経営システムの欠如
破綻した暗号資産(仮想通貨)取引所FTXに対する初の公聴会が13日、米下院金融サービス委員会で開催され、現CEOのジョン・J・レイIII氏が証言を行った。FTXの創業者で元CEOのサム・バンクマン=フリード(SBF)氏の証言は、前日の逮捕により見送られた。
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レイCEOは、冒頭陳述で現段階までの調査で明らかになった点として、以下の四つをあげた。
- FTX.comの顧客資産がアラメダリサーチの資産と混在していた
- アラメダリサーチは顧客資産を利用して信用取引を行い、巨額の損失に晒した
- FTXグループは2021年から2022年にかけて、50億ドルを多くのビジネスや投資に費やしたが、その多くは価値が激減している可能性がある
- 15億ドルを超える融資や支払いが内部関係者に対して行われた
金融委員会のマキシン・ウォーターズ議長が、別組織であるFTXとアラメダにおける独立したガバナンスの有無を尋ねると、レイCEOは、FTXグループの運営は分離されておらず、一つの会社として運営されており、両社の間には「区別がなかった」と回答。また、企業構造に関しては「独立した取締役会もなく、一人の人間が全てをコントロールしていた」と説明した。
レイ氏によると巨額の顧客資金の管理・保全の責任があったにもかかわらず、FTXには正式な経理部がなかったという。「FTXグループは異常だ。文字通り、何の記録管理も存在しない。」とレイ氏。FTXの社員はビジネス版のチャットツールであるSlackで、請求書や経費のやり取りをしていたと指摘した。
FTXが会計管理に、中小企業向けの会計ソフト「Quickbooks」を利用していたことをレイ氏が明らかにすると、議員からは驚きの声が漏れた。「QuickBooksは素晴らしいツールだが、数十億ドル規模の企業には向いていない」と同氏は付け加えた。さらに、FTXには人事部やコンプライアンス部門もなく、「肩書き」のある人間がいるだけだったという。
経験も浅く、教養もないこの少人数のグループは、他人のお金や資産を預かる企業にとって必要なシステムや統制を、実質的には何一つ導入していなかった。
「昔ながらの横領」
レイ氏は、2001年に破綻し、110億ドルの損失を出したテキサスのエネルギー企業、エンロンの破産処理に敏腕を振るった経営者として知られる。この公聴会でも、FTXとエンロンのケースを比較する場面もあったが、その共通点は破綻の規模だけのようだ。
レイ氏によると、エンロン社の犯罪は「高度に洗練された人々」が「高度に組織化された金融工作」を行ったものだが、FTXの犯罪は、単に「昔ながらの横領」だと主張。「顧客から金を巻き上げて、自分の目的のために使ったにすぎない」と述べた。ただし、洗練された点があるとすれば、「人々の目の前で」横領の事実を隠せたことだろうと付け加えた。
レイ氏は、FTXの幹部が顧客資金を借りたり、受け取るための「無制限の能力」があり、個人的な用途のために10億ドル以上を引き出していたと証言。SBF氏が「融資の発行者と受取人の両方の立場で署名した」例もあったと指摘した。
FTXが適切な記録管理を行わなかったことが、破綻の下地となり、同社の総資産や負債を把握することが非常に困難になってしまっていると同氏は主張。破綻した企業でも、通常なら何が起きたかの「ロードマップ」はあるが、FTXの場合、「前例のない文書の欠如」により、何が起こったかを知ることが困難な、「文字通りのペーパーレス倒産」を扱っていると述べた。
米証券取引委員会(SEC)は13日、SBF氏の起訴を発表。米司法省や連邦捜査局(FBI)、商品先物取引委員会(CFTC)もこれに続いた。
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バハマ当局との軋轢
公聴会では、破産申請後のFTXの資産の取り扱いに関して、FTXが本拠を置いていたバハマ当局とレイCEO側が、大きく意見が食い違がっている点も言及された。
米国でのFTX社の破産申請後、FTXの資産がバハマに移動したことが問題視されている。レイ氏は、バハマ在住のFTXの顧客約1,500人が、破産申請前日に合計1億ドルを引き出していたことを批判。この資金は米国の破産プロセスで保護され、凍結されるべき資産だった。
同氏はSBF氏とバハマ政府が、破産手続きが間も無く開始されることを知っていながら、引き出しを許可する契約を結んだ可能性があると指摘した。
これに対し、バハマの証券取引委員会は声明を出し、レイ氏の指摘は「虚偽」であり、事実とは関係ないと主張。「見出しを作り、疑わしい議題を進めることを意図しているようだ」と批判している。
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