仮想通貨分野への「性急な投資は賢明でない」
カナダのオンタリオ州教員年金基金(OTPP)は、仮想通貨取引所FTXの破綻後、暗号資産(仮想通貨)セクターへの投資を差し控えている模様だ。フィナンシャルタイムズが21日に報じた。
OTPPは、約33万人の教員と学校職員の年金を提供するファンドだ。OTPPのジョー・テイラー最高経営責任者は、「また性急に仮想通貨セクターへ投資することは賢明ではない」と述べている。
背景として、OTPPは、22年に破綻したFTXの株式を購入していたことで、約130億円を損失計上したことがある。この際OTPPは、純資産総額に占める投資規模を考慮すれば、基金に与える影響は「限定的」であるが、この経験から学びたいと説明していた。
なお、OTPPはFTXで損失を出した一方で、株式と債券の両方が低迷した2022年に、プラスのリターンを達成した少数の年金基金の1つだ。
関連:カナダの年金基金、FTX破綻の影響で約130億円を損失計上
情報開示が不十分だったFTX
ジョー・テイラー氏は、FTXへの投資について次のように続けている。
私たちは時間をかけて、FTXについて多くのリスク精査を行った。しかし、私たちの想定した通りにはいかない結果となった。
バランスの取れた決断を下すために必要な情報が、必ずしもすべて示されていたわけではない。
FTXは米国でチャプターイレブンにより破産申請した。その後、同社の経営体制が杜撰であり、適切な財務記録などが存在しない、顧客資金を姉妹会社が流用していたなど、様々な問題点が発覚している。
米連邦破産法11条(チャプターイレブン)とは
日本の民事再生法に似た再建型の倒産法制度。経営を継続しながら負債の削減などを実施し、企業再建を行う。申請後に債権取り立てが停止され、債務者は負債の整理に取り組み、原則120日以内に再建プランを策定する。
▶️仮想通貨用語集
カナダのクリプト状況
カナダでは、OTPPの他、大手年金基金CDPQも、FTXと同様にチャプターイレブンで破産申請したセルシウスへの投資で影響を被った。セルシウスへ出資した約200億円が回収困難であると判断している。
仮想通貨企業の破綻が続いた後の2022年12月には、約53兆円の資金を運用するカナダ最大の年金基金CPPインベストメンツも仮想通貨投資について検討するチームを解散したことが報じられた。
カナダの証券管理局(CSA)は22年12月、FTX破綻を受けて、仮想通貨取引所に対してマージン取引・レバレッジ取引の提供を禁止。顧客資産の分別管理も要求したところだ。
取引所が約束を履行しない可能性、セクター内の相互接続性、破産、ハッキング、価格変動などの可能性を挙げて、「仮想通貨は高リスクの投資」だとしている。