イーロン・マスクの立場とは
常々、意味深なツイートで仮想通貨業界からも注目を集める世界大手自動車メーカー テスラのCEO イーロン・マスク氏は20日のポッドキャスト「Third Row Tesla Podcast」にゲストとして参加し、ビットコインに対する自身の考えを述べた。
以前に比べてビットコインに強気ではない理由はと尋ねられると、マスク氏は、「ビットコインに対しては『あちら』寄りでも『こちら』寄りでもないんだ」と答えた。ビットコインのホワイトペーパーが優れていると認めた上で、仮想通貨業界の人々を怒らせるかもしれないと前置きをし、次のように、違法性と合法性の不明瞭な境目について説明した。
ビットコインは、法律のバランスの外に位置する取引も多くある。もちろん、色々な国々にはそれぞれ多くの法律があるが、そのような取引には通常現金が使われている。しかし違法な取引が発生するためには、合法な取引にも現金が使われなくてはならない。
違法から合法への『橋』は必要だ。そこで仮想通貨の登場となるわけ。
匿名性の高いダークウェブでの取引かと尋ねられると、マスク氏は必ずしもそうではないと述べ、現金の使用が次第に困難になりつつある現状に言及した。
ビットコインは現金の代わりになるか
そして、ビットコインが現金に代わって普及する可能性の有無についても見解を述べた。*あくまで欧米に限った話と考えられる。
今日では、現金が使われることは稀になってきている。ますます使いづらくなり、すでに全く使えなくなった事例もある。
キャッシュレス化が進む社会において「ビットコインは実質的に現金の代替となり得ると見ている」と続ける一方で、「主要な経済的データベースとなることはないと考えている」と説明した。
しかし、仮想通貨について批判的なわけではないとも言い足した。
実際、違法にすべきでないものが違法となっている現実があるし、法律が多すぎると考えることもある。こんなに多くの違法なものがあるべきではない。
経済的効果におけるビットコインの価値を考える前に、法的観点から見直す必要があると、マスク氏の発言で示唆されている。
2014年の発言
マスク氏がこのポッドキャストで述べたことは、唐突な心境の変化というわけでもないようだ。
2014年の「New Establishment Summit」で行われたインタビューでも同様の考えを語った。
当時、「ビットコインは主に、違法な取引の手段として使われるだろうが、それは必ずしも悪いことではない。幾らかは、違法であるべきではないものもあることだ」と話し、「合法および違法取引の両方でも役には立つ。そうでなくては違法取引に使うためには価値がないだろうから」とコメントした。
マスク氏独特の言い回しか
2018年、マスク氏のSNS発言が「偽りであり、株式相場をミスリードした」として米証券取引委員会(SEC)から提訴され、テスラ社の株価は急落した。その2日後には、SECと和解するとともに、会長職を退いたマスク氏だったが、テスラ社はその後、急速な成長を果たし、つい先日、時価総額がトヨタ自動車に次ぐ世界第2位となり、大きな話題をさらった。
マスク氏は、SECへ2000万ドル(約22億円)の罰金を支払うことになった当該ツイートについて「価値があった」と発言。
仮想通貨業界では「違法な取引」という表現は、ダークウェブでビットコインが使用されていた過去を思い起こさせ、仮想通貨を普及させる障害として忌み嫌われるものだが、仮想通貨(例えばドージコインDOGE)に対しても時折、ポツリと意味ありげなSNS発言を行うマスク氏は、故意にその言葉を用いることで、「違法でないものまで違法となっている」という現在の法律体系を暗に批判しているのかもしれない。