財務大臣、仮想通貨全面禁止を否定
インドで暗号資産(仮想通貨)は禁止されるのか。情報が錯綜するインドの仮想通貨規制問題について、新たな展開があったようだ。
インドのNirmala Sitharaman財務大臣は、現地英語メディア「India Today」の番組に出演し、「政府としては、仮想通貨に関する選択肢全てを遮断するつもりがないことは明確だ」と述べた。この見解は、仮想通貨に関する最高裁の判断、および中央銀行であるインド準備銀行(RBI)が独自の「公式見解」をとる可能性を理解した上でのものだとした。
また、Sitharaman大臣は、人々がブロックチェーンやビットコイン(BTC)をはじめとする仮想通貨の「実験」を行うための一定の機会を許可すると明言し、フィンテックの成長は、こうした実験にかかっていると付け加えた。
さらに、同大臣はフィンテックはインドが優位性を持つ重要な分野であるとの認識を示し、政府はフィンテックおよびブロックチェーン分野の活動を奨励する立場をとっていることを強調した。
なお、どのように仮想通貨を制定するかについては、現在準備中で、ほぼ完成間近の内閣法案の内容に含まれ、近日中に内閣に提出される予定だという。
先週、Anurag Thakur特命担当大臣(財務・企業関連)は、仮想通貨を含むイノベーションを公平に評価する必要があると述べており、政府側の姿勢としては、仮想通貨の全面禁止に至る可能性は低いという印象を与えている。
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情報が交錯する仮想通貨規制法案
一方、現地時間の3月15日、ロイターはインド政府高官の言として、インドにおける仮想通貨の保有や取引を禁止し、発行やマイニングさえも犯罪とする新たな仮想通貨法案が審議されていると報道した。
当該関係者によると、この法案では、仮想通貨の保有者に最大6カ月間の精算期間の猶予を与えるが、その後は罰則を科す事になるとのこと。仮想通貨に対する厳格な規制を敷いている中国でも、仮想通貨の保有自体を罰した事例がなかったため、この法案が可決された場合、世界でも類を見ない厳しい措置となるとみられている。
仮想通貨取引の現状
しかし、ビットコインやイーサリアムに代表される「民間の仮想通貨」禁止法案の審議については、1月末から報道されているのにもかかわらず、インドの仮想通貨市場は活況を呈しているようだ。
インド最大の仮想通貨取引所WazirXの1日あたりの取引量は、執筆時現在、約112億円に上っている。BitbnsのGaurav Dahake CEOは、同取引所のユーザー登録数と資金流入額は1年前の30倍に増加していると述べた。また、インドの老舗取引所Unocoinでは1月から2月にかけて、ユーザー数が2万人の伸びを記録したという。さらに、世界162カ国にサービスを展開するZebPayは2020年3月から本拠地であるインドでサービスを再開したが、2021年2月の1日あたりの取引量は、前年2月1ヶ月分の取引量に匹敵したとのことだ。
インドでは2018年にRBIが同国の全銀行による仮想通貨の取り扱いを禁止したが、2020年3月に、インド最高裁はこの禁止令は違憲であるとの判断を下した。また、2019年には仮想通貨の利用に懲役刑を科す法案が提出されたが、実現には至らなかった。
このような経緯のあるインドで、仮想通貨業界は政府に積極的に働きかけ、仮想通貨を禁止するのではなく、公平な規制の枠組みを制定するように、動いているようだ。
業界全体でツイッターを利用した「#IndiaWantsCrypto」(インドは仮想通貨を望む)キャンペーンを展開した結果、数万人のユーザーが結集し、また「indiawantscrypto.net」サイトからは、1万5,000通のメールを国会議員に送ることになった。このような草の根の努力が功を奏し、政府が業界の声に耳を傾け始めていると、仮想通貨取引アプリ「SuperStox」の創設者は語っている。
仮想通貨情報企業CREBACOのCEO、Sidharth Sogani氏は、これまでの経験から、国会議員へ圧力をかけることが効果的であると学んだと語り、現在は、ブロックチェーン・仮想通貨・デジタル資産企業家協会を結成すべく、活動しているという。
中央銀行発行のデジタル通貨(CBDC)を推進したいRBIの思惑と、政府が進める政策には隔たりがあるようだが、世界で仮想通貨の可能性に注目が集まる現在、インドの発展に何が必要とされているのかを、政策立案者は真剣に検討する時期に来ているのではないだろうか。