仮想通貨投資関連法のリスクを指摘
信用格付け企業のFitch Ratingsが、ドイツの新たな暗号資産(仮想通貨)投資関連法に関する記事を発表、そのリスクについて論じた。
ドイツでは、機関投資家が『スペシャルファンド』を通じて、ポートフォリオの最大20%を仮想通貨に投資できる法律が7月1日に可決し、先週施行された。最大40兆円以上の資金を仮想通貨市場に呼び込む可能性があるとされている。
スペシャルファンド
スペシャルファンド(Spezialfonds)は、ドイツにおける機関投資家向けのファンドであり、同国では既に3,000以上のスペシャルファンドが運用されている。2019年時点での運用総額は約200兆円にのぼる。
▶️仮想通貨用語集
Fitch Ratingsによると、スペシャルファンドの投資家層は、保険会社や年金基金が中心となっており、今回の規制変更で、仮想通貨は伝統的な金融システムに組み込まれることになるという。
個人投資家についても、その退職金や保険契約などにより間接的に仮想通貨へのエクスポージャー(価格変動に影響を受ける部分)が増える可能性がある。
Fitch Ratingsは、スペシャルファンドへの主要な投資家は、伝統的に資産配分をリスク回避的に行っているため、配分上限とされた20%まで仮想通貨に資産を割り当てることはないだろうと留保した。
その上で、スペシャルファンドの運用資産残高が2021年3月時点で1.8兆ユーロ(約230兆円)程度であることから、仮に最大の配分額を考えると、仮想通貨へ3,600億ユーロ(約46兆円)が投資されることになると見積もっている。
仮想通貨のボラティリティがリスクに
Fitch Ratingsは、特に仮想通貨のボラティリティ(価格変動)が課題になり、ファンドマネージャーが流動性リスクを管理することが困難になると指摘。
例えば、大きな価格変動がきっかけとなって取引所で仮想通貨の取引が停止された場合、仮想通貨を運用しているファンドが、投資家の償還要求などに応える能力に影響を与えかねない点。
これは、仮想通貨への配分の程度、市場が停止した期間や規模、ファンド内の他の流動資産の利用可能性、投資家に提供される流動性の程度など、様々な要因にも左右されるという。
また、ファンドが仮想通貨に大きな割合を投資している場合は、価格が大きく変動する時期に市場に影響を与えずにポジションを管理するという課題も発生する。
Fitch Ratingsは、次のように結論している。
今後1~2年の間に、仮想通貨を導入するファンドが大量に登場するとは考えられない。しかし仮に、他地域の規制当局がドイツにならって、機関投資家の仮想通貨ファンドへの直接的なアクセスを認めた場合、いずれ仮想通貨への投資額が、金融安定化リスクを高めるのに十分なレベルに達する可能性もある。
伝統的な機関投資家が仮想通貨への投資をさらに拡大していくためには、ボラティリティがハードルになるとした格好だ。