
他国がビットコインを購入する可能性を高める
トランプ大統領は数時間前、ホワイトハウスにて戦略的ビットコイン(BTC)準備金を設立する大統領令に署名した。サックス仮想通貨特命官によると、この準備金は刑事または民事の資産没収手続きの一環として政府が既に保有しているビットコインで構成される。米国政府は約2.6兆円相当の19万8109 BTCを所有しているとされ、今回の大統領令では連邦政府の仮想通貨保有量の完全な会計調査も指示された。
注目すべき点は、政府がこの準備金に預け入れたビットコインを売却せず、価値保存手段として保持する方針を明確にしたことだ。サックス特命官はこの準備金を「デジタル版フォートノックス(米国の金塊保管施設)」と表現し、その重要性を強調した。さらに財務長官と商務長官には「追加のビットコインを取得するための予算中立的な戦略を策定する権限」が付与されたが、これには「米国納税者に追加的コスト(購入のための追加徴税)を生じさせない」という条件が付されている。
今回の政策はビットコイン市場に重大な影響を与えると見られている。ビットコインETF発行企業のBitwise CIO マット・ホーガン氏の分析によれば、この動きは「米国政府が将来ビットコインを禁止する可能性を劇的に減少させる」とともに、「他国が戦略的ビットコイン準備金を設立する可能性を大幅に高める」ことになる。特に注目すべきは、米国による追加購入の可能性を前に「他国が先行してビットコインを確保しようとする短期的な機会の窓」が生まれる点だという。
さらに大統領令では、ビットコイン以外の仮想通貨からなる「米国デジタル資産備蓄(ストックパイル)」の設立も決定された。サックス特命官は「政府は没収手続きを通じて得られた資産以外に、追加で仮想通貨を備蓄のために取得することはない」と明言し、この備蓄の目的は「財務省の下で政府が保有する仮想通貨の責任ある管理を行うこと」にあると説明した。
この政策変更がもたらす制度的影響も投資家に注目されている。ホーガン氏によれば、米国政府によるビットコイン保有は「IMFなどの準政府機関を含む各種機関が、ビットコインを危険または保有に不適切なものとして位置づけることを著しく困難にする」効果を持つ。これにより、機関投資家によるビットコイン採用の障壁が低くなる可能性が高い。
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さらに、コインベースをはじめとする業界関係者からは、今回の大統領令により市場から約2.6兆円相当のビットコイン売圧が取り除かれるとの見方が示されている。米国政府が保有ビットコインを売却しないという明確な方針を示したことで、市場の不確実性が大幅に減少したとの分析だ。この政策は、ビットコインの制度的認知と長期的価値に対する信頼を強化する重要な転換点となりうる。
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