
新たなAIデバイスを開発へ
生成AI(人工知能)ChatGPTで知られるOpenAIは21日、スタートアップ企業IOを全額株式交換による取引により、65億ドル(約9,360億円)で買収すると発表した。
IOは、iPhoneなどのApple製品のデザイナーとして知られるジョナサン・アイブ氏率いるLoveFromとOpenAIが昨年に共同設立していたジョイントベンチャー企業である。
OpenAIは昨年末に、両社間の合意に基づきIOの株式23%を取得していたところだが、今回完全に買収することになる。
買収により、アイブ氏と約55名のエンジニアおよびリサーチャーがOpenAIに加わることになった。クリエイティブとデザインの分野を担当し、AIと消費者をつなぐ新たなハードウェアを開発する予定だ。
具体的にどのようなデバイスになるのかは、来年に発表される見込みである。
OpenAIのサム・アルトマンCEOは、次のようにコメントした。
AIは素晴らしい技術だが、優れたツールは、テクノロジーやデザインと人々や世界への理解が交差する領域での取り組みを必要とする。
ジョナサンと彼のチームに匹敵するほどに、このことを実現できる者はない。彼らが開発プロセスのあらゆる側面に注ぐ配慮は並外れたものだ。
また、「テクノロジーを使うことの意味は、根本的に変化し得る」と述べ、「30年前にAppleコンピュータを初めて使った時のような感動を届けたい」と続けた。新製品への感心を引き寄せる発言をした形だ。
OpenAIは4月、過去最大規模となる400億ドル(約6兆円)の資金調達を実施していた。ソフトバンクが300億ドルを出資して主導している。OpenAIはこの資金をAIの研究強化およびコンピューティングインフラの拡大に使用する予定だ。
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AI関連のハードウェアについては、メタ社などが写真や動画の撮影や通話が可能なスマートグラスを発売しているが、普及は進んでいない。
また、アルトマン氏はChatGPTによるAIアシスタント備えたウェアラブルデバイス「AIピン」を開発していたHumane社に投資していた。しかしその後、AIピンは過熱状態になるなどの苦情が多く寄せられサービス終了している。
今後、OpenAIが開発するハードウェアがどのようなものになるか注目されるところだ。
アルトマン氏はOpenAIの他、暗号資産(仮想通貨)プロジェクトも進めている。生体認証による人間証明プラットフォームWorld Network(旧ワールドコイン)だ。今回の動きを受けてWLDトークンは高騰し前日比26%超の上昇率を記録した。
さらに、21日には、大手VCのアンドリーセン・ホロウィッツ(a16z)らから200億円の資金調達を行った。
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