スイス拠点の取引所「米国での訴訟は不適当」
米国で訴訟されていた、分散型取引所Bancor(バンコール)の法務チームが、同社の国際的・地理的な性質により、アメリカでの裁判は不適当だと主張した。
様々な国に拠点を置き国際的にサービスを提供する仮想通貨業界の裁判を巡る難しさの一つが浮き彫りになった格好だ。
同社が受けている訴訟は、米国ウィスコンシン州の居住者が「シンガポールの取引所を経由して、スイスの事業体が発行したトークンを購入した」というものだが、イスラエルとスイスに拠点を構えていることから、米ニューヨークでの裁判は適切ではないと主張した。
この件は、4月に7つの仮想通貨企業とその他トークン発行者を被告として起こされた集団訴訟に関わるものだ。
原告の主張は、バイナンス、KuCoin、BitMEXなどの仮想通貨取引所が、ブローカーディーラーの免許なしで未登録証券を販売し、相場操縦を行ったというもの。
また、多くのトークン発行者が情報の供給を選択的に差し控え、トークンが売却されるまでそれが有価証券であることを隠していたとしている。
訴えられたトークンには、バンコールのトークン(BNT)の他に、Bibox Token(BIX)、イオス(EOS)、Status(SNT)、Kyber Network(KNC)、Tron(TRX)、OmiseGO(OMG)などが含まれていた。
しかしバンコール側は、「ニューヨーク州南部地区での裁判は、原告の弁護士にとってのみ利便性があり、当事者や証人となる人にとっては不便だ」として、この集団訴訟の主任原告にイスラエルで訴訟を起こすことも提案した。
バンコールの創設者4人はイスラエルに住んでいる。
米国で起こされた今回の訴訟は、バンコールの他にも米国外に拠点を置く多くの取引所やトークン発行者を相手取っている。
例えば、バイナンスはマルタに、Kucoinはセーシェル諸島に籍を置く。このため法的管轄権の問題があり、訴訟は長期化することが予想されている。
尚、証券であるかどうかについて、バンコール側はBNTは証券ではなく、証券法は適用されないとした。
「有価証券であるか否か」は度々問題に
今回の訴訟でも焦点となっている「有価証券か否か」といった問題は、これまでその他の仮想通貨を巡る訴訟でも中心的な争点となってきた。
代表的なケースとしては、仮想通貨XRPは未登録有価証券の販売にあたるのではないか等として、2018年夏にリップルを相手取り起こされた訴訟がある。
まだ裁判に決着はついていないが、これに関連して8月、リップルCEOのGBrad Garlinghouseは「ビットコインとイーサリアム以外では、SEC(証券取引委員会)は個別のデジタル資産に対して、有価証券に該当するかどうかを判断する明確な方針がない」「既存のフレームワークがイノベーションを阻害している」と苦言を呈していた。
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また有価証券問題についての最近の事例では、仮想通貨レンディングサービスを提供するSalt Blockchainが、販売した仮想通貨SALTについて、未登録有価証券の販売にあたるとSECから指摘を受け、罰金を支払ったことがある。
この件では、SECはSalt Blockchainに「レギュレーションD」を適用することになった。
米国では全ての有価証券に登録するための費用は高額で、時間のかかるプロセスだ。「レギュレーションD」とは、登録義務の免除規定で、多くのベンチャーキャピタルが資金調達の際に使用している。