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「投資ポートフォリオに仮想通貨は必要か」テスタ×加納裕三×Joe Takayama特別対談レポート|WebX2025

画像はShutterstockのライセンス許諾により使用

WebX対談セッション:投資のポートフォリオに仮想通貨は必要か

2025年8月26日、WebX2025において「投資のポートフォリオに仮想通貨が必要か」をテーマとした対談が経済メディア ReHacQの公開収録を兼ねて行われた。

異なる投資スタンスを持つ専門家3名が議論を交わし、仮想通貨投資の論点と課題を浮き彫りにした。株式投資の伝統的手法と仮想通貨の特性の相違、リスク要因、税制改正の影響など、多角的な視点から投資判断の材料が提示された。

登壇者の仮想通貨投資スタンス

テスタ:慎重派

株式投資専業20年の経験を持ち、累計利益100億円に達する有名投資家のテスタ氏は、仮想通貨を一切保有していない立場から参加。「単純に分からない」ことを理由とし、専門分化の重要性を強調。資産分散の観点から仮想通貨の必要性について疑問を提起した。

Joe Takayama:積極派

2021-2022年頃から仮想通貨に集中投資を開始。金融商品への暗号資産組み入れ、米国におけるビットコイン現物ETF(上場投資信託)の承認、スマートコントラクトの金融機関採用を予測し、短期ボラティリティを許容して長期上昇を見込む戦略を採用。

加納裕三:事業者

暗号資産(仮想通貨)・ブロックチェーン業界の第一人者として長年にわたって牽引。現行の仮想通貨税制(最高税率55%)を20%に改正する活動を継続。米国でのトランプ政権誕生とETF承認を追い風として認識している。

ポートフォリオに含めるべきか

現在、資産のほぼ全てを仮想通貨に投資しており、生活費を除く資金は仮想通貨で運用しているというJoe Takayama氏は、主に3つ観点から、自身のポートフォリオにビットコイン(BTC)を含める理由を語った。

1. 金融商品としての将来性

仮想通貨がETFや金融商品として広く採用される可能性を高く評価。特にイーサリアムのスマートコントラクト技術が、既存の金融インフラを補完・代替する役割を果たすと見ている。「金融機関が仮想通貨を取り入れる流れは加速しており、長期的な成長は確実」と分析する。

2. 税制改正への期待

日本の仮想通貨の税率は現在、最高55%の総合課税が適用されるが、FXの税制改正の前例から、将来的に20%の分離課税への変更を期待。「税率が下がれば投資のハードルが下がり、市場がさらに活性化する」と述べ、税制改正が投資意欲を後押しした。

3. 好奇心と新しい可能性

仮想通貨の未知の魅力に惹かれたJoe Takayama氏は、「好奇心が投資の大きな動機だった」と振り返る。新しい技術や市場への挑戦が、仮想通貨への傾倒を加速させたという。

今後は、仮想通貨が既存通貨の一定量を代替し、利便性から普及が進むと予測。

「通貨が弱い国での決済やインフラとしての役割が拡大すれば、市場はさらに伸びる」と展望する。WebXの会場に集まった熱心な参加者の姿からも、仮想通貨の魅力と推進力を感じたという。「まだ整備されていない部分が多いからこそ、可能性が大きい」と、市場の未成熟さが成長余地を示すと強調した。

ビットコインの価値根拠について

テスタ氏からの質問では、「ビットコインの価値はどこにあるのか?」というものだ。最も重要な論点は、株式投資におけるPBR(株価純資産倍率)のような下支えとなる価値指標がビットコインに存在するかという疑問である。

加納氏は明確に「これが、ない」と回答。ビットコインには従来のファンダメンタルズ分析で用いられるPER(株価収益率)、EBITDA((利払前・税引前・減価償却前利益))など、財務指標の倍率を表すマルチプル指標が存在せず、「これまでの歴史で、過去に多くの人が挑戦を試みたフェアバリュー(適正価格)算出の試みは全て失敗に終わっている」と説明した。

その後「半ば無理やりな理論」と前置きした上で、今後既存の金融インフラを置き換えていく前提とすると、格安でブロックチェーンで資金移動ができるメリットと自国通貨が不安定な国々からの需要および資金流入がビットコインの価値を支えるという説明をした。

ただし、「デファクトスタンダード(事実上の標準)」化後は均衡状態に達する可能性も示唆した。

例えば、ベネズエラやアルゼンチンなどの国々では、ハイパーインフレが原因で自国通貨が急速に価値を失い、市民が富を保護する代替手段としてビットコインを求めている現状もあり、インフレや通貨切り下げに対するヘッジとして一定の役割を担っている。

そのため、不安定な自国通貨に対する実用的な代替手段を提供しているとの見方もある。

加納氏は、従来の投資指標が適用困難なビットコインに対し、「ステーブルコインと法定通貨の比較分析」を通じてブロックチェーン技術の実用価値を定量化する独自のアプローチも提示した。

