仮想通貨市況
2日のニューヨーク株式市場では、ダウ平均株価は前日比402ドル(1.23%)安となった。ナンシー・ペロシ米下院議長の台湾訪問強行を受けて米中対立が先鋭化したことでリスク回避売りが優勢に。
ペロシ米下院議長は副大統領に次ぐ序列3位に位置する要職であることからも、これを看過できない中国側は猛反発。「人民解放軍は決して座視しない」と警告を発し、台湾近海で軍事行動に出るなど威嚇を強めた。
米国側は、万が一に備え原子力空母ロナルド・レーガン率いる空母打撃群や強襲揚陸艦を周辺海域まで派遣し、軍事衝突リスクの高まりが懸念される中での台湾訪問決行となった。
台湾を巡る地政学リスクの高まりや米中の対立激化は、関連国の貿易摩擦にもつながる可能性があり、今後も予断を許さない情勢が続きそうだ。
2日にかけてFRB(米連邦準備制度)による金融引き締めの緩和思惑が萎んだことも相場の下押し圧力となったとの指摘もある。サンフランシスコ連銀のデーリー総裁は2日、「インフレ抑制に対するミッション完遂にはほど遠い」との認識を示し、現状認識について釘を刺した。
暗号資産(仮想通貨)市場では、ビットコインは乱高下しつつ前日比+0.02%の22,811ドルで推移。ここ数日間で下落幅の大きかったイーサリアム(ETH)は、前日比3.1%高となった。
ペロシ米下院議長の搭乗した軍用機が台湾に到着した際は、軍事衝突に発展せず着陸したことで一時反発する局面もあったが、明け方にかけて再び下落した。
SOLエコシステムで大規模ハッキング
NFTマーケットプレイスのMagic Edenは本日9時頃、「SOLに関する広範なエクスプロイト(exploit)が発生中」として警鐘を鳴らした。エクスプロイトとは、ネットワーク及びハードウェアの脆弱性を悪用する攻撃を指す。
SOL基盤の主要デジタルウォレットであるPhantomやSlopeなどから、仮想通貨ソラナ(SOL)及びSPL規格の関連トークンが大量に不正流出したものとみられる。
🚨 Widespread Solana private key compromise 🚨
— foobar (@0xfoobar) August 3, 2022
– attacker is stealing both native tokens (SOL) and SPL tokens (USDC)
– affecting wallets that have been inactive for >6 months
– both Phantom & Slope wallets reportedly drained pic.twitter.com/AkZXOGLD0Q
ブロックチェーンの監査を行うOtterSecは、「過去数時間で5,000を超えるSOLウォレットの残高が空になった」と指摘。トランザクションは所有者自身によって署名されており、所有者であることを証明する「秘密鍵」の侵害を示唆しているとの見解を示した。
Over 5000 Solana wallets have been drained in the past few hours. https://t.co/8XS7oGrJQP pic.twitter.com/oNWgtZm2oS
— OtterSec (@osec_io) August 3, 2022
Phantomは公式Twitterのアナウンスで、「チームは、当ウォレット固有の問題であるとは考えていない。SOLエコシステムで報告された脆弱性を突き止めるため全力を尽くしている最中であり、続報があれば伝える。」と報告した。
We are working closely with other teams to get to the bottom of a reported vulnerability in the Solana ecosystem. At this time, the team does not believe this is a Phantom-specific issue.
— Phantom (@phantom) August 3, 2022
As soon as we gather more information, we will issue an update.
現時点では原因究明には至っておらず、FUD(Fear/Uncertainty/Doubt)など情報が錯綜しているので注意したい。大手NFTマーケットプレイスのMagic Edenは、応急措置としてウォレット内のすべてのアプリのアクセス許可を「Revoke」した上、中央集権型暗号資産(仮想通貨)取引所やコールドウォレットへの資金移動を推奨した。
関連:ソラナの仮想通貨ウォレットが標的に、ハッキングによる大量被害
オンチェーンデータ分析
Glassnodeは、最新の週次レポートで、「先日の大規模な降伏シグナルの中でいくつかのアクティビティ急上昇は確認されたものの、現在のネットワーク活動は、未だ新しい需要の流入はほとんどないことを示唆している」と結論付けた。
アクティブアドレスが、依然として下降トレンド内を推移していることが背景にある。
21年10月〜11月に達成した1BTC=69,000ドルの過去最高値(ATH)では、強気トレンドのピークにあった21年4月と比較するとオンチェーンフローが回復し切れておらず、ユーザーの需要が追い付いていなかったことを示唆する。
明るい兆しとしては、BTCライトニングネットワーク(LN)需要の最高値更新で、過去2ヶ月間で19%増加した。
ライトニングネットワークは、ビットコインの主要レイヤー2ソリューションであり、ブロックチェーン外で取引を行うオフチェーン取引を用いて送金速度を向上させ、少額決済に対応したもの。
21年9月には、国家初となる「ビットコイン法定通貨化法案」を施行したエルサルバドルのデジタルウォレット「Chivo」がLN決済をサポートしたほか、Twitterがライトニング・ネットワークを介した「Tips(投げ銭)機能」を提供したことも普及を促進した。
マイナー情勢
なお、Arcane Researchの週次レポートによると、2021年のETHマイニング収益は計180億ドルに達し、ビットコインマイナーの収益1700万ドルをわずかに上回り、2022年も引き続きリードしている。
イーサリアム(ETH)の大型アップグレードThe Merge(ザ・マージ)に伴い、合意形成アルゴリズムはPoWからPoSへの移行が予定される。
トランザクション検証に必要な計算能力を大幅削減できることによる環境に優しいメカニズムは利点であるが、一方で既存のETHマイナーは採掘を継続できなくなることを意味し、岐路に立たされている。
代替手段として同等のGPU環境で採掘可能なイーサリアムクラシック(ETC)の採掘が候補に上がるが、現状の収益規模は現在のETH採掘の3%程度に過ぎず十分に需要を満たしていないとの指摘もある。
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