イーサイアムクラシックがリオーグ
仮想通貨イーサリアムクラシックで、3000ブロックを超えるブロックチェーンの「再編成(リオーグ)」が起きたことが確認された。
8月1日、マイニング及びブロックチェーン分析を行うBitflyがETCのリオーグを確認し、ノードが同期を停止していることから「51%攻撃」の可能性があると警告。取引所に直ちに入出金停止し、調査するようツイッターで呼び掛けた。
Today the #ETC chain experienced a chain reorg of 3693 blocks at block 10904146. This caused all state pruned nodes to stop syncing. It is likely caused by a 51% attack and all exchanges are advised to halt deposits & withdrawals immediately and investigate all recent tx. pic.twitter.com/lUNtifaBWT
— Bitfly (@etherchain_org) August 1, 2020
最大手取引所バイナンスも、3693ブロックに及ぶリオーグを確認したとして、自動的にイーサリアムクラシックの入出金を停止した。
その後、ETCラボ及びETCコアのCEOであるTerry Culverは、今回の騒動の原因は「マイニング中にインターネットへのアクセスができなくなったマイナーによるもの」であり、悪意のある攻撃ではなかったと説明している。
イーサリアムクラシックとは
The DAO事件の対応で実施されたハードフォークをめぐり一部開発者が反発したことで、イーサリアムから分裂して新たに誕生したスマートコントラクト機能をもつ非中央集権プラットフォームのこと。
リオーグの経緯
ブロックチェーンのリオーグ(reorganization=再編成・巻き戻し)は、2つのチェーンがその有効性についてノードからの承認を競う際に起こり、最終的にはどちらかのチェーンがハッシュパワーの過半数を獲得することで、正統なチェーンとして継続することになる。
北米時間8月1日早朝に起こった、今回のイーサリアムクラシックのリオーグについては、2日、ETCラボが正式声明を出し、その経緯を次のように説明した。
- あるマイナーが、約12時間にわたり、オフラインで3500ブロック相当をマイニングし、その後オンラインになった時点(ネットワークにブロードキャストした時点)で、大規模なチェーンの再編成が発生した。
- OpenEthereum/Parityのノードはこの大規模なチェーンの再編成を処理できず、ネットワークと同期されなかった。
- イーサリアムクラシックのクライアントOpenEthereum/ParityとOpen-ETCが、不明のバグにより正常に機能しなくなっており、マイノリティのチェーンが分裂した。
ETCラボは、チェーンの大部分は正常に動作しており、ネットワークは安全だと述べているが、ETCノードの運営には、「Core-geth」か「Hyperledger Besu」のいずれかのクライアントのみを使用するように推奨している。なお、現在、不正規となったチェーンをマイニングしていたマイニングプールは、Core-gethに移行しネットワークと同期しているという。
また、7月31日から8月1日にかけて取引を行ったETCユーザーに対しては、取引が正常に行われたかどうかの確認を要請している。
51%攻撃だったのか
今回の再編成が「51%攻撃」だったかどうかについては、検証が続いている。
ETCラボ及びETCコアの創設者、James Woは、51%攻撃ではないとツイッターで主張している。
一方、ETCの開発と発展を支える「ETC Coop」は、今のところ、二重支払いは確認されていないが、今回の再編成に関しては「ETCに対する51%攻撃が起こった」とし、ブロックチェーン・データ解析ツールを提供するBitqueryも「51%攻撃」として、今回の再編成を分析している。
Bitqueryが問題視しているのは、再編成時に問題の原因となったマイナーがオフラインでマイニングした3500以上ものブロックが、他のマイナーが構築していたチェーンよりも「重み」を持っていたため、最終的に採用されてしまったという点だ。
BitqueryはOpenEthereumベースのノードを運営していたため、問題となったマイナーの一連のブロックを受け入れず、「古い」フォークされたチェーン上に残ったという。それが幸いして、両方のフォークデータを所有しており、今後、両チェーンを照合し調査することが可能であり、全ての利害関係者とデータを共有し分析する用意があるとのこと。
そして、今後も、同様の「事故」は、PoW(プルーフオブワーク)コンセンサスのブロックチェーンで起きる可能性が排除できないため、慎重な分析と検証が必要だと述べている。
イーサリアムクラシックは、昨年1月にも51%攻撃を受けており、米コインベースをはじめ、国内でもビットフライヤーやコインチェックが入出金を停止する措置をとった。
OpenEthereumのETCからの離脱
今回のリオーグが発生した要因の一つに主要クライアントであったOpenEthereumが正常に機能しなかったことが挙げられているが、OpenEthereumは先月、イーサリアムブロックチェーンのサポートに集中するため、ETCへのサポート打ち切りを発表していた。ETCノードの半数がOpenEthereumを使用していたという。また、Multi-gethクアイアントもETCサポートを停止している。
2016年、ハッキングにより大量のイーサリアム(時価50億円相当)が流出した「The DAO事件」をきっかけに、イーサリアムから分岐して誕生したイーサリアムクラシック。6月には最新アップグレード「Phoenix」により、イーサリアムと完全な互換性を持つようになったが、イーサリアムが今年中に予定している、PoS(プルーフオブステーク)コンセンサスを基盤とするETH2.0へ移行すると、事情は変わってくる。
PoWにこだわるイーサリアムクラシックの今後は、今回のリオーグに見られるような、ネットワークの脆弱性をいかに改善していくかにもかかっていると言えるだろう。