OpenSea元社員のインサイダー取引訴訟
大手NFT(非代替性トークン)市場OpenSeaの元社員がインサイダー取引を行っていたという疑惑に関して、元社員側の弁護士は19日、訴訟を取り下げるよう申し立てた。
ニューヨーク南部地区地方裁判所に提出された文書で、インサイダー取引とマネロンの疑惑を否定する論述を行っている。
OpenSeaとは
大手NFTマーケットプレイス。2017年に設立されたNFT黎明期の取引プラットフォームで、2021年7月にはシリーズBの資金調達ラウンドでVC大手のa16zなどから約1,100億円を調達。NFTブームの影響で出来高が急増し、2021年8月には週間出来高が10億ドル(1,100億円)を突破した。
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経緯
米司法省は6月、元従業員Nathaniel Chastain氏に対してインサイダー取引をめぐり訴訟を起こしていた。
Chastain氏は2021年5月頃、OpenSeaのプラットホーム上で特集されるNFTを選択する役割にあり、この立場を利用したとされる。対象となるNFTが表示される前に自身でそれらを多数購入し、掲載により値段が上がったところで、購入額の2倍から5倍の価格で売却して利益を得ていたという。
米司法省は、Chastain氏がインサイダー取引に加えて、マネーロンダリングも行なっていたと主張している。
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弁護士による反論
Chastain氏の弁護士は今回の申立書でまず、インサイダー取引とみなすには金融市場とのつながりが必要だとしている。
過去の判例などを参照すると、インサイダー取引は特に証券や商品(コモディティ)取引の文脈で適用されるもので、「市場の誠実さを損ない、公衆を犠牲にするような形での義務違反と重要な非公開情報の利用を伴う」ものだと指摘する格好だ。
こうした点で、「NFTは証券でも商品でもない」ために、今回の件には適用されないと主張。「政府は、デジタル資産分野での先例を設定するために、根拠なく拙速な訴訟を起こした」とも続けた。
次に弁護士は、マネーロンダリングの疑惑についても反論した。マネーロンダリングが行われていたとみなすためには、政府は以下のことを証明しなければいけないと説明している。
金融取引に関与する財産が違法行為の収益であることを知りながら、その違法行為の収益に関与する金融取引を行った、または行おうとした。
さらに、その取引が違法行為の収益の性質や場所、出所など隠すために設計されているという知識を持って取引した。
今回の事例では、そもそも「特定の違法行為」がないために訴えを棄却するのが適当だと論じる形だ。
また、「米政府は、Chastain氏がイーサリアム(ETH)ブロックチェーン上の同氏のデジタルウォレットから別の同氏保有デジタルウォレットに仮想通貨を送信したことをもってマネーロンダリングを行ったと申し立てている」が、これは「隠蔽される取引」ではないとも指摘した。
イーサリアムブロックチェーンはオープンでパブリックなものであるため、取引は記録・公開されており隠匿できるものではないとしている。