米国当局、税務ガイダンスを明確化へ
The Blockの報道で、アメリカの内国歳入庁(IRS)と財務省が現在、暗号資産(仮想通貨)に対する税務ガイダンスを明確化するため協働していることが分かった。仮想通貨に関する課税強化の狙いがあるとみられる。
米国財務省税務管理監査官(TIGTA)の報告書によると、仮想通貨取引所は税務ガイダンスをそれぞれ別の方法で解釈しているとみられ、これが法的順守上のアプローチの差異に繋がっているという。
報告書は、IRSが期待する納税額と実際に支払われた額の差に関する調査の一環として行われたもの。
二つの様式の提出を推奨
この報告書は、仮想通貨取引に関する納税者のコンプライアンスを向上させることをテーマにしており、IRSがすべての仮想通貨取引所に様式「1099-B」を要求することを推奨している。
この様式は、仮想通貨取引所がそのユーザーに代わって取引を報告するものだ。
また、サードパーティ決済組織(TPSO)の性質を持つ取引所は「1099-K」様式で報告する必要があることにも言及した。この様式は、決済に使われるカード(クレジットカード等)とサードパーティのネットワーク取引の詳細を報告するものだ。
報告書からは、IRSが納税者の報告率を高め、税に関する精査の回避を難しくしようとしていることが窺える。
TIGTAの報告書は、仮想通貨取引所は、サードパーティの支払いネットワークで決済を行う中心的な存在となっていることが多いため、様式「1099-K」を提出することが期待されると述べる。
規則が不明確であることが様式未提出の原因
サードパーティ決済組織(TPSO)は、総決済額2万ドル、トランザクションが1年で200件以上の場合、この様式に記入することになっている。
しかしTIGTAによると、このことを巡る仮想通貨業界の解釈は一貫しておらず、報告がまちまちであるという。
TIGTAが調査した9件の取引所の中で、2015年から2018年の間に「1099-K」を提出したのは4つの取引所のみだった。
IRSは、こうした不一致の理由は現在の規則が不明確であるためとした。法定通貨と交換された仮想通貨は、決済カードによる取引ではなく、むしろ「商品またはサービス」と見なされるかという点が明確に定義されていないという。
また仮想通貨取引所が先に挙げた「1099-B」でユーザーの取引活動を報告する必要があるかどうかについても明確な規定がない。
報告書によると、法律専門家やTIGTAは様式が必要であると考えるという。
一方で実態としては、調査対象となった9つの取引所の中で、2015年から2018年にかけて「1099-B」を提出したのは1つの取引所のみだった。
ガイダンス明確化で課税強化へ
IRSは、ここ数か月で仮想通貨への監視をますます拡大しており、既存のガイダンスを明確にしようとしている。
数週間前にもIRSの覚書で、「クラウドソーシングなどのプラットフォームを通して行なったマイクロタスク」に対する支払いとして得た仮想通貨は、課税所得と見なされることが示された。
報告書は「すべての仮想通貨取引所が全取引を報告することを求める情報報告制度は、税務コンプライアンスに利益をもたらす」と述べている。
参考:The Block