「不正行為疑惑などを独立して調査する必要」
米国司法省の連邦管財官事務所は1日、暗号資産(仮想通貨)取引所FTX破綻に関して独立した審査官を任命することを申し立てた。独立した立場から、FTXの不正行為疑惑などを調査する必要があるとしている。
連邦管財官事務所のAndrew R. Vara氏が、破産裁判所に申立書を提出した形だ。Vara氏は、次のように指摘している。
審査官は、債務者(FTX)による詐欺、不正直、不正行為、管理不行き届きに関する疑惑、破綻を取り巻く状況、取引所ユーザー資産の流用などの疑惑を調査する必要がある。
また、FTXの損失を救済するための正当な理由や動機があるかについても調べるべきだ。
現在、FTX破綻については、暫定CEOおよびCRO(最高事業再構築責任者)に就任したJohn Ray氏が内部調査を進めているところだ。一方で、管財官事務所は、事件の重大性にかんがみて、内部調査だけでは足りないとみなしている。
Vara氏は申立書で、FTXの新経営陣も、問題の一部を解明するために事前作業を行ってきたが「問題になっていることは、内部調査に任せておくにはあまりにも重大」だと述べた。
「管財官事務所は、Ray氏の能力や誠実さを疑っていない」が、Ray氏の役割は、「他のすべての利害関係者の目的とは必ずしも一致しない可能性がある」とも続けている。
その上で、独立した審査官は、全ての関係者に対して中立的な立場をとることが可能であり、審査官が調査を担当することにより、Ray氏もFTXの事業安定化という本来の職務に専念することができると主張した。
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様々な疑惑
FTXは11月、米国でチャプターイレブンにより破産申請を行った。その後、暫定CEO Ray氏が率いる内部調査が行われている。Ray氏はFTXの調査にあたって「企業統制の完全な失敗と、信頼できる財務情報の完全な欠如」を目にしていると語っていた。
これまでに、顧客資産の流用や、不適切な帳簿管理、子会社を通じた不動産投資がFTX幹部の別荘購入に充てられていたことなどが指摘されている。
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米連邦破産法11条(チャプターイレブン)とは
日本の民事再生法に似た再建型の倒産法制度。経営を継続しながら負債の削減などを実施し、企業再建を行う。申請後に債権取り立てが停止され、債務者は負債の整理に取り組み、原則120日以内に再建プランを策定する。
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「政治的側面に対応か」
今回の管財官事務所の要請について、米商品先物取引委員会(CFTC)で以前にシニア弁護士を務めていたBraden Perry氏は、政治的な側面を指摘した。「この事件には政治的な含みがあった」と述べた。
FTXが活発に政治家に献金していたことに触れて、独立審査官を要請する理由は「慎重を期して、何が起こっても独立したレベルで行われるようにという配慮からだと思う」と意見している。
11月には、米証券取引委員会(SEC)に対して、企業への過度な調査を批判する書簡を提出した議員らが、FTXから寄付金を受けていたことも報じられたところだ。書簡により、FTXに対する調査を遅らせた可能性があると一部で問題視されている。
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