仮想通貨プロジェクトを引き継ぐ
米国中央情報局(CIA)のウィリアム・バーンズ長官は6日、ウォールストリートジャーナル主催のCEO評議会サミットで、CIAが複数の暗号資産(仮想通貨)関連のプロジェクトに取り組んでいることを明らかにした。
会場からの質問で「完全には規制されておらず、不正行為を助長する仮想通貨の出現」にどれほどの時間を割いているかと尋ねられると、バーンズ長官は「前任者」によって立ち上げられた複数の異なるプロジェクトがすでに存在していると回答。
仮想通貨に焦点を当て「二次的、三次的な影響」についても調査するとともに、米政府の他の部署と協力し、何が起こっているかについて確かな機密情報を提供するよう努力しているという。
さらにCIA内部の専門家集団の強化に加えて、外部の専門家や同分野に精通した人々との連携を深めようとしていると、バーンズ長官は語った。
ランサムウェア攻撃に備えて
米国では5月上旬に、同国最大規模の石油パイプラインを運営するコロニアル・パイプライン社がランサムウェア攻撃を受け、身代金約500万ドル(約5.6億円)の一部をビットコインで支払った。
その翌月、米司法省は身代金として支払われた75BTCの大半を回収したと発表。ブロックチェーン上のトランザクション追跡が資金回収につながったようだ。
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今年3月にバーンズ氏は長官に就任したが、それ以前から仮想通貨は、全てに非常に大きな影響を与える可能性があり、注意を払う必要があると考えていたという。
長官は、ランサムウェア攻撃はその「莫大な影響」の一例であると指摘。そして、同様の犯罪を阻止する方法の一つが、犯罪者グループが利用している金融ネットワークを突き止めること、つまり仮想通貨の問題に回帰すると主張した。
ランサムウェアとは
ランサムウェアとは、ハッキングを仕掛けたうえで、元の状態に戻すことを引き換えに金銭を要求するマルウェアのこと。「身代金要求型マルウェア」とも呼ばれる。感染すると、他人の重要文書や写真ファイルを勝手に暗号化したり、PCをロックして使用を制限した上で、金銭を要求してくる。
▶️仮想通貨用語集
米バイデン政権はランサムウェア攻撃への対策を優先事項としている。司法省は7月中旬、米国の企業や組織らをランサムウェア攻撃から保護するための対策として、「StopRansomware.gov」というウェブサイトを立ち上げた。
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また、財務省はランサムウェア攻撃に関与した疑いがあるとして、9月には米国として初めてロシアを拠点とする仮想通貨取引所を制裁対象に指定。また11月にはラトビアやエストニア等を拠点としていた3つの企業を制裁対象とした。
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このような米政府の動きを受け、バーンズ長官はCIAにとっても重要度の高い課題であるため、今後もリソースを投入し引き続き注意を払っていくとコメントした。
プロジェクト内容には触れず
一方、バーンズ長官は具体的なプロジェクトの内容については一切触れていない。また前任者とは誰を指すのかも明らかにはしなかった。
前任者の一人で元CIA長官代理のMichael Morell氏は、今年、4月に発表した「金融犯罪におけるビットコイン使用の分析」という報告書の中で、ビットコインが不正な金融活動に使用されているという一般的な概念は、かなり誇張されたものであると主張。
また、ビットコインの基盤であるブロックチェーンの分析は、「法執行機関ならびに情報機関が不正な活動を特定・阻止するために利用できる、非常に効果的な犯罪科学ツールである」との結論を導き出している。
法執行機関はブロックチェーン分析を十分に活用していないとMorell氏は指摘したが、前述のコロニアル・パイプライン社に対する攻撃でブロックチェーン分析が資金回収につながったように、今後は犯罪抑止、捜査のための効果的なツールとして注目される可能性もあるかもしれない。
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