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規約変更後に4億ドルの新規USDTが発行 仮想通貨相場への影響は上昇か下落か

画像はShutterstockのライセンス許諾により使用

新規テザーが発行
3月に担保資産の規約が変更されてから、4億ドルの新規テザーが発行されたことがわかった。市場への影響が危惧されるなかで、ビットコイン相場への影響がどのように出るか、過去の事例から考察した。

新規テザーが発行

仮想通貨業界で、依然晴れぬ疑惑を抱える「USDT(テザー)」が、再び新規発行を続けていることがわかった。

USDTは最大のステーブルコインとして、仮想通貨市場で24億ドルもの市場価値にまで規模を拡大しているが、4月からの2週間強で現市場規模の18%ほどに相当する4.3億ドルの新規発行が確認された。

出典:CoinMarketCap

問題は、今回の新規発行による市場操作の懸念が再度浮上していることにある。

CoinMarketCapのデータによると、USDTの新規発行が開始されたのが日本時間4月1日20時。出来高の増加確認ポイントは、4月2日14時に確認された。

4月2日14時は、ビットコイン価格が直近1年間で最も高い高騰率を記録したタイミングであり、出来高の増加は価格高騰による影響だと推察できるが、このタイミングでのUSDT新規発行が、価格操作に利用されるとする見方が広がっている。

テザー社の疑惑やUSDTの発行状況などを追うアカウントBitfinex’edは、直近で4億ドル相当のUSDT発行をUSDに裏付けられたものではなく、市場の不安要素となる点だとして警告した。

Bitfinex’edがそう主張する背景には、今回の新規発行前に改定が行われた、USDTの裏付け資産の規約改訂があるという。

これは、1USDT=1USDを保つ仕組みを保つことで利用されてきたステーブルコインの担保資産の利用規約を3月15日に変更したことを指している。この規約の変更によって、これまでUSD(米ドル)が担保資産として規定されていた担保資産に、現金同等物が加わったほか、テザー社が発行するローン債権なども追加。公に担保金がドルだけではない点を示す動きとなった。

出典:tether.to

自社発行の債権を含めたことで、reserve(準備)を上回るお金の貸付を行う部分準備銀行制度に類似した仕組みで運用を行うことが明らかになったが、信頼度に欠けるテザー社の動きを懸念する声も大きい。

では、相場にどのような影響が出ると考えられるのか?過去の事例から考察する。

相場への影響 上昇か下落か?

これまでのテザー新規発行のタイミングで相場の方向性がどのように影響が出ているのかとするレポートは複数公開されているが、最も分析事例として詳細に掲載する内容は、⽶テキサス⼤学が6月13日に公開したテザー社とBitfinexによる市場操作の可能性を指摘した論文だろう。

同論文では、当時のテザーブロックチェーン(Omniチェーン)から新規発行後の動きをBitfinex、Bittrex、Poloniexのウォレットアドレス間でトラッキング、ビットコイン相場の値動きとの相関性を検証し、USDTの新規発行が、需要に伴うものか、私的流用の供給によるものかを分析したものだ。

要するに、USDTの取引高が高く、取引所などからの需要で発行されたものか、価格操作などを私的な利用によるものかを分析する内容である。私的利用の場合は、裏付け資産は自社供給になることから、その資産の裏付け性は低くなる可能性が高まることを示す。

論文の結果は私的有用面が高いとするものであり、大きく以下の2点が指摘された。

  • ビットコイン下落時:新規発行に伴う買い支えや上昇を後押し
  • 決算書報告時:新規発行に伴うビットコインを経由した米ドル確保

一つ目がビットコインの市場操作に利用される点で、ビットコインの相場上昇に繋がるパターン。

二つ目がドル確保に動くために売却を行うため、市場下落に繋がるパターンだ。特に、市場下落に繋がるパターンでは、担保金が不明な状況にある中での新規発行からドルに変換するスキームとして問題視されている動きである。

なお、これらの論文に関して、ジョン・グリフィン教授は、「市場の不正や操縦が見られれば、データに形跡が残る。データを追跡した結果、操縦があったとの仮説にかなり整合したことがわかった」とコメントを残している。

となると、今回の新規発行はどちらに該当するのかというのが重要な考察点の一つとなり得るだろう。

今回のテザー発行のタイミングとビットコイン相場の状況を見ていくと、新規発行後に相場は上昇基調に、また月末の決算報告時のタイミングとは異なり、月初から新規発行が行われていることがわかった。

現在の状況から市場に影響すると仮定した場合のビットコインの方向性は上昇基調への影響が出る可能性が推察できる。ただし、当時より監査の状況やCFTCや⽶司法省(MOJ)からの規制の目が向いていることを踏まえると、論文の中で選択肢として挙げられる、市場の需要に伴う新規発行の可能性も考えられる。

担保資産変更後に起こった4億ドル相当のUSDT新規発行は、市場への短期的な影響だけでなく、担保資産の状況が規制当局から問題視されることでの市場の下落要因になる懸念もある。

2018年より続く、CFTCのテザー社への調査などの続報に注目が集まる。

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