若年層に投資リスクを警告
イギリスの金融行為規制機構(FCA)が、若年層に暗号資産(仮想通貨)の投資リスクに対する注意を喚起するため、1,100万ポンド(約17億円)をかけて、マーケティングキャンペーンを実施することがわかった。
Nikhil Rathi最高経営責任者が、FCAのオンラインセミナーにおけるスピーチで明らかにした。
テクノロジーの急速な進歩により、消費者が簡単にアクセス可能な投資の選択肢が増えたが、新しい投資のプロモーションに関しては「適切な管理が不可欠だ」とRathi氏は強調した。
同氏は、FCAが先月発表した仮想通貨に関する消費者意識調査の結果を受け、「仮想通貨やその他のハイリスクな投資」に手を出す若年層(18歳~30歳)が急増していると指摘し、懸念を表明した。特にこの年齢層は、ソーシャルメディアの影響を受けやすく、「合理的ではなく感情的に行動し、投資を娯楽として捉える」傾向があると述べ、今年1月に社会問題にまで発展したゲームストップ株事件に言及した。
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さらにRathi氏は「仮想通貨に投資する人々は、全資金を失うことを覚悟すべきだ」と、投資リスクについて厳しい警告を発している。同様に、FCAの消費者・競争部門責任者であるSheldon Mills氏も、先月、仮想通貨関連の投資商品は規制されていないものが多いため、「全てのお金を失う覚悟が必要だ」と注意を換気していた。
若年層の反応
FCAの投資リスク喚起キャンペーンに対する、仮想通貨ユーザーの反応は手厳しいものが多い。一般的な若年層の傾向を考慮すると、FCAの警告を素直に受け入れるとは考え難いと指摘されている。
実際、ツイッターに寄せられた意見の大半は、「我々はリスクが好きなんだ」というコメントのように、すでにFCAの注意喚起が逆効果になり、仮想通貨への投資意欲という火に油を注いでいるように見受けられる。
税金を無駄遣いするよりも、全額をビットコインに投資してはとの意見も見られた。
仮想通貨投資のリスクよりも、「債務ベースの金融システム、部分準備銀行制度、拡張的な金融政策によるインフレ、法定通貨の価値がゼロになる可能性などのリスクについて教えるべきだ」とのコメントも寄せられている。
より積極的な規制アプローチを
Rathi氏はスピーチで、FCAがより革新的かつ積極的な規制アプローチをとる決意を表明している。特に規制におけるデータの重要性を強調し、データ活用に対する新しいアプローチが組織改革の基盤だとして次のように述べた。
データは現代の規制当局に必要不可欠な活力源だ。我々が行う全ての活動は収集した情報とその利用法によって決まる。
近年、調査で処理するデータの量は増大しており、金融サービス事業自体が、データ主導型のビジネスになっていると同氏は指摘。今後5年間で、FCAは金融機関だけでなく、データの規制機関になるとの考えを明らかにした。
市場における不正行為の監視分野などでは、関係当局との情報共有がすでに行われているが、より体系的に一貫性をもった体制に変革していくという。特に、効果的な実際の行動に反映するためのデータ分析に力を入れ、データサイエンスと行動科学や経済学などを取り入れた、エビデンスベースの意思決定につなげるとのことだ。
そのため、Rathi氏は今後3年間で、FCAのデータおよび技術力強化のために1億2,000万ポンド(約180億円)を投じる決断をしたと発表。最高のデータシステム構築のためにも、人工知能の知識をもち、ビッグテックとフィンテック両方に精通した人物をデータ・情報・機密情報部門の主任に迎えたことを付け加えた。