
政府系ファンドと協議中
米Web3ソフトウェア企業Consensys(コンセンシス)のCEOでイーサリアムの共同創設者ジョセフ・ルービン氏は3日、イーサリアム(ETH)が新たなグローバル金融システムの基盤となる可能性について、機関投資家から注目を集めていると語った。
分散型メディアRug Radioの「Fomo Hour」インタビューで、ルービン氏は「非常に大きな国の主要政府系ファンドや銀行」とイーサリアム・エコシステムにおける金融インフラの構築について協議していると発言。今後の道筋として、イーサリアムメインネット上のインフラ開発と独自のレイヤー2の構築が含まれる可能性を示唆した。
同氏は国や機関などについて明言しなかったが、X上ではサウジアラビアやアラブ首長国連邦(UAE)ではないかと推測が散見される。
ルービン氏は、インターネット誕生後のデジタル改革により情報、旅行、ジャーナリズムなどさまざまな産業が変化し発展した一方で、金融サービス産業ではほとんど目立ったイノベーションは起きなかったと指摘。現時点でグローバルな金融システムは存在せず、今あるシステムは「サイロ化された金融システムの寄せ集めをセロハンテープで貼り合わせたもの」と揶揄した。
また、現在の金融システムは、構造的に疲弊し崩壊しつつあるとして、次のように述べた。
我々は事実上、スーパーサイクルの終焉を迎えており、金融業界の行き過ぎ、アメリカの金融化、そしてアメリカの中流階級の空洞化が、このスーパーサイクルの終焉へと我々全てを導いている。
しかし、ルービン氏は今まさに、大きな変化が起きようとしており、分散型プロトコルこそが新たなグローバル金融システムを生み出すための答えだと述べた。中でもイーサリアムが「世界のコンピュータ」や「最も価値ある信頼される商品」として機能し、将来的にはビットコインを上回る可能性があると強調した。
その変化の一例が、「ある大国」がイーサリアム・エコシステムを活用した金融インフラの構築方法に関心を示していることだろう。
シャープリンクの財務戦略
スポーツゲーミングのアフィリエイトマーケティング企業のSharpLink Gaming(以下、シャープリンクと表記)は5月27日、イーサリアムを活用した財務戦略構築のため、総額約4.25億ドル(600億円超)の私募増資を発表した。
この資金調達を主導したのはConsensysで、ルービン氏がシャープリンクの取締役会長に就任予定だ。
シャープリンクの株価はこの発表後急騰し、5月29日には、年初から約10倍となる79.21ドルを記録。執筆時現在、55.38ドルとなっている。
シャープリンクの財務戦略は、米ストラテジー社(旧マイクロ・ストラテジー)のマイケル・セイラー氏が先陣を切って注目を集めたビットコインの購入・蓄積により利回り生み出す仕組みとは異なるという。
ルービン氏は、シャープリンクはイーサリアムを積極的に活用し、「慎重なリスクレベルでのステーキング、リステーキング、DeFiを活用して利回りを高めていく」と説明した。このような戦略が、企業にとって魅力的な収益機会を提供することになると同氏は強調した。
イーサリアム財務戦略の採用状況
ビットコイン財務戦略を採用する企業が急速に増加する中で、イーサリアムを準備資産として保有する企業は限られているが、変化の兆しが見られる。
先駆的な例は、世界4大会計・コンサルティング会社の一つであるカナダKPMGで、2022年2月に、ビットコインと共にイーサリアムをバランスシートに追加したことを発表した。
今年5月14日には、ナスダック上場企業BTCS社が最大5,780万ドル(84億円)相当のイーサリアム購入資金を調達する転換社債発行契約を締結したと発表した。5月16日時点でBTCSのイーサリアム保有量は約12,500ETHに達し、2025年第1四半期末の9,063ETHから約38%増加した。
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ロンドンのデジタル資産運用会社Abraxas Capitalは、5月に連続してイーサリアムを買い増しし、急速にポジションを拡大している。同月14日までの1週間で合計211,030 ETH(800億円相当)を取得したことが明らかになった。
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また同月12日には、アンバーインターナショナルが、1億ドル(約144億円)規模の暗号資産(仮想通貨)準備金を設立し、イーサリアムを含む主要銘柄に分散投資したことを発表した。
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