- リップル社が東京で開催したILPワークショップの参加レポート
- 銀行やビットコイン等の異なる台帳を繋ぎ、簡単に価値を転送、もしくは送金するようにするための「ILP(インターレジャー・プロトコル)」についての説明、活用例等について説明を受けました。
- リップル社のILPは既にXRPとETH向けのプラグインが開発済み
- また、異なるブロックチェーンを繋ぐだけではなく、銀行の送金に関しても、タイの銀行やその他の多数の銀行で既に採用が決定している技術です。
- 11月25日にリップル社CTO Stefan Thomas氏へのインタビュー記事も公開予定
- ワークショップでは語られなかった内容についても公開の許可を頂きましたので、後日紹介致します。※インタビュー記事を公開しました。
11月20日、リップル社が東京都内でInterledger Workshopを開催しました。
CoinPost運営者も参加させて頂き、銀行やビットコイン等の異なる台帳を繋ぎ、簡単に価値を転送、もしくは送金するようにするための「ILP(インターレジャー・プロトコル)」について多くの事を勉強させて頂きました。
また、SBI Riplle Asia 代表取締役 沖田 貴史氏(以下、沖田氏)を始めとしたSBIグループの方々ともお会いすることが出来ました。
11月10日に開催されたリップル公式東京ミートアップの時は個人トレーダーの方々が多い印象でしたが、今回は技術者の方々が増えているように感じられました。
また、内容も技術者の方々向けにILPを活用したデモが多かったです。
話された内容の詳細をまとめていきます。
- 目次
SBI Riplle Asia 代表取締役 沖田氏の挨拶
最初に、SBI Riplle Asia 代表取締役 沖田氏が登壇しました。
そこでは、4名の関係者がリップルから来日していること、ワークショップを東京で行うことになった経緯についても話されていました。
既にリップル社は他数ヶ国でワークショップを行っており、そこで沖田氏が日本でもやってほしいと要望を出した結果、東京での開催が決定したとのことです。
リップル社Web Standards Officerのadrian hope-bailie氏によるILP紹介
続いてリップル社Web Standards Officerのadrian hope-bailie氏が登壇しました。
ILPプロジェクトは2年前にスタートしていて、2015年10月にホワイトペーパーを書いたことが始まりとのことです。
そして、ILPはW3C(World Wide Web Consortium)というWeb技術の標準化を進める非営利団体で標準化が進められています。
世界中のホームページはHTMLやCSSというプログラミング言語を使っていますが、こういった仕様を公開しているのがW3Cです。
つまり、世界中のWebに影響力を持つ団体がILPを標準化する、と発表しているのです。
また、W3Cにはいくつかのコードを提出済みとのことです。
リップル社CTO Stefan Thomas氏によるILP解説
リップル社CTO Stefan Thomas氏(以下、Thomas氏)はまず始めに、なぜILPプロジェクトを始めたのかを説明しました。
まず第一に、ILPは支払いだけではなく、全世界の人々を受け入れるための包括的なものであると定義しました。
様々な支払い方法がありますが、ここが抜け落ちていることも多いとのことです。
Thomas氏により、その実例が説明されました。
現状の支払い方法は万能ではない
例として、Thomas氏はタンザニアで支払いに問題を抱えているという不動産等を売買する事業者の話を始めました。
不動産等で支払いに問題を抱えており、支払い速度も遅く、また支払額も60パーセントしか支払われていなかったそうです。
「タンザニアでpaypalを使ってはどうか?」
という意見が出ましたが、彼は
「paypalの口座はもっているが、タンザニアは送金のみの口座となっていて受け取りができない」
と答えました。
その後もいくつかの案が提出されましたが、結局のところ使っていた支払いプラットフォームが彼に合っていない、という結論に至りました。
その支払いプラットフォームを構築する会社でこの内容を含んだ公演を行ったところ、会場は静まり返ったそうです。
包括的に受け入れたいと思っているにも関わらず、こういったことが起きてしまうとThomas氏は語りました。
そして、タンザニアでは銀行口座は2%の人々しか持っていないですが、モバイルマネーアカウントは32%が持っているというデータを見て、更にモバイル対応の重要性について再認識したとのことです。
モバイルマネーとの提携は困難?
