地合の影響で一時中止
200億円規模の暗号資産(仮想通貨)ヘッジファンドNickel Digital Asset Management(以下:Nickel Digital)はポジションの大半を清算した。ブルームバーグが報じた。
5月末から続く弱気相場を受け、Nickel Digitalは現在、仮想通貨のポジションを持たず、次なる強気相場に備えてキャッシュポジション(現金ポジション)に変えているという。
Nickel Digitalは、JPモルガンやゴールド・マンサックスの元社員らが立ち上げたヘッジファンド。主に仮想通貨のアービトラージ(裁定取引)を専門としている。
裁定取引とは
裁定取引(アービトラージ)は、同一の価値を持つ投資商品の一時的な価格差(歪み)が生じた際に、割高なほうを売り、割安なほうを買い、その後、両者の価格差が縮小した時点でそれぞれの反対売買を行うことで利益を獲得しようとする取引手段だ。(SMBC日興証券引用)
仮想通貨市場では、特に流動性の低い銘柄ほど、異なる取引所における価格の差がつきやすくなるため、価格差による利益が求められ裁定取引が行われる傾向が高い。
▶️仮想通貨用語集
Nickel DigitalのAnatoly Crachilov CEOはブルームバーグの取材で、「我々のファンドは、ディレクショナル・トレーディングをしない方針だ」と説明。これまでのパフォーマンスでは、+29%の利益をあげていたが、全体市場の+78%と比較すると低かった。
ディレクショナル・トレーディングとは
ディレクショナル・トレーディングは、市場の方向性(上昇または下落)を、定量分析または定性分析に基づき予測し、同方向性と同じ方向にポジションを形成する投資戦略。(日本ITソフトウェア企業年金基金引用)
▶️仮想通貨用語集
キャッシュポジションへの戦略変更について、Crachilov氏は「6月は、様子見の月だった」として、現時点の弱気相場が特には異常な状況ではないと指摘した。また、多くの機関投資家は仮想通貨を以前の「レピュテーションリスク(否定的評判)」という悪いイメージから見直しつつある。ビットコインの6月の騰落率は、-6%だった。
しかし、地合は悪くなってきたものの、ウォール街の機関投資家勢は仮想通貨への参入を強化している。例えば、ゴールド・マンサックスがクライアントにイーサリアム(ETH)の先物・オプション取引の提供を計画している事例や、著名投資家ジョージ・ソロス氏が設立したSoros Fund Management社がビットコインなどの仮想通貨取引を開始したといった事例も見られている。
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また、仮想通貨セクターへの出資の事例もある。米大手ベンチャーキャピタル「Andreessen Horowitz(a16z)」はつい先日、3つ目の仮想通貨ベンチャーファンドで総額2,400億円(22億ドル)を調達した。
一方、中短期的弱気予想も散見された。JPモルガンは先週の投資家向けレターで、中国の規制やビットコインマイニングの環境問題を懸念する機関投資家による買い意欲は薄いと指摘していた。