仮想通貨ファンド動向
スイスの投資顧問会社21e6 Capital AGが発表したデータによれば、2023年には全体の700以上の暗号資産(仮想通貨)ファンドのうち、13%にあたる97のファンドが閉鎖されたという事実が明らかになった。仮想通貨ファンドの平均リターンもビットコイン(BTC)を下回り、その苦境が続いている。ブルームバーグが4日に報じた。
同社の詳細分析では、2023年の上半期における暗号資産ファンドの平均リターンが15.2%で、これは同時期にビットコインが記録した83.3%というパフォーマンスに比べて大きく見劣りする。特に注目すべきは、一部のファンドが年始に銀行パートナーを失い、安全な取引所やカストディアンの確保に時間を費やすことで運用ペースを落とさざるを得なかった事情がある。
さらに、クオンツファンドにも困難が見られた。通常、これらのファンドは現金を決済通貨として使用し、現金化を通じて資産を売却する必要がある。大量の現金ポジションを必要とするこれらのファンドは、ビットコインの上昇相場に対してパフォーマンスが後れる傾向がある。
2022年末の市場の動向を踏まえて、通常よりも大きな現金ポジションを持つファンドが増え、それがパフォーマンス低下の一因となったと見られている。
21e6 Capital AGのマーケティング・営業部長、マクシミリアン・ブルックナー氏は投資家心理について次のように述べている。
若干の改善の兆しは見られるが、全面的な回復に至るまでにはまだ時間が必要だ。これは、新たなファンドの設立や資金の流入の動向を見ても明らかだ。
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アジア圏は活発
ブロックチェーンや仮想通貨のスタートアップに対するベンチャーキャピタル(VC)の資金調達も、2023年に減少傾向が見られた。
Crunchbaseの提供するデータによると、2023年第2四半期(4-6月)における分散型ウェブ(Web3)スタートアップへの資金調達は18億ドル(約2,500億円)に留まり、前年同期の75億ドル(約1兆円)から比較して、投資総額は約76%減少した。
資金調達の規模が縮小していることも顕著だ。昨年の第2四半期には、1億ドル以上を調達したスタートアップは15社あったが、今年の同四半期ではその数は3社にまで減少している。
ただし、アジアを中心に一部のベンチャーキャピタルの動きは活発化している。香港とシンガポールで運営されている暗号資産専門の資産運用会社、HashKey Capitalは今年1月に、新ファンド「FinTech Investment Fund III」で約650億円(5億ドル)を調達した。これには、政府系ファンド、企業、ファミリーオフィスなどが資金を提供した。
日本では、仮想通貨の自動損益計算サービス「クリプタクト」等を提供する株式会社pafinが、大和証券グループ本社と業務提携に向けた取り組みを開始。大和証券グループ本社はpafinの第三者割当増資を引き受けることを決定している。
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