顧客資産不正流用が主な容疑
米国の捜査当局は13日、暗号資産(仮想通貨)取引所FTXのサム・バンクマン=フリード(SBF)前CEOを起訴した。
米司法省は、サム氏を詐欺、マネロン、選挙資金提供の容疑で起訴。連邦捜査局(FBI)は、電信詐欺、商品詐欺の共謀、証券詐欺、マネロン、連邦選挙委員会を欺いて選挙資金違反を行った共謀などで起訴した格好だ。
起訴状によると、サム氏の容疑は、FTXに預けられた数十億ドルの顧客資産を不正流用し、FTXおよびグループ企業アラメダリサーチの投資家らを欺いたという行為によるものとされている。
なお、サム氏は12日、滞在先バハマの王立警察(RBPF)に逮捕されたところだ。バハマ警察は、米国への身柄引渡しを念頭に、サム氏を逮捕している。
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FTXとは
SBF容疑者が率いていた仮想通貨取引所。2019年の創設後、急速に頭角を表し、業界最大手バイナンスに次ぐ大手取引所へと成長していた。その後に経営破綻し、今年11月に破産申請を行なっている。
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ニューヨーク南部地区連邦検事のダミアン・ウィリアムズ氏は、FTXの件は「管理不行き届きではなく、明白かつ単純で意図的な詐欺事件だった」と述べた。また、起訴のタイミングは、議会での証言予定などとは関係なく決定されたものだとも説明している。
サム氏は、13日に米下院金融サービス委員会の公聴会で証言する予定だったが、逮捕・起訴により欠席となった形だ。
企業の名前を隠して政治献金か
米司法省は、選挙資金違反について、次のように説明している。
フリード氏とその共謀者は、2022年の選挙に先立って、アラメダリサーチを資金源として、連邦議会の議員候補と選挙委員会に、数百万ドルの政治献金を行った。
こうした献金が企業資金によるものだという事実を隠し、献金制限と報告義務を逃れるために、フリード氏は、真の資金源ではなく、共謀者の名前で献金を報告させていた。
これまで、FTXが様々な議員や共和党の議会委員会などに寄付を行っていたことは知られていたが、今回、企業からの献金ということを隠した形で献金していたことも容疑として指摘された格好だ。
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バハマ当局、保釈要求拒否
バハマで身柄を拘束されたサム氏の弁護士は、約3,400万円(25万ドル)でサム氏を保釈するよう要求したが、バハマの裁判官は13日、これを拒否する判決をくだした。
バハマの検事らは、米国への引き渡し義務に触れて、保釈を拒否するよう主張していた。サム氏の保釈を認めれば、「被告人の引き渡し手続きが終わるまで身柄を拘束することを義務付ける米国との条約に反する」と論じた形だ。
一方、サム氏の側は、「身柄引き渡しに対抗する権利を放棄しない」と申し立てており、バハマに居続ることを模索する可能性もある。
米国では、捜査当局とは別途、米証券取引委員会(SEC)も、サム氏に対して訴訟を起こしたところだ。