており、それぞれ(1)暗号化技術の課題 (2)コンセンサス理論の課題 (3)経済的な課題である。
暗号化技術の課題
暗号化技術の課題については、まずブロックチェーンのスケーラビリティについて語られている。これについてVitalikは「理論的には大きく進歩した、まだ現実に応用評価はされていない状態」と指摘した。
仮想通貨がブロックサイズを圧倒的に巨大なものにできない理由として、フルノードが大規模になったブロックチェーンへ対応するため継続的にアップグレードすることは不可能だからだと述べる。
もしもわずか数人しかフルノードを実行し検証できる者がいなくなってしまえば、ブロックチェーンの信頼性が損なわれてしまう。誰かが取引をロールバックし、不正な仮想通貨を作成してしまうなどの可能性も出てくる。
Vitalikはこれを解決する方法として、ランダムサンプリング、不正証明(Fraud Proofs)、カストディ証明、データ可用性証明(Data availability proof)などの技術に言及している。ただ、理論的には存在していても、これらの方法の多くは現在まだ現実にはベータテストさえ行われていない状態である。
次に取り上げられるのはタイムスタンプの課題であり、Vitalikは「ある程度の進歩があった」と評価している。
これはノードを同期させることについての課題で、フルノードを実行している人々は、世界中どこでも非常に正確なタイムスタンプを持つ必要がある。現在の状況ではノード間の時間差は最大約20秒に達し得るという。
なおイーサリアムについては、13秒のブロック時間で問題なく機能しており、現在はあるクライアントが、指定されたタイムスタンプがそのクライアントのローカル時間よりも早いブロックを受け入れないという単純な手法を使用しているという。
ただ、大規模な攻撃を想定したテストなどは行われておらず、タイムスタンプは特に現在の仮想通貨を取り巻く課題の最重要事項というわけでもないが、プルーフオブステーク(PoS)が、リアルタイムのシステムとして登場した時にまた状況は変わるかもしれないとする。
その他暗号技術についてVitalikは、計算の任意証明(Arbitrary Proof of Computation)手法の大幅な実用的進歩を認め、またブロックチェーンアプリの構築とアプリ内の機密情報の秘匿にコード難読化が不可欠であり、これについては進歩が停滞していると評価した。
コンセンサス理論の課題
Vitalikは、ASIC耐性を持つPoWが、ブロックチェーン中央集権化に対する解決策となる可能性について説明する。ASICは現在、イーサリアムネットワークの5%しか採掘していいものの、この問題は他の多くの仮想通貨プロジェクトや業界全体の将来に関わるものと見られている。
同氏は複雑なコンセンサスアルゴリズムを開発し、マイニング機器メーカーがASICチップを生産できないようにすることを提案している。さらにPoWには、51%攻撃の問題もあるため、長期的には、ASIC耐性を含む多くの利点があるPoSへ移行していくのではないかと予測。
経済的な課題
経済的課題については、ビットコインの高ボラティリティには問題が多すぎると指摘し、それに対処するためにはMakerDAO(担保型ステーブルコインプロジェクト)の例を模範とするべきという。
イーサリアム関連チームの多くは既にMakerDAOとの協働しており、これにより、ETHトークンの価格を長期間にわたって比較的安定させることができているという。
またデベロッパーたちが、システム上解決しなければならない問題があることを認識していても、誰か後援してくれる者からそのためのお金が投資されなければ、問題を解決しようとはしないことを指摘し、業界がレピュテーション・システムに関しても注目し、仮想通貨業界のプロジェクトを厳選したリストを作成する必要があると述べた。
仮想通貨を促進するために非常な貢献をした人々に報いるトークン配布システム「Proof of Excellence」の開発もまったく忘れ去られているとも指摘した。
参考:Vitalik投稿