コンプライアンス問題
大手暗号資産(仮想通貨)取引所バイナンスは21日、その表面的な広報活動に反して、顧客確認の強化を行っていなかったと指摘された。ロイターが特別レポートを公開した。
取引高などで世界最大手の暗号資産取引所に成長したバイナンスだが、レポートは、創業者兼CEOであり、CZの略称で知られる趙 長鵬(Changpeng Zhao)氏の本人確認(KYC)対策に対する姿勢などが窺える内部のやり取りなどを明らかにしている。
レポートは、バイナンスの元従業員や関係者に対する複数回のインタビューや、規制当局とのやり取りなどを含めた内部文書を基にした内容となる。
それによると、バイナンスは2018年10月に地中海のマルタでのライセンス取得を目指す計画を示したが、厳格なマネーロンダリング防止基準に直面し翌年にはその計画を撤回していた。その一方で、バイナンスは数か月間にわたってマルタの法律に準拠していると顧客に説明していたという。
また、規制当局からの財務、企業構造に関する情報の提出の求めを拒否していた例が複数あったとされ、本人確認についても上級スタッフの懸念を無視して緩い基準を維持し、コンプライアンス部門の推奨に従わない行動がとられていた。
その他にも、内部レポートにてマネーロンダリングリスクが極度に高いとされたロシア等の7カ国で、サービスの提供を続けたことなども明らかになっている。
これらロイターの報道に対し、バイナンスの広報担当者は具体的な言及は行わなかったものの、「とても古いもので、いくつかの点については完全に誤っている」と反論している。
バイナンスは2021年6月~8月にかけ、日本を含め世界各国の規制当局から警告を受けており、8月20日にはすべてのユーザーに対しKYCを求める方針を発表した。
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バイナンスでは以前、2BTCの出金額以下であれば、アカウントをKYCなしで利用することが可能で、2018年に起きた日本の暗号資産取引所Zaifでのハッキング事件では、犯人が盗んだ暗号資産を2BTC相当に分割しバイナンスを利用して資金洗浄を行っていたことが明らかになっている。
なお、Zaifはバイナンス側のマネーロンダリング対策の緩さが資金洗浄を助長したとして、バイナンスを2020年9月に訴えた。
そのほか、バイナンスは各国で個別の規制対応を進めており、米国ではローカル版の取引所を運営しているほか、バーレーンなどでライセンスを取得している。
また、同社は19日、「サイバー犯罪に関する情報共有や捜査支援、被害防止のために設けられた」米国非営利団体「NCFTA」に加盟し、ブロックチェーン捜査の知見を犯罪捜査に活かすことを発表した。
日本との関わり
バイナンスにとって、日本は多くのユーザーが居住する地域であり、CEOのCZ氏も日本での居住経験があることから関わりの深い地域といえる。
レポートによるとバイナンスの初期の顧客の多くは米国や中国、日本であり、また2017年9月には、中国本土での締め付けによりCZ氏とそのチームは東京に拠点を移していたという。
しかしその後、日本の金融庁は2018年3月に、未登録のままインターネットを介し日本居住者にサービス提供を行っているとして、バイナンスに対して一度目の警告を発するに至る。また、二度目の警告は2021年6月25日に行われている。
現在、バイナンスのサービスは日本語表記に対応しており、日本居住者はサービスを利用することが依然として可能だ。