- 好評のモネロ・ハードフォーク
- 匿名通貨のモネロ(XMR)が18日、ハードフォークを実施した結果、取引手数料と取引に要するデータの容量で大幅な減少が見られた。モネロの問題点として挙げられていた取引の匿名化に必要となったデータ容量の膨大さだったが、今回従来のRing CTからBulletbroofsにアップデートされた事により、問題が改善されている模様で、SNS上ではユーザーから高評価が続いている。
- 価格への影響
- モネロのハードフォークの数日前モネロ価格は一時的な増加が見られ、15日正午から夕方にかけて11%の上昇があった。モネロ価格チャートのテクニカル分析も掲載している。
- ステルスアドレスとは
- モネロで使用されている匿名システムで、個人の取引履歴はパブリックアドレスから取引履歴が見えないワンタイム・アドレスシステムの事。個人アドレスから取引履歴を第三者に閲覧されるのを防いでいる。
ユーザーから好評のハードフォーク、Beryllium Bullet
代表的な匿名通貨の一つであるモネロ(XMR) が、先週木曜日18日、新たなハードフォークを成功裏に完了した。
前回4月に、ASIC問題に対処するため行われたハードフォークでは、5つの通貨へ分裂し、Moneroコミュニティ内での意見の対立が浮き彫りにされる形となったが、今回は、「Beryllium Bullet」と名付けられ、Moneroの機能が大幅に改善されるシステムアップグレードであることから、コミュニティーからは大きな期待が寄せられていた。
ハードフォーク完了後、即座にその期待以上とも言える効果を実感した、ユーザーはSNSで、称賛と喜びの声をシェアしている。
つまり、ユーザーにとって直接の恩恵が測れる、取引手数料がほぼ無視していいレベルまで減少している事実を拡散している。
Transaction fee is so small, it’s written in scientific notation! 😂 Will add more decimals in the fiat display because it’s less than 1 US cent! $xmr #xmr #monero #Bulletproofs @monero pic.twitter.com/NAWpePXGYN
— Cake Wallet (@CakewalletXMR) 2018年10月18日
取引手数料が小さすぎて、科学的記数法で書かれてる!
1セント以下だから、ドル表示だと、小数点以下がもっと増える。
Moneroの公式ツイッターによると、ハードフォーク後の典型的な手数料は平均で、$0.005 ~ $0.01(約0.56円 ~ 1.12円)と発表している。
#LocalMonero – where the withdrawal fees are so low, it's basically free. #Bulletproofs #Monero $XMR #Cryptocurrency pic.twitter.com/iLETrWxEGI
— LocalMonero (@LocalMoneroCo) 2018年10月18日
取引手数料が低すぎて、ほぼ無いに等しい。
モネロの取引がP2Pで可能なプラットフォーム、Local Moneroでは激減した取引手数料について上記のようにツイッターで喜びを共有した。
また、仮装通貨の分析を行なっているCoin Metricsは、今回のアップデートによりMoneroの取引データの容量が、フォーク前の平均18.5kbから、3kbまで減少したことと、手数料が60セントから2セントまで大幅に減少したことをチャートで示している。
Bulletproofs update: Monero average transaction is now 3kb versus a pre-fork average of 18.5kbhttps://t.co/V6Nwejuo6L pic.twitter.com/lvGOlQcidZ
— CoinMetrics.io (@coinmetrics) 2018年10月20日
モネロの平均取引高は現在3kb。(フォーク前の平均は10.5kb)
Average fee has plummeted from 60 cents to 2 cents https://t.co/V6Nwejuo6L pic.twitter.com/d6d8qYB8WU
— CoinMetrics.io (@coinmetrics) 2018年10月20日
平均の取引手数料は60セントから2セントまで急落した。
このように、大きな反響と利便性の向上が見られたMoneroの今回のハードフォークだが、その背景には、匿名性通貨のスケーラビリティの拡張に寄与する、画期的な暗号技術、”Bulletproof” (防弾という意味)の導入がある。
ゼロ知識証明の問題点
Moneroの最大の特徴といえば、取引の匿名性があげられるが、それを可能にしているのは、誰が取引したかを特定できなくするグループ署名技術の「リング署名」であり、そこから発展したワンタイムリング署名で、送金時に一時的なアドレスを経由して取引する、ワンタイムアドレス(ステルスアドレス)を使用している。
そのため、取引の流れの追跡に加え、Monero所有者の取引を紐づけることが、ほぼ不可能になる。
しかし、同時に、この匿名性を高めるために、取引に要する計算はより困難となっており、さらにストレージ容量も大きくなってしまい、その負担は取引手数料としてユーザーに、また、ストレージコストとしてそれぞれのノードにかかっていた。
Moneroの暗号作成エンジニアである、Sarang Noether氏も、
ブロックチェーンが膨張していることはモネロにとって、間違いなく問題だ。
と述べていたが、Bulletproofs技術の導入はトランザクションサイズを少なくとも80%削減するものだとして、Moneroが昨年来、重点的に実装の準備をしていたと報道されていた。
Moneroは、リング署名とステルスアドレスに加えて取引額を非公開にする、リング匿名トランザクション(RingCT) により、匿名性を保っているが、Bulletproofs技術は、RingCTの機能を大幅に向上させる技術として期待されている。
取引額を非公開にする際の最大の懸念は、取引自体の存在の証明することの重要性であり、これまでは、MoneroではRange Proofと呼ばれるゼロ知識証明技術が用いられてきた。
しかし、このゼロ知識証明技術をNoether氏は「大変遅く、大規模な操作」と表現しており、モネロのブロックチェーン上の取引の大部分を、このRange Proofが占めていたと言う。
その反面、今回導入されたBulletproofsは、情報を新しいデータ構造に、対数的に集約する機能を有しているため、トランザクションサイズを大幅に縮小し、速度を高めるとNoether氏は期待を示している。
さらに、今回の「Beryllium Bullet」システムアップグレードでは、Moneroコミュニティの大半が、信条として維持してきたASICマイニング耐性を強化するため、新たなPoWアルゴリズムである、Cryptonight 2も実装されている。
価格への影響
画期的なハードフォークを成功させたモネロだが、価格にも反映されてきているようだ。
ハードフォークへの期待感から、10月15日にモネロ価格は正午から夕方までにかけて一時的に急騰した。
この価格の値動きは15日の相場以上の勢いを見せたが、その後落ち着いた。
レジスタンスラインは$108.50で見られ、また8月からのレジスタンスラインが110 ~ 112ドル台で見られている。
またサポートラインは106.50で見られている。
日足チャート(XMRUSD)
日間チャートを見ると8月13日からの上向きのトレンドラインからさらなる上昇の余地が見られ、強気バイヤーは124ドル台で売り圧があり、15日の上昇でもトレンドラインを超えそうな勢いがあったがあと一歩及ばなかった。
今後またトレンドラインを突破できれば150ドル台までの価格回復も視野に入ってくる。
なお需要ラインは76 ~ 86ドル台で確認されている。