- SECのICOプロジェクトに対する差止命令が米地方裁判所で却下、専門家の意見
- 米証券取引委員会はICOトークンの販売を行なっていた仮想通貨企業Blockvest社を起訴していた件で、米カリフォルニア州の連邦地方裁判所が同社に対する差止命令を却下し、ICOの有価証券問題の新たな発展が見られる事例となった。ブロックチェーンに詳しい弁護士は今回の件をどのように捉えているのか。
米連邦地方裁判所でSECの差止命令申請が却下
南カリフォルニア州のアメリカ合衆国連邦地方裁判所は11月27日、仮想通貨取引所の設立を目指しICOを行なっていた企業Blockvest社に対して米SECが提出した差止命令の依頼を却下した事が判明した。
米SECは、Howeyテストの一部である「投資家が利益を見込んでBlockvest社に資金を投じた」事を証明できなかったと米国の法律メディアは報じている。
「ICO企業へ資金を向ける際、チェックにBlockvestやコインと書くだけでは、投資家がどのような宣伝資料や経済的誘因を受けたか証明することはできない」とGonzalo Curiel裁判長は述べた。
SECのBlockvest社に対する差止命令は却下されたが、事態はこれで完結したわけではなく、「ここから裁判に発展する」と 米弁護士のStephen Palley氏はCoinDeskに語っている。
SEC差止命令申請の背景
2017年に開始したBlockvest社は独自の仮想通貨取引所を設立し、その取引所内のみで利用されることを目的としたトークンの販売を行い、同社設立者であるRinggold氏の家族、友人などを含む32名から総額1万ドル以下の資金調達を行なっていた。
またBlockvest社はサイト上で実際には許可、および認可を受けていないにも関わらず受けていると主張した他、架空の自主規制団体に加入していたとも表現していた。
なおCoinPost編集部が確認したところ、現在Blockvest社のホームページはメンテナンス中だった。
米国の証券取引委員会はこのような状況を踏まえ、Blockvest社が1933、34年に設置された米証券取引法に違反したとして10月に同社と設立者のRinggold氏を起訴していた。
今回の判決の重要性
今回の連邦裁判所からの発表を受け、Blockchain.comのCLOでIMFのフィンテック・アドバイザーでもあるMarco Santori氏がツイッター上でこの件について言及し、その重要性をまとめて解説した。
1/ 🚨 NEW LAW ALERT. A federal court in California just ruled against the SEC in an ICO case, explaining what a plaintiff will now have to prove for an ICO to be a security. If you care about whether ICOs create securities, read on. If not whatever im not the boss of you
— Marco Santori (@msantoriESQ) 2018年11月29日
今回の件で重要点となるのは米国の連邦地方裁判所が、アメリカ証券取引委員会がICO判断に頻繁に利用している「Howeyテスト」の重要項目3点の決断方法の前例を築いた事だとSantori氏は説明している。
Howeyテストとは
米SECが活用する、特定の取引が「投資契約」という有価証券に該当するかどうかを判定するテスト。
元々1946年のHowey社訴訟事件の際に米裁判所が「投資契約」の判断基準として定めたもので、以下の3項目が主な要素となっている。
・資金を集めているか
・共同事業であるか
・収益性があるか
今回の件ではSECの申請が却下されたことより、Howeyテストの項目に該当しなかった方法が重要であると同氏は言及。
最重要項目|資金を集めているか
まず裁判所はHowey テストの第1項目の投資を目的に資金を集める際、出資した資金が失われるリスク(risk of financial loss)の有無が重要であるとした。
8/ According to the court, in the ICO context there must be a “risk of financial loss”. This supports the proposition that something like an airdrop, by itself, cannot be a securities offering, even if the airdropped tokens are pre-functional. Admittedly rare today but possible!
— Marco Santori (@msantoriESQ) 2018年11月29日
その為、出資資金が無くトークンが配布されるだけの場合、つまりエアドロップのみの場合は有価証券に該当しないとSantori氏は発言。
しかし多くのICOの場合、資金調達が目的である為、エアドロップのみのICOが行われることは稀少であるものの、興味深い事例となった。
またSECはトークンを提供する行為事態そのものが、有価証券に該当すると主張していた。
しかしトークンを提供するだけでは有価証券とならないと裁判所は判決、配布されるトークン自体が有価証券である場合のみ有価証券として見なされると下った。
ICO規制の複雑さ
また今回の件は、個々のICOプロジェクトが有価証券に該当するかはどのようにして「オファーが成され、販売されるかにかかってる」と以前SECのサンフランシスコ地方事務所で首席弁護士を歴任したMike Dicke弁護士はコメントした。
これはデジタル資産か、又は有価証券か、というのは正しい質問ではない。
SECは「オファー方法と販売方法」が有価証券の様であることを立証するのに失敗した。
またビットコインETFの規制状況に関して度々専門的意見を提供している米国のJake Chervinsky弁護士は以下のようにツイッターでコメントを残した。
The SEC says this token is a security. The court rules the SEC hasn't proved it.
— Jake Chervinsky (@jchervinsky) 2018年11月28日
The case goes on & the SEC may win in the end, but this is a good reminder that the SEC isn't judge, jury, & executioner: they don't make the law & *can* be beaten in court.https://t.co/5Q8xRxVA8v
SECはトークンが有価証券であると主張、しかし裁判所でSECはそれを証明できなかった。
この件はまだ終わりではない – 最終的にはSECが勝訴するかもしれないが、これはSECが最終的な権威を持っていないことを思い出さしてくれる重要な事例となった。
彼らは法を築くことはできないし、裁判で負けることもある。
最後に前述のSantori氏も今回の件に関して以下の様に言及した。
17/ In any event, lots of commentators have taken the position that these cases are all layups. That everyone who sells in an ICO is going to jail. I think that’s intellectually lazy.
— Marco Santori (@msantoriESQ) 2018年11月29日
いずれにせよ、多くの評論家は摘発される全てのICOが刑務所に行くと一括りしているが、それは論理的に欠落している。
Santori氏のコメントからも伺える通り、今回の事例ではケースバイケースにより、ICO摘発の仕方や問題点が異なってくる事が浮き彫りとなっている。
ICOは一律に有価証券ではない場合もあるという不透明な現状を物語り、そして規制の複雑さが伺える事例となった。
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