
バイナンス、AMLコンプラツール利用へ
大手仮想通貨取引所バイナンスは30日、ブロックチェーン分析企業CipherTraceの提供するAMLツールの配備を開始した。金融活動作業部会(FATF)の提唱するトラベル・ルールへのコンプライアンス体制を強化する。
CipherTraceはブロックチェーン分析企業。3月に資金洗浄対策(AML)やFATFのトラベル・ルールへの遵守を促すツール「Traveler」を発表しており、今回大手のVASP(取引所などの仮想通貨サービス・プロバイダー)としてはバイナンスが初めて導入することとなった。
トラベル・ルールとは
資金洗浄等防止のため国際的な電信送金に関するルールで、仮想通貨サービスプロバイダー(VASP)には取引の際、送金者と受取人の情報を収集・交換し、その情報の正確性を保証することも求められる。
対象となるVASP間の仮想通貨送金で、国際的なKYCルールが適用されることになる。
▶️仮想通貨用語集
Travelerは仮想通貨取引所やカストディ事業、OTC取引デスク、銀行など金融機関の規制を促すもの。特に、米財務省のFinCEN(金融犯罪取締ネットワーク)とFATFのトラベル・ルールへの遵守を可能にする。
具体的には、バイナンス上の悪質ユーザーを検出し、プラットフォームの利用を停止することができ、以下の機能を持つ。
- 仮想通貨取引のアドレスをスキャンすることでVASP間の送受信を特定
- VASP間での承認を提供
- センシティブな取引の承認はトラベル・ルール遵守する機関とのみ共有
- 新たなVASPのオンボーディング・承認の自動化
バイナンスの最高コンプライアンス責任者(CCO)であるSamuel Lim氏は以下のようにコメントした。
弊社は、当社の基準をさらに強化するために、コンプライアンスプログラムとテクノロジーへの投資を継続していく。
CipherTrace社と提携し、同社のTravelerコンプライアンスソリューションを導入できることを誇りに思う。これまで通り、安全で分散化された、グローバルなコンプライアンス基準を満たす優れた製品をユーザーに提供することを約束する。
また、CipherTrace社のDave Jevans CEOは以下の通り述べた。
世界中でVASPに対する規制が強化されている中で、Travelerがバイナンスがグローバルなマネーロンダリング防止コンプライアンスの最高基準を満たし続けることを支援してできると確信している。
我々の製品は、VASPがセキュリティや運用の継続性を損なうことなくAMLコンプライアンスを達成することを可能にするソリューションだ。
バイナンスと緊密に協力できることを嬉しく思うとともに、バイナンスのビジネスとグローバルなコンプライアンスへの取り組みをサポートできることを楽しみにしている。
バイナンスへの警告
CipherTraceとの提携の裏には、各国の規制当局からの警告が相次いだことを受け、規制コンプライアンスへの懸念を払拭する意図が考えられる。
日本の金融庁は先週25日、バイナンスに対して2度目の警告を発令。無登録のまま日本国内の利用者を対象に仮想通貨(暗号資産)の交換業を行っているとして、バイナンスに警告を発した。
また、週末にかけてイギリスの金融当局も注意喚起を発表。カナダのオンタリオ州では新たな規制の策定を受け、バイナンスが自主的にサービス提供の停止を表明、オンタリオをサービス提供を行わない「制限地域」に追加していた。