この理論の核心は機会費用の概念にある。ステーブルコイン保有者は米ドル預金で得られる約5%の金利収入を放棄してもなお、ステーブルコインを選択している現実に着目。この機会費用の存在自体が、ブロックチェーン技術固有の利便性価値を定量的に示す指標として機能するとの分析を示した。

具体的な要素としては、①10秒程度での国際送金実現、②本人確認手続きの簡素化、③従来送金手段との比較における低コスト構造を挙げた。

さらに既存決済インフラとの比較分析では、クレジットカード会社が加盟店から徴収する手数料(3-8%)を例示。ステーブルコインによる直接決済が普及すれば、この中間コストを大幅に削減でき、事業者・消費者双方に経済的便益をもたらすとの見解を示した。

ただし、この分析手法をビットコインに適用する際の限界についても率直に言及。「ステーブルコインとビットコインの価値の差異は何か?」という本質的な問いに対しては明確な回答を避け、「何らかの価値は存在する」との推定に留めた。

金(ゴールド)との比較

テスタ氏は、「金とビットコインが、共に実用価値では説明困難な価格形成をしている」と言及。加納氏も「金の工業用途は全体供給量の数パーセントに過ぎず、実用性だけでは価値を説明できない」と指摘。その上で「金の市場価値は高値を更新している状態ではある」と言及した。

この点についてテスタ氏は、金の価値を人間の根源的嗜好で説明。オリンピックの金メダルを例に「古来から人類はDNA的に金色を好む」との仮説を展開。これによりプラチナより希少価値が低いにも関わらず金価格が上昇し続ける現象を説明できるとした。

金とビットコインの価値形成モデルについては、慎重な見方が示された。「単純に分からない」とし、金の物理的・視覚的魅力とデジタル資産であるビットコインの本質的な違いを指摘。

金は歴史的に金本位制で通貨の価値を裏付け、今日でも外貨準備の主要構成要素として、国の経済力や信用を象徴するバロメーターとなっている。国際金融市場での信頼性向上やリスク分散、財政的安定を支える戦略的資産と位置づけられる。

一方、ビットコインはインフレヘッジの手段として「デジタル・ゴールド」と見なされる向きもあるが、本質的違いから、その適用可能性には依然として議論が残る。

税制改正の市場への影響は

暗号資産(仮想通貨)の税制改正については、登壇者間で複合的な影響シナリオが議論された。

改正直後には利益確定売りによる短期的な価格下落が想定される一方、税制優遇による新規参入者の増加が中長期的な価格回復を促すとの見方が示された。

特に注目されたのは、長期保有者の売却行動に関する分析である。加納氏の見解では、資金繰りに余裕のある“握力”の強い富裕層や初期投資家層は税制改正後も売却に踏み切らない可能性が高いとされ、これが価格下落の緩衝材となる可能性が指摘された。

この分析を裏付ける実例として、2024年に約10年越しで開始されたマウントゴックス(Mt.Gox)債権者への弁済プロセスが挙げられる。事前に懸念されていた大量売却による市場への深刻な影響は限定的に留まった。

その要因として、債権者の多くが長期保有志向であったこと、弁済が段階的に実施されたこと、最大債権者の売却意向が低かったことなどが分析されている。

また、税制改正はあくまでに日本市場特有の動きであり、グローバルで見ると日本のシェアは10%程度であるとの指摘もなされた。

セッション総括

テスタ氏の「思った以上にビットコインの価値はふわっとしていた。でも、だからこそ上がっているのもあるのだろう」との総括は印象的である。

株式市場でも将来性への期待や材料への思惑買いで高騰することがあるように、不確実性こそが価格上昇の原動力となっている可能性を指摘し、制度整備が完璧になる前の戦略的投資機会の存在を示唆した。

「みんな分かってないな、整備が完璧にされてないな、という間は戦略として立てられるのではないか?」と投資機会への示唆を残しつつも、「ポジションを持つと冷静に見られなくなる」として当面の様子見姿勢を表明した。

ただし「すごい暴落したら買いたい」と投資意欲も覗かせ、このセッションを機に暗号資産(仮想通貨)への興味・関心が強まったことを示唆した。

モデレーターの高橋氏もこれに応じ「僕も仮想通貨を買いたいと思うこともあるが、性格的にポジションを持つと冷静に見られなくなるため、(自身の役回り的)にしばらくは購入を控えたい。フラットな視点で見られる人も必要だと思う」として対談を締め括った。

株式相場で20年間にわたって常勝無敗のテスタ氏の発言からは、投資判断における心理的バイアスの重要性が浮き彫りになったと言える。「分からないものこそ上がる」という逆説的な市場心理と、「分かった時は手遅れ」という投資タイミングの難しさが、仮想通貨投資の本質的な課題として認識されたと言えそうだ。

本セッションは、仮想通貨投資の多様な視点を提供し、投資判断における重要な論点を浮き彫りにする貴重な機会となった。

関連:ビットコイン投資の不安をまるごと解消|買い方と取引所選びをやさしく解説

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