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上院デジタル資産小委員会で議論
米上院銀行委員会が設立した暗号資産(仮想通貨)に特化した小委員会で26日、初めての公聴会が開催され、ステーブルコインに関する規制について、上院議員と業界の代表者らで議論が交わされた。
「デジタル資産に関する超党派の立法枠組みの検討」と題した公聴会では、議長を務めた仮想通貨支持派のシンシア・ルミス議員 (共和党)が冒頭陳述で、「ステーブルコインと市場構造の両方について、我々は超党派による立法枠組みの最終的な作成の一歩手前まで来た」と述べ、すでに仮想通貨規制の整備は、超党派の取り組みとなっていることを強調した。
公聴会での証言は仮想通貨規制全般に及んだが、特にステーブルコインと、新たに提出された「米国ステーブルコインのための国家的イノベーションの道筋と構築に関する法案(GENIUS)」に注目が集まった。
GENIUS法案は、2月4日に上院銀行委員会のティム・スコット委員長(共和党)とビル・ハガティ議員 (共和党)、カースティン・ギリブランド議員 (民主党)およびルミス議員が共同で提出したものだ。
この法案は州と連邦の規制をバランスよく取り入れ、小規模なステーブルコイン発行者(100億ドル未満)が州の監督下で運営できるようにする一方で、大規模なステーブルコイン発行者(100億ドル以上)は連邦政府の監督下に置くことを目指している。
ステーブルコインの監督
公聴会では、民主党のティナ・スミス議員が消費者保護の観点から、「ステーブルコイン発行者の性格と適格性の審査」を法律で義務付けるべきかどうかを質問した。
商品先物取引委員会(CFTC)元委員長でハーバード大学ケネディスクール研究員のティモシー・マサド氏は、GENIUS法案では義務付けていないが、義務付けるべきだと主張。同様の基準は欧州や他の国々の法律にも存在すると付け加えた。
同氏は、ステーブルコイン取引の監視の重要性を強調し、発行者がマネーロンダリング対策の課題に対処するため、スマートコントラクトの設計にも言及し、ステーブルコイン活動を「積極的に監視すること」を提案した。
一方、決済会社ライトスパークのジャイ・マッサリ氏は、ステーブルコインはパブリック・ブロックチェーン上で発行されるため、当局が監視可能だと指摘。この技術に対する賢明な規制を求めた。
バーニー・モレノ議員(共和党)は、米国政府による過剰な規制の意向に反対を表明。以下のように述べた。
政府は物事を完全にコントロールしたいという強い願望を持っている。仮想通貨の話になると、なぜ突然、ワシントンDCで(政治家が)イノベーションのペースや技術のあり方を決めると考えたのだろうか。
下院でも法案提出
下院金融サービス委員会のフレンチ・ヒル委員長(共和党)らは6日、米国におけるドル建て決済用ステーブルコインの発行・運用の枠組みを確立するための法案について、議論の叩き台となる草案を発表した。
この草案は、以前、前委員長のパトリック・マクヘンリー氏(共和党)とマクシン・ウォーターズ議員 (民主党)らが進めていたステーブルコイン法案と異なり、認定されたステーブルコイン発行者の承認・監督権限を、通貨監督庁(OCC)に与えるとしている。
この草案が提出されて間もない2月10日には、ウォーターズ議員が、マクヘンリー氏と3年越しで取り組んできた集大成として、ステーブルコイン法案を提出した。
この法案では、より中央集権的なアプローチが取られ、銀行と非銀行の両方を含むすべてのステーブルコイン発行者を連邦準備制度の監視下に置くことになる。
また、金融機関ではない大手テクノロジー企業などによるステーブルコインの発行を禁止し、テザー社のようなオフショア企業が米国の規制を回避することを阻止する。さらに、FTXのサム・バンクマン・フリードのように金融犯罪で有罪判決を受けた個人が、役員を務めたり、発行者の株式の5%以上を所有することを禁止している。
どう規制すべきかに焦点
上下両院で異なる法案が提出された事実は、ステーブルコインを巡る議論の大きな転換点と見ることができる。議論はもはや、ステーブルコイン規制を制定すべきか否かではなく、どのように規制すべきかに移ってきている。
上院に法案を提出したギリブランド議員は5日に発表した声明で、この法案が消費者を保護し、責任あるイノベーションを推進する役割を果たすとして、その重要性を強調した。
ステーブルコインと仮想通貨の未来は、超党派の強力な支持を得ている。この法案は、責任あるイノベーションを促進し、デジタル資産における米国のリーダーシップを維持し、仮想通貨企業と雇用を国内に留めることになるだろう。
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