
トランプ・ショック以降の市場概要
オンチェーン分析企業Glassnodeは15日、最新の暗号資産(仮想通貨)市場週次レポートを発表。ボラティリティ(価格変動の大きさ)が急上昇する中、市場はレバレッジの解消、慎重なセンチメントというリセット局面にあると述べた。
ETF(上場投資信託)への新たな流入などが市場回復への鍵になるだろうと予想している。
レポートは先週の市場について、ビットコイン(BTC)は史上最高値12万6,100ドルまで上昇したものの、米中の関税摩擦などマクロ的なストレスと極端なレバレッジによって、190億ドル(約2.9兆円)規模のレバレッジ解消イベントが引き起こされ急落したとまとめた。
なお、執筆時現在でビットコインは11万1,000ドル付近で推移しているところだ。
レポートによると、11万7,000ドル~11万4,000ドルで取得した層の価格コストを下回り、主要な買い手が再び損失を出している状況で、短期的な脆弱性を強めている。
Glassnodeは、価格を11万7,100ドル以上に押し上げる新たな要素がなければ、市場はレンジの下限に向けてさらに下落するリスクがあるとの見解を示した。
過去データをみると、価格がこのゾーンを維持できない場合は中長期的な調整局面が続くことが多く、10万8,000ドルを継続的に下回る場合は、構造的な弱さを示す重大な警告シグナルになると続けている。
また、2025年7月以降、ビットコインの長期保有者による売り圧が継続しており、これが上昇モメンタムを抑制しているとも指摘した。この継続的な売り圧力が需要枯渇のリスクを浮き彫りにしている形だ。

出典:Glassnode
レポートは、ETFの流入が勢いを失っていることにも触れた。10日のビットコイン史上最大の清算イベントの後、米国の現物ETF投資家からも緩やかな売り圧力が見られ、今週はこれまで2,300 BTCが純流出している。
しかし、Glassnodeは、これは過去の価格下落時の投げ売り局面と比べると穏やかな売りであり、投資家のパニックではなく、ためらいが示唆されると述べた。
ETFへの流入が弱含みのまま推移したり、回復が長期間遅れたりすれば、ビットコインのこれまでの上昇を支えてきた大きな原動力の一つを損なうことになるだろうと分析している。
ビットコイン現物ETFとは
実際にビットコインを購入し、そのビットコインを基にした信託(ETF)を株式市場で取引するもの。投資家は直接ビットコインを購入することなく、その価値に投資することが可能になる。さらにはデジタル通貨市場の成熟と認知度の向上が期待される。

出典:Glassnode
ビットコイン先物については最近の建玉の急落は、過去最大の1日あたりの縮小幅の一つであり、100億ドル(約1.5兆円)を超える想定元本ポジションが消失したと指摘。これは、2022年のFTX破綻時などに匹敵する、デリバティブ市場の大規模なフラッシュアウトだったと述べる。
フラッシュアウトとは過剰なレバレッジポジションが、一斉に清算されて市場から洗い流される現象のことだ。
Glassnodeは、ビットコインの今回の下落は、現物売りではなく、主にレバレッジ圧縮によって引き起こされたようにみえると述べる。
永久先物では、強気のレバレッジが解消された後、下落に賭けるトレーダーが多く、ショートポジションを維持するためにプレミアムを支払っていることが示されている。
Glassnodeは、こうした状況は恐怖のピークとレバレッジ解消の最終段階であることが多く、中期的なより健全な回復局面に向けてバランスを取り戻している時期である可能性があると論じた。
市場は依然としてリセット局面にあり、市場が自信を取り戻し持続的に回復するためには、今後はETFへの新たな流入とオンチェーンでの継続的な蓄積が鍵になると結論している。
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