- リップル社CEOがSWIFTとの関与について言及
- シンガポールのフィンテック・フェスティバルでブルームバーグとのインタビューに応じたガーリングハウスCEOが送金システムSWIFTとの噂を払拭すべく、リップル社の現状を説明した。
リップル社CEOがSWIFT提携の噂を払拭
「リップル社とSWIFT(国際銀行間通信協会)が水面下で提携関係を結ぶ準備を進めている」という噂を、今週シンガポールで開催されたフィンテック・フェスティバルに参加した際に行われたブルームバーグとの取材に応じたブラッド・ガーリングハウスCEOが断固として否定した。
SWIFTは、「国際銀行間金融通信協会」と訳されているが、”Society for Worldwide Interbank Financial Telecommunication”の略で、世界各国の金融機関が加盟かつ所有する協同組合であり、高度に安全化された金融通信メッセージ・サービスを提供する、金融業界の標準化団体である。
そのIBAN(国際銀行口座番号)システムは、銀行、個人および企業が資金を送受信するために、広く使用されており、国際送金のスタンダードとしての地位を確立している。 SWIFTはベルギーに本拠を置き、そのサービスの稼働国は200カ国、金融機関などのユーザー数は11,000を超え、そのグローバルなネットワークは、これまで世界の金融インフラとして機能してきた。
その「巨象」に果敢なチャレンジを挑んでいるのが、ブロックチェーン技術を用いた国際決済システム、リップルネットワークを構築しているRipple Lab社である。 中央集権的システムの必要性を排除したブロックチェーン技術により、銀行や金融機関の口座を介さずに、容易に迅速で安価なデジタル送金が可能になる。
かねてより、この2社の提携による国際送金ネットワークは大きく国際決済に影響を与えると期待されており、これらの噂はSWIFTが40年以上毎年主催している大規模な金融カンファレンス「Sibos」の開催前だった10月に浮上したもので、Rippleを脅威と見なすSWIFTが提携関係を結び、Rippleの国際送金システム「xRapid」を導入するのではないか、といった憶測だった。
ガーリングハウス氏はSWIFTとの提携は「根も葉もない噂」と否定したものの、既にSWIFTの成し得なかったことを可能にしているとポジティブにリップル社の現状を語り、最終国際的な決済ネットワークであるSWIFTを「追い越す」ことを目指していると した。
またこの一例として、某送金会社はリップル社の技術を利用することで1トランザクションあたりの手数料を20ドルから2ドルへの引き下げに成功、これによりわずか一晩で利用率が800%の増加を記録した。
ガーリングハウス氏はこのような業績が、「現時点でSWIFTにはサポートできないダイナミック」である点を強調。
Rippleが既に毎日実行していることが、事実上、SWIFTの乗っ取りのようなものだ。
我が社は既に100社を超える銀行と契約を結んでいる。SWIFTのサービスを利用可能な世界最大の銀行の一部は、現在Rippleの技術を利用している。
…Rippleは銀行の手助けをする為に存在しているように感じている。SWIFTは銀行が所有している。
過去に両社間で、提携関係につながる機会や可能性があった事実は認めているが、実現には至っていない。
SWIFTのブロックチェーン技術に対するスタンスに疑問
SWIFTのブロックチェーンに対するスタンスについても、言及した。
SWIFTは2017年1月、ブロックチェーン技術を活用した即日決済システムの構築に向けたPoC(概念実証)を実施していたが、2018年に入り、「ブロックチェーン技術がメインストリームで利用される段階に達するには、まだ時間を要する」との見解を明らかにした。
ガーリングハウス氏はこれに不賛成の意を唱えており、100行を超えるSWIFTに加盟している銀行が彼と同じ考えであると述べている。
コルレス銀行(国際送金の際、通貨の中継地点の役割を果たす銀行)が歴史的にどのように機能してきたかという観点からいうと、ブロックチェーン技術は飛躍的な進歩である。
今日(SWIFT加入)銀行が利用している技術は、SWIFTが何十年も前に開発したものだが、まったく進化しておらず、市場の変化も反映されていない。
