キプロス当局からライセンス取得
大手暗号資産(仮想通貨)取引所FTXの欧州部門は15日、地中海の島国キプロスで投資会社としてライセンスを取得したことを発表。これにより、FTX EUはアイスランド、リヒテンシュタイン、ノルウェーを含む欧州経済領域全体でサービスを提供することができるようになった。
キプロス証券取引委員会(CySEC)から付与されたライセンスの下で、FTX EUは、欧州金融市場の包括的な規制である、「第二次金融商品市場指令(MiFID II)」の厳格な財務基準を遵守することが求められる。
遵守事項には、顧客資金の分別管理と保護、事業運営の完全な透明性、自己資本比率の管理などが含まれている。FTXは、「現在MiFID IIライセンスのもとでサービスを提供する唯一の仮想通貨取引所になった」と述べている。
FTXのSam Bankman-Fried CEOは、次のようにコメントした。
欧州連合でこのライセンスを確保することは、世界で最も規制された取引所の1つになるという目標を達成するための重要なステップだ。
私たちは、キプロス証券取引委員会や世界中の規制当局と協力して、伝統的な金融機関に求められる基準を満たし、業界のリーダーとなるべく努力を続けている。
FTX EUは、欧州と中東での事業拡大に伴い立ち上げられたFTXの欧州部門。主な拠点をスイスとしており、ドバイとキプロスに子会社がある。キプロスの事業はEUを担当している。
FTXは3月、アラブ首長国連邦のドバイでも仮想通貨事業ライセンスを取得していた。これまでも欧州や中東地域のユーザーはFTXを利用できたが、ライセンス取得により、法的遵守を強化しながら事業展開を図ることになる。
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欧州で認知度向上を図る
FTX EUの責任者であるPatrick Gruhn氏は3月、コインポストの提携メディアThe Blockのインタビューで、「FTXは欧州地域でトップの仮想通貨取引所になることを目指している」と語っていた。
Gruhn氏は、FTXはまだ欧州の個人投資家の間で認知度が低いため、今後ソーシャルメディア広告を打ち出したり、音楽フェスティバルのスポンサーを務めるなどのプロモーションを積極的に行っていく計画だと続けている。
英国ライセンスについて
Gruhn氏は、FTXが英国でライセンス取得を検討していることにも言及していた。
「私たちは今、英国にスポット取引を導入しようと考えているが、かなり難しい」「英国の金融行動監視機構(FCA)は仮想通貨に関して比較的懐疑的な姿勢を示しているようなので、まずFCAと対話をしたい」と話していた格好だ。
FTXはデリバティブを主力商品としているが、英国ではスポット取引の提供に焦点を置くことを考えている。英国の規制当局FCAが、個人投資家への仮想通貨デリバティブ商品の提供を制限しているためだ。
デリバティブとは
仮想通貨や株式といった元になる資産から派生した金融商品のこと。英語表記は「派生」を意味する「derivative」。日本語では「金融派生商品」とも呼ばれる。代表的なデリバティブに先物取引、オプション取引、スワップ取引などがある。原資産の取引におけるリスクを軽減するために活用したり、単純に高い収益性を追求するために利用されている。
▶️仮想通貨用語集
インタビューから半年ほど経過しているが、まだFTXは英国でライセンスを取得できていない状況である。
FCAは16日、FTX利用について消費者に注意を促したところだ。「FTXは当局の許可を得ずに英国で金融サービスや商品を提供している可能性がある」「金融サービス補償制度などによる保護が受けられないので、万が一の場合にお金が戻ってくることはまずない」と警告している。