しかし、モバイルマネーとの提携はいくつもの問題があると言います。
例えばタンザニアでは、プロトコルがいくつも存在することです。
つまり、ブロックチェーンにアップグレードしたとしても、個々のネットワーク内ではいいが、ネットワーク同士をつなげる場合では解決しないため、結局全ての支払いに対応するのが困難になります。
よって、真の解決策とは全ての支払いに対応しているものである、とThomas氏は結論付けました。
ここで異なる台帳を繋ぎ、簡単に価値を転送、もしくは送金するようにするための「ILP(インターレジャー・プロトコル)」が登場します。
ILPで重要視していること
オンライン支払いを導入する上で大事なのは「単純さ」であるとThomas氏は語りました。
よって、ILPでも単純さを重要視しているそうです。
ILPを使うことでオンライン支払いが可能になる、それさえ理解していれば他を理解する必要がない、という地点を目指しているとのことです。
実際のILPの動作(デモ)と応用例について
ここからは実際にどのようにしてILPが動作しているのか、応用例を交えて紹介されました。
- 様々な会社との契約が必要で煩雑なオンライン支払い実装を簡潔に
- EthereumからHyperledgerへの送金
- codius上で広告botを稼働、Twitterに定期広告を載せる
- 得た収益をbotに自動支払いさせる
これらを実際にテストネットで行っていました。
実際のILPの活用例
ここではケースごとにILPの活用例を紹介します。
異なるブロックチェーン同士を繋ぐ
XRPとETH向けのプラグインは既に開発済みだそうです。
また、日本国内の企業であるトライデントアーツ社がKDDIと共同開発しているブロックチェーンサービスで、JPモルガンが展開するイーサリアム・ブロックチェーンである「Quorum」、そしてLinuxにより開始されたブロックチェーン「Hyperledger」をILPで繋ぐ、という活用例を示しました。
また、様々なプライベートブロックチェーンも接続可能になるそうです。
モバイルマネー対応
リップル社は、SWELL1日目にビル&メリンダ・ゲイツ財団(ビルゲイツ財団)との提携を発表しています。
そして、銀行口座を持てない貧しい人々でも決済可能にするプラットフォームを構築するためのソフトウェア「Mojaloop」を発表しました。
Mojaloopとは、モバイルウォレットで決済できるようにするソフトを開発し、貧困で口座を持たない人でも決済サービスを受けれるようにするものです。
銀行
世界で初、既にタイの銀行がILP技術を採用しています。
それに続いて、その他にも多数の銀行がILPを利用し決済システムを導入しています。
また、イギリスの中央銀行とも協力し、国内ではなく他国との送金についてILPを使った試験を行っています。
オンラインウォレット
非常にニッチなジャンルではあるものの、ゲームなどで使われているものをILPでつなげることで多彩な利用方法が生まれる、とのことです。
参加者からの質問とRipple社からの回答
いくつかの質問をピックアップして紹介致します。
- ―ILPが普及するのは何年だと考えていますか?
-
まず最初のステージとしてサポートされるレジャーを増やし、開発できるアプリケーションを増やしていきます。
ビットコインやxrpやイーサリアムについてはプロトコルがあるためにすぐにアプリを開発することができます。
そういった形で対応するものを増やしていきたいと思っています。
- ―ILPでどのようにして利益を出したいと思っていますか?
-
プランとしては2つあります。
一つは銀行向けのプロダクト、もう一つが仮想通貨のXRPです。
(銀行は)マーケットのプレッシャーもあるためにさらに送金を早める必要があります。
理由としてはpaypalなどがあることも挙げられます。
よって、相互運用性のあるプロトコルを開発し市場の競争力を高める必要があります。
また、海外送金ユーザーも送金速度の速いリップルプロトコルを好みますので、そうすると銀行も使う必要が出てくると思われます。
もう一つのxrpも同じことです。
ビットコインよりも高速で安く送金出来ますが、しかし仮想通貨は現状あまり(銀行間送金に)使われていません。
つまり、(現状では)コストやスピードはあまり大きなポイントになっていないため、先程紹介したようなユースケース(活用例)を増やすことで競争力を高めていきます。
また、同日CoinPostではリップル社CTO Stefan Thomas氏にインタビューをさせて頂きました。
その内容につきましては11月25日(土)に公開致しますので、是非ご覧になってみて下さい。
※11月25日追記
インタビュー記事を公開しました↓