SWIFTは、つい最近まで、ブロックチェーン技術をコルレス銀行のための解決策としては考えていないと言っていた。 (我々が抱える)100以上のSWIFTの顧客がその考え方に同意できないと言っているのだ。
SWIFTの動き
リップルネットワークには、三菱UFJフィナンシャル・グループや世界70カ国にネットワークを持つ英Standard Chartered PLCなどの世界の金融大手も参加している。
着実に拡大しているリップルネットワークが、SWIFTの独占的地位を脅かすことになるかどうかは、SWIFT側の対応にも拠るところが大きい。
去る11月12日、SWIFTは、政府、業界、市民社会を結びつけ、サイバースペースの信頼性、安全性、安定性を高めることを呼びかけた、”Paris Call” (パリ要請)に対する支持を表明している。
国際社会とデジタルセキュリティに関わるすべての人々の仕事を強化するための新たな取り組みとなる、この運動へ賛同することで、SWIFTは仮想通貨業界が直面している、サイバーセキュリティや規制準拠の問題を暗喩しているのかもしれない。
仮想通貨の需要
いかに技術が優れていようとも、グローバル規模での明確な規制の枠組みが整備されない限り、金融機関をはじめ、機関投資家が本格的に仮想通貨産業に参入することは、難しい面があるという事実は否定できないが、徐々に世界的な動きは好転し始めている。
そのような動きが仮想通貨業界で見られる中で、Garlinghouse氏は、仮想通貨の需要についても言及した。
2018年が本格的な機関投資家参入の年になるだろうと予想していたものの、それが達成されなかったのは、明確な規制の枠組みが整備されていないためであるとした。
同時にGarlinghouse氏は、前四半期には、機関投資家がリップルの歴史上でも最多となるXRPを買い求めた事実や、ニューヨーク証券取引所を所有するICEやFidelityの仮想通貨業界への参入を挙げ、機関投資家の関心はますます高まりつつあると述べている。
また、アジア、特にシンガポール、タイ、フィリピンそして日本が、仮想通貨の規制整備では世界をリードしていると述べ、その取り組みを賞賛していた。
シンガポールにオフィス新設
アジア圏における仮想通貨市場の「ゲートウェイ」としてシンガポールが注目を集めている理由、そしてRippleのオフィスの新設地として選んだ理由に関しては、仮想通貨やブロックチェーン関連の規制環境整備が進行中であることを挙げている。
シンガポール金融管理局(MAS)は9月に開催された「Singapore Consensus2018」で、適切な規制を採用することで、仮想通貨およびブロックチェーン技術の発展を支援する方向性を明らかにした。
シンガポールは特に金融やテクノロジー分野で、「国際ハブ」としての位置づけを確立している為、仮想通貨業界においても重要視されている。
快進撃が続く仮想通貨XRPとリップル社
XRPとRipple周辺の環境は、急速にポジティブな変化を遂げている。
10月発表された「xRapid」の商用リリースや、先日発表されたxCurrent4.0でxRapidへの接続が可能となった事が、送金ソリューション「Ripple Net」の需要拡大や快進撃、また市場におけるRippleへの評価や信頼につながっているだろう。
また先週にも、日本の三菱UFJ銀行がブラジルのブラデスコ銀行と提携し、リップルの技術を用いた日本・ブラジル間の国際送金システムの共同開発を進めている。
こうしたポジティブな要素はXRPの価格にも反映し、第2四半期の売上が前期比56.16%に落ち込んでいたにも関わらず、9月下旬には市場全体が下降していたにも関わらず、単独で+140%近い上昇を4日間で記録した。
その後10月中旬に落ち着き、一時期は0.45ドルで横ばいの動きが続いたが、11月5から6日に約1ヶ月ぶりに0.50ドル台に達した。
ガーリングハウス氏はかねてから、仮想通貨市場におけるXRPの差別化が現実となると宣言していた。
また「問題の解決(に貢献する)仮想通貨だけが市場で生き残る」とし、XRPへの関心が高まっている要因はそこにあるとしている。
(仮想通貨市場は)生まれたばかりで多くの投機や誇張がみられる。誇張を現実と区別すると、転向が起こる。XRPが優れている理由の1つは、実際のユースケースが生まれているからだ。XRPは問題を実際に解決している。