早急な規制の必要性を訴える姿勢
イタリア国家証券委員会(CONSOB)のPaulo Savona長官は暗号資産(仮想通貨)が市場に悪影響を与える可能性があると発言、規制の必要性を訴えたことが分かった。ロイターなどが報道した。CONSOBは証券市場などを規制するイタリア政府の機関である。
Savona長官はCONSOBの年次報告書の内容についてオンラインで説明し「(仮想通貨を)適切に監視しなければ、市場の透明性、法的な基礎、市場運営者の理性的な判断が損なわれる可能性がある」と懸念を表明している。
金融市場の運営方法を損なう可能性に加えて、長官は仮想通貨が中央銀行の金融政策を実施する能力にも影響を与え得るとした。「実質的な規制がない状態で、現在4,000〜5,000種類の仮想通貨が流通している」と言及、マネーロンダリングなどの違法行為を助長するとも述べる。
CONSOBは、詐欺的なホームページへのアクセスをネットワークレベルでブロックする権限も有しており、これまでに450以上の違法なFX・CFDサイトへのアクセスを停止してきた。ブロックされた業者の中には、金やダイヤモンド鉱山の利回りに裏付けられていると称する不審な仮想通貨を販売する業者も存在している。
こうしたことも背景にして長官は「もし欧州レベルでの規制に時間がかかりすぎる場合、イタリアは独自に対策を講じなければならない」とも付け加えた。
さらに長官は、仮想通貨を止めることは難しいとも示唆。「精霊(仮想通貨)は既に瓶から出て」おり「プロトコルを変更することでしか制御不可能な、非物質的な領域で働くものであるため、規制当局がそれを元に戻すことはできないだろう」とする。全面的に禁止することは難しいだけに、適切に規制していく必要性を訴える姿勢のようだ。
米国やオランダ、イギリスなどでも懸念の声
一方オランダでは最近「仮想通貨の発行、取引、さらに所持を全面的に禁止する」という意見が発表された。オランダ経済政策分析局(CPB)のPieter Hasekampディレクターが提出したものだ。
決済機能など通貨としての役割をほとんど果たしておらず、不正取引リスクもあると指摘。中央銀行デジタル通貨(CBDC)の検討が行われていることも、仮想通貨の必要性を低下させる要因の一つとして挙げた。
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この意見については、オランダのWopke Hoekstra財務大臣が反対を表明している。仮想通貨を全面的に禁止するよりも、規制監督する方が効果的であるとする格好だ。
オランダに本拠を置く金融大手INGのエコノミストも仮想通貨の「インフラ自体を制限」することは難しいとして、完全な禁止は行き過ぎであると見解を示した。
また、米国のYellen財務長官は4日、米国金利の利上げについて言及するなかで、仮想通貨規制についても「取り組む価値がある」とコメント。現在、仮想通貨には「資金洗浄や銀行秘密法(BSA)の違反、不法な決済や消費者保護などの課題」があると説明。米国の幾つかの規制当局はこれらの問題に対処することはできているものの、「米国では将来的に必要となる(仮想通貨)規制の枠組みが欠けている」と語った。
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イングランド銀行(英国の中央銀行)のAndrew Bailey総裁も、仮想通貨に批判的な見解を繰り返していることで知られる。最近も仮想通貨を「通貨」と呼ぶことには違和感があり「資産をすべて失う準備ができている場合にのみ仮想通貨を購入するべきだ」と発言した。
またアイルランド中央銀行のDerville Rowland金融行為担当局長も仮想通貨は「非常に投機的で規制されていない」とコメントしている。
EUの仮想通貨規制草案
仮想通貨規制について、欧州連合(EU)は2020年に、MiCA(Markets in Crypto―Assets)という包括的な仮想通貨規制草案を発表している。取引所など仮想通貨のサービスプロバイダーや仮想通貨発行体についての明確な監督基準を設定するものだ。
例えば仮想通貨の発行体には、EU当局への登録や資本要件、EU内に拠点を置くことなどを提案した。この草案に関して2月には、欧州中央銀行(ECB)がステーブルコインにより厳格な要件を設けることを求めており、今後もMiCAの内容についてEU内で調整が行われそうだ。
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