盗電行為が多発
マレーシアの電力会社テナガ・ナショナルは3日、ビットコイン採掘者(マイナー)向けの、特別な料金プランを発表した。米メディアのブルームバーグが報じている。
同国では現在、暗号資産(仮想通貨)ビットコイン(BTC)採掘のため、電力を「盗む「事例が多発している。告知された電力プランは、そういった犯罪行為を抑制するための試みのひとつだ。
英ケンブリッジ大学傘下の独立プロジェクト「CBECI」が公開したデータによれば、21年8月時点で、マレーシアのビットコインの採掘シェアは4.6%と世界6位の規模を誇る。
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ブルームバーグは、同年の採掘業者が関与した電力窃盗の件数は7,209件に達していると説明。また、マレーシアのエネルギー委員会が、今回の電力プランの告知と平行する形で、採掘者に対して合法的な電力を使用するよう呼び掛けたと報道している。
採掘(マイニング)とは
ビットコインなどPoW通貨の取引を検証・承認する「採掘」行動のこと。成功すると、現在のビットコインのブロック生成報酬に加えて、そのブロックに取り込まれたトランザクションの手数料が報酬としてマイナーに支払われる。
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採掘マシンを破壊
マレーシアは、NFT(非代替性トークン)アートのイベントを開催するなど、仮想通貨に積極的な姿勢を見せる一方、違法行為の取り締まりは厳格に行っている。
21年7月には、同国の警察が、スチームローラーを使用して1,000台以上のビットコイン採掘マシンを破壊する動画が拡散。ネット上で大きな注目を集めた。
採掘マシンは、警察と電力会社Sarawak Energy Berhad(SEB)の共同作戦によって逮捕された、採掘のため電力を盗んだ8人から押収されたもの。
このケースでは、刑法に基づき合計6人が起訴され、最高8,000リンギット(約21万円)の罰金と、最長8か月の懲役が科せられた。
続く電力消費の議論
2021年の仮想通貨市場の高騰以降、ビットコイン採掘による電力の消費は、常に議論の対象となってきた。
イランは電力需要を鑑み21年、5月から9月まで約4ヵ月、採掘事業を禁止する措置を講じた。カザフスタンは22年2月に、電力不足によって、採掘企業を強制閉鎖している。
環境への負荷も懸念されている。一度はビットコインでの支払いに対応した米EVメーカーのテスラは、その後「環境負荷への懸念」を理由として、決済受付を停止。同社は現在、ドージコイン(DOGE)決済を行っているが、記事執筆時点では、ビットコイン決済は再開されていない。
一方、再生可能エネルギーの利用など、環境に負担をかけずに採掘を行う試みも多く行われている。米国の「ビットコインマイニング評議会(BMC)」は1月、評議会メンバーは、採掘電力の66.1%に、持続可能エネルギーを使用していることを報告している